表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/55

合流、そして――

「何だ……?」


 地響きはしばらく続いた。

 部屋全体に瓦礫がパラパラと降ってくる。


 僕は咄嗟にブルーを剣へと収める。

 そして重たい身体を引きずり、部屋の隅へと移動した。


「……治まったな」


 壁に身を預けて、一息つく。


 だが、さっきの地響きで随分と部屋は荒れてしまった。


 ビーストとズゥメル。

 激しい戦闘を2度も繰り返したことで、かなり脆くなっていたようだ。

 降り注いだ瓦礫は散乱し、壁や天井にはヒビが所々に走っている。


「このままじゃ……まずいか」


 大きな地響きは治まったが、わずかな揺れは断続的に起こっている。

 あと数回、いや一回。

 大きな揺れが起これば、崩落を起こすかもしれない。


「ディノ君!」


 部屋に響く溌剌な声。


「ランさん!」


 入口から入ってきたのはランだった。

 その後ろにはゴルドーの姿も見える。


「身体は大丈夫かい?」

「はい……何とか、ですが」


 駆け寄ってきた2人に肩を借り、立ち上がる。


「少しですけど、回復しますね」


 ランは僕に向かって手をかざす。


「〈治癒(ヒール)〉」


 魔力光が僕を包む。

 すると、少し身体が軽くなった気がした。


「ありがとう、助かります」

「いえ。私も魔力が少ないので、少しだけですけど」

「それで、ディノ君。あの怪物はどうなったんだ?」


 僕はこれまで起こったことを話した。

 怪物、ビーストとの戦闘。

 そして、その後のズゥメルとの戦闘について。


「ビースト……あの怪物を倒してしまったとは……。君は凄いな」

「はい、それにズゥメルとも戦って追い返すなんて凄いです!」

「いえ……ズゥメルは自分から退いたんです。僕は手加減されていました。もし全力を出されていたら、僕は死んでいたと思います」


 脳裏にズゥメルとの戦闘が蘇る。

 あの時は夢中でただ目の前の力に抗うだけだった。

 改めて冷静に思い返せば、恐ろしい力だ。


「……そうか。ともかく生きていて良かった。こっちは無事に怪我をしていた2人を他のパーティに託すことができた。その他の怪我人も見つけて、同様に保護してもらっている。今頃は反応が生きていたパーティは撤退しているはずだ」

「なら、僕たちも撤退しましょう。さっきの揺れでこの辺りはかなり危険です」

「ああ……そのことなんだが」


 ゴルドーは言葉を詰まらせる。


「……私たちはあの地響きの後、退路の確認をしたんです」

「だが、上の階層へと続く階段は()()()()()()()()


 僕はゴルドーの言葉に違和感を覚えた。


 地響きで瓦礫が落ち、階段が塞がっているというなら分かる。

 しかし、ゴルドーは見当たらなかったと言った。


 この階層に降りてきた時、〈記録(レコード)〉によって階段の位置はマッピングデータに刻まれている。

 場所を見失うことはないはずだが……。


「どういうことですか?」

「言葉の通りだよ。何度も確認したけど、マッピングされた位置に階段はなかった。それどころか、この階層のどこにもね」

「そんな……」

「詳しく調べてみると、この一帯の空間が断絶していた。先の地響きでダンジョンコアが損傷したか――詳しい理由は分からないけどね」


 せっかく生き残ったのに、帰れないなんて。

 このままでは、階層の崩落に巻き込まれるのを待つだけだ。


「でも、大丈夫。ランちゃんが〈転移(テレポート)〉を使えるそうだ。ディノ君のいる空間まで切り離されていなくて良かったよ」

「とはいえ〈指定転移(ハイテレポート)〉じゃないので行き先の細かな指定はできません。それに空間が切り離されているので、大まかな場所を掴むこともできない。私ができるのは、とりあえずここから出る、ということだけですけどね」


 〈転移(テレポート)〉。

 自分が意図した場所に転移させるスキルだ。

 その精度は上位スキルである〈指定転移(ハイテレポート)〉に遠く及ばない。

 詳細な場所を指定できない上、想定通りの転移が成功する確率も良くて半分程度。

 実用性に欠けるギャンブル的なスキルであり、取得している人は少ないと聞いていたが……。


「今は出られるだけで十分だ。どこに出たとしても生きてさえいれば、何とかなるさ」

「……そうですね。ゴルドーさんにランさんも一緒ですし」

「ああ……! ランちゃん、準備を頼めるかな」

「はい!」


 ランは魔力を高め始める。


「ん……やっぱり行き先は掴めなさそうです。……どこに出ても恨みっ子なしですよ?」


 ランはそう言って軽く笑った。


「発動魔力自体は少なくて済むので、もう飛べますよ。私の周りに来てください」


 僕とゴルドーはランの近くへ移動する。

 さて、どこに飛ぶことになるやら。

 今できるのは、祈ることだけだ。


「〈転移(テレポート)〉!」


 その瞬間、僕たちは光に包まれた。


 まだ見ぬ行き先へとそれぞれが思いを馳せる。


 きっと大丈夫。

 そう可能性を信じて。

ここまで読んでいただきありがとうございます!

これでステイル遺跡編が完結です。


間章を二話挟んで新章に入ります。

これからもよろしくお願い致します!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ