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百合色の鍵姫~転生した元魔王の甘々百合生活  作者: 恋する子犬
第三章 尊い姉妹と幸せを得た少女

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第94話 目覚めの片鱗

 今から約1000年前のこと、歴史上最も強大だと謳われている戦争が勃発した。

 人間界と魔界――相容れぬ二つの世界から、最強の精鋭が集結し、()()()()を懸けて激突。人間側は勇者、魔族側は魔王に従い、全戦力を駆使した。

 両陣営共に、戦力は互角。故になかなか決着がつかず、代わりに被害は拡大する一方で、戦死者は数十万にも及んだ。

 その戦いで死んだ者の中には、神のしわざか、将又運命的にか、未来の世界へ〝転生〟した者もいたのだそう――。




     ◇




 現在、グラン街の地下施設内エントランスホールの中心で、世界ランク100位以上と推定される両者の戦いが、激しく行われようとしていた。


「人間は襲わないんじゃなかったのか?やはり、悪魔を信用するのは良くねぇってことだな」


 黒炎をボッと掌に出現させ、静かに燃え上がらせる。そんなグランツェル家の長男――テレスは、何も発さず宙へ浮き沈みするだけの死神に、嫌みな言葉を投げた。


「………」

「あくまで沈黙を保つか。それとも、本当に喋れねぇのか…」


 実体を黒い靄で包み隠し、外部からの視認を阻害している勇者の付き人。その正体は謎に満ちており、リツですらも言葉を交わしたことがない程だ。


 そして、前述の悪魔を味方に付ける片生りの女の子、リツ・シュヴァリエ――この世界で初めて、人間と悪魔の共存実例を残した最年少の勇者である。彼女が勇者として現れた時には、勇者およびそのパーティメンバーの殆どが度肝を抜かれた。

 歳もそうだが、悪魔を携えているにも拘わらず、なぜ勇者へ成り上がることができたのか。各々に衝撃が走り、始めはその事実を受け入れられないと否定的に捉える者も少なくなかった。


 そんな中、リツに従う悪魔がどれだけ人間に対して友好的であるかを、人間界のトップである〝天命〟を始め、説得力があり信頼における勇者らが率先して証明。時を待たずして、黒幽体の悪魔は勇者の忠実な側近と認められたのだ。

 ハッキリと悪魔を視認できるのは、一部の人間――世界ランク20位以上の者たちのみで、気配やオーラを悟れたとしても『超位者(グランダー)』まで。選りすぐりの強者だけが感知でき、見かけで一般の人間に恐怖を与えることはないという点も、十分な承認理由となった。


「全身に魔力が通ってやがる…。感知すりゃ、動きは捉えられるが……。チッ、なんでこんな化け物が勇者の右腕なんかやってんだ」


 超位者(グランダ―)であるテレスの目に映っているのは、悪魔を形作った暗黒のミスト。感知すれば行動を把握することは可能だが、常に意識を集中する分、魔力に加え、精神力の消耗も激しくなる。

 無感知の場合、オーラは感じても、攻撃のタイミングや振り下ろされた武器のリーチなど、細かい動作・被攻撃が汲み取れず、速攻でお陀仏だ。攻撃力に長けてはいないが、【常時魔法無効】の〝パッシブスキル〟も含め、悪魔の総合戦闘力は全力のテレスを上回っているだろう。


(そもそも、こんな奴を従えるガキがいることが不愉快だ。どんだけ理不尽な世の中だよ、ったく!)


 テレス自身も既に劣等感を覚えているようで、冷や汗をかきながら、心の中で第三者に愚痴をぶつける。


「何か言ったらどうだ!?死神野郎!!」

「……」


 クルクルと器用に鎌を回し、攻撃の機を伺う悪魔。ローブの中から、殺気立った漆黒の瞳を覗かせる。

 それが更にテレスの尻込みを誘い、気迫ですらも圧倒していた。

 グラン街上空での戦いにて受けた傷は、既に癒え、万全の状態で挑む此度の一戦。リツからは殺すなと忠告を受けているが、如何せんこの悪魔は加減を知らない。

 だが、思慮は可能だ。長考する中で、相手を殺さずに、どう勝利を収めれば良いのか。背後の()()に気を回す必要もあるため、壮大な魔法を使うなど以ての外だ。


 ――いい?魔法で巻き添え食らわせたら、また()()()にぶっ飛ばされるからね。


 脳裏に過ぎるリツの忠告。厳しめに念押しされたことを思い出し、悪魔は一人焦っていた。

 そんな感情を抱いているなど露知らず。視界に映る暗黒の靄に向かって、テレスは負けん気合を見せる。


「魔族でも、多少は喜怒哀楽を見せるもんだ。無機質にも程がねぇか?だがまあ、それでいい。殺しに情を移す必要がないからなぁ!!」


 寧ろ、感情は豊かな方だろう。隠している訳ではなく、相手が感じ取っていないだけだ。

 言葉にすれば、なんとなく口調で伝わることもある。だが、それは不可能。アリアを殺しにかかった時のように、脇目も振らず、怒り心頭のオーラを一心に発散させることで、ようやく相手が感情を汲み取ってくれるレベルだ。

 それでもリツだけは、唯一悪魔の思考を読むことができる。一部の例外――悪魔の過去に関わる感慨を除いては…。


「すぐに終らせるさ。〝暗黒の炎(ブラックフレイム)〟!!」


 息巻いたテレスは、魔力を消えない炎へと変換し、右手から照射。父親に劣る威力の黒い炎渦が、悪魔を呑み込むように迫ってきた。

 しかし、魔法に対して悪魔が動じることはない。微動だにせず、黒炎を真正面から受ける。


「チッ、俺の魔法じゃ通用しねぇってか」


 自慢の魔法を軽々しく振り払われ、歯軋りするテレス。再度黒炎を生み出し、両拳に纏わせ、今度は素手で殴打しにかかった。

 普通の魔法では、決して消化不可能な黒い炎。全身に纏わせるだけでも、大抵の者は触れることが叶わない。逃げる間もなく、気づけば焼死体となっているだろう。

 黒炎を意のままに操れる時点で、彼以上の強者は100人といない。魔力の使い方が精巧なテレスは、アーシャよりも高度な闇魔法を会得しているのだ。

 逆を言えば、生み出すだけで悍ましいその黒炎に対抗できる生物(魔物含む)が、この世界に90人強存在することになる。()()()()という点においては、更にそこへ数十個体程追加されるだろう。

 

 とはいえ、相手が相手。対処どころか無効化される悪魔と対峙している時点で勝ち目はない。

 いくら全力で殴ろうとも、ただ防がれるだけ。ぷかぷかと浮遊しながら、悪魔は華麗にテレスの打撃を躱している。


「……なんだかよく分からないけど、あの死神悪魔は味方でいいのよね。だったら、このチャンスを生かさなきゃ」


 そんな二人の攻防を、後方から眺めていたルナは、とある()()を記憶から呼び起こしていた。魔法や能力を何一つ得ていない彼女が、もしものためにとアリアから教わった、究極の護身術である。




     ◇




「ねぇ、アリア。私でも使える最強の魔法、教えて!」


 王都レアリムでの一件が終わり、数日の時を経た頃、ルナは食い気味で言い寄った。

 無意識で顔を近づけると、なぜか頬を紅潮させるアリア。少しは慣れて欲しいと思いつつ、普段通りの反応だからか、特に何とも思わないルナの質問に、アリアは若干目線を外しながら返した。


「え、えっと…なんで急にそんなことを??」

「決まってるじゃない。私も、少しはみんなのように強くなりたいのよ!」


 ふふんと鼻を鳴らし、両手を腰に添える。するとアリアは、少し意外だと言うように目を見開いた。


「強く、なりたいの…!?」

「そうよ。って、なんでそんな驚いてるの?」

「あ、いや…ルナも、ユィリスみたいに貪欲に強さを求めるんだなぁと思って」

「ユィリスとはちょっと違うわ。守ってもらうだけじゃ、みんなに申し訳ないのよ。一応、私は狙われてる身だし、もしもの時のために力はつけておかないと」

「そっか…勇者候補だもんね……。いつまた、ベルフェゴールみたいなのに襲われるか分からないか」

「そういうこと!アリアのシールドは凄いけど、それだけじゃ相手は倒れてくれない。メイヤードである親の血を継いでるんだから、私だって何かしら素質がある筈だわ!」


 と、ルナは自信満々に言い放つ。

 勇者になり得る者は、皆揃って強さを求める向上心の塊だ。幾度となく勇者を目にしてきたアリアは、自信や意欲に満ち溢れたルナを見て、クスリと笑う。

 きっかけは違えど、強さを求めることに変わりはない。やはり血は争えないものだと、アリアは我が子の成長を見守るかのように、感慨深い気持ちになった。


「ふふ、いいよ。そうだなぁ……家の中じゃ危ないから、外に出よう」


 訓練の場所に選んだのは、カギ村近くの森の中。二人で初めてギルドの依頼をこなした場である。

 スライムなどの温厚な魔物が這い回る中、二人は向かい合った。


「先ずは、ルナのステータスを見るよ。ちょっと待っててね」


 アリアのステータス開示の魔法は、他者に対しても使用可能。ただし、他者からの魔力干渉を許した者のみである。今のアリアでは、そう易々と相手の力量の詳細を見ることはできないのだ。

 彼女が視界に映し出したルナのステータスは、以下の通りだった。



 ===============


 名:ルナ・メイヤード

 種族:人間

 世界ランク:圏外↓

 個体レベル:35↓

    体力:27↓

   攻撃力:推定不能

   防御力:21↓

   素早さ:14↓

   回復力:36↓

    魔力:75↓

 知識・知能:32↓

  獲得魔法:???、???、???

    加護:『解錠の加護(アンロック)

 --------------------

 ルナ・メイヤード。勇者の血族だが、一般の家庭に生まれ育った。特に突出した力が無く、戦闘能力は皆無。しかしある――が――た時、『―――――』へと――し、―――爆発的に―――る。


 ===============


 

 何気に、初めて目にするルナのステータス。アリアは首を傾げ、それをまじまじと見つめる。


(何これ?数字の横に矢印?こんなステータス初めて見た……。というかルナ、加護持ってんの!??)


 各数値の右隣に付与された、下向きの矢印。以前、アリアはルナのギルド会員カードを目にしているが、そこに表示されていたのは数字のみで、矢印など何処にもなかった。

 デバフの魔法がかかっていれば話は別だが、至って通常運転のルナの数値が標準より下回っているなど、おかしな話だ。

 それだけではない。全ての魔法を知り尽くすアリアの智慧を逃れ、未だ明らかになっていない固有の魔法を三つも所持している。本人は気づいていないようだが。

 加護に関しても、膨大な知識に及ぶことのない目新しいものであった。


(個体の説明が、一部だけ開示不可能になってる…。これだけじゃ、何て書いてあるか分からないなぁ)


 ステータスの下に表示されている説明文は、アリアが知る相手の生い立ちや性質に加え、アリアではない第三者(一説によれば、神や創造主、世界そのものなど)から見た相手の状態が記される。

 つまり前半の文『勇者の血族だが~』は、アリアが既に得ていたルナの実状や背景に関する説明。そして後半の虫食いになっている文は、何者かの知識から引用した解説文となっているのだ。


 しかしいくら自分の知識に及ぶことのないものだとしても、個体説明が閲覧できないなどあり得ない。魔法の調子を疑うレベルである。

 そこで、考えられる理由は二つ。

 一つは、ただ単に前世よりも魔法の質が劣るため、何でもかんでも他人のステータスを拝見できなくなってしまったということ。そしてもう一つは、ルナ自身が、アリアの強力な魔力干渉を無意識に妨げているということだ。

 ルナに限って、後者は無いだろう。そう思い、説明文には特に疑念を抱かず、アリアは他の情報に気を取られていた。


「ルナって、加護持ってたんだね!」

「加護?私が…??」

「そうだよ!先天的なものなのかなぁ。見たことないけど、きっとサポート系の能力だと思う。名前は、『解錠の加護(アンロック)』だって」

「あん、ろっく?変な加護ね。なんかあまり強そうに聞こえないわ」

「私もどんな効力があるかは知らないけど、加護を持てるだけの潜在能力(ポテンシャル)があれば、いくつか教えられるかも」


 得意げに指を鳴らし、片目を閉じながら可愛らしく言う。そんなアリアに対し、ルナは目を輝かせながら喜びを露わにした。


「ほんと!?ねぇ、どんな魔法なの!!早く教えて頂戴!!」

「わ、分かった分かった…!分かったから、そんなにくっつかないで~~………」




     ◇




 魔法を放つには、少々時間を要する。魔力を込めれば込める程、攻撃の質・威力が上昇するからだ。


「ルナちゃん!大丈夫??」

「モナ!」


 強者同士のぶつかり合いが広間で巻き起こってる中、アーシャとの対峙を終えたモナが、急いでルナの元へ加勢しにきた。その表情は、何とも言えないような、狐につままれた様相をしている。


「それにしても、さっきからテレス君は一人で何やって――」

「悪いけど、モナ……少しだけ魔力を分けてくれない?」


 この状況を半分ほど理解しきれていないモナ。彼女の目に映っているのは、誰もいない空間に向かって、一人殴打を繰り返すテレスの姿であった。

 闇を纏い過ぎて、終に頭がおかしくなったのだろうか。幻覚が見えていても不思議ではない。

 そうモナは勝手に解釈し、


「そっか。これでテレス君の正気を取り戻すんだね!だったら、幾らでもあげるよ~」


 と、喜んでルナの提案に乗った。

 なんとも呑気な考えだが、真実を知らないのだから仕方ない。自身の魔力を発散させ、ルナへと譲渡する。


「正気を取り戻すって意味では、同じかもしれないわ。というか……やっぱり、モナには見えないの?あの死神悪魔のこと…」

「し、死神!??急に怖いこと言わないでよ~。怖いお話は、後でゆっくり聞かせてね!」

「……そうね。後で、ちゃんと話すわ」


 モナの天然っぷりに、少しばかり呆れるルナ。だが、下手に混乱を招くよりもマシだと、同時に安堵した。


(あの悪魔、本当にモナは見えてないんだ…。なら、なんで私は見えるの?)


 そんな疑問を抱きながらも、着実に魔力を溜め込んでいく。初めは指の腹に乗せられる程度の大きさだった魔塊が、大気中の〝自然魔力〟をも取り込み、二人の顔を覆い尽くす程までに成長。その根幹には、ルナが自身の魔力を用い、蓄えた魔力を囲って逃がさんとする〝小結界〟があった。

 彼女の集中力とセンスにより生み出された、巨大な魔力塊。重みはないが、性質量は計り知れない。

 それを両手に抱え、ルナはテレスに狙いを定める。


「ルナちゃん、それをどうするの??」

「これをアイツにぶつけるのよ。この魔法は、魔力の質に応じて威力が大幅に変わるから、モナのおかげで物凄いエネルギーが溜まってる筈」

「たしかに…というか、モナが思ってるよりも強力なエネルギーを感じるよ!こんな膨大な魔力を、よく留めてられるね…びっくりだよ!!」

「アリアとみっちり練習したからね。これくらいは、やって見せるわ!」


 両腕に抱え込む量の魔塊を体の前に突き出す。

 無色透明な球体(スフィア)の中で、ぐるぐると魔力が流動。隠し切れないオーラが、大広間を支配するかのように蠢く。

 当然、その只ならぬ魔気に、拳を交えていた両者はルナの方へと視線を向けた。


「―――??」

「……なんだありゃ?」


 集中を切らさず、懸命に悪魔へ拳を打ち続けていたテレスは、一瞬気を緩ませた。その隙を逃すことなく、更にルナの魔法効果をすぐに理解した上で、悪魔は魔法を吹っ掛ける。

 次の瞬間、テレスの脇腹に悪魔の腕が突き刺さり、そのまま何事も無かったかのようにすり抜けた。その間、腕から体内へ、直接的な魔力干渉が起こり、得体の知れない悪魔の魔力が、瞬く間に体の自由を奪っていく。


「ぐっ、しまった!!麻痺性の毒魔法か!!?」

 

 喰らった魔法を理解するも、既に手遅れ。テレスの場合、麻痺による硬直状態は数秒程度だが、それでもルナの魔法を与える余地としては十分だった。

 そして、死神がその場から離れたことを確認し、ルナは蓄積した魔力を一気に解放する。


「いくわよ!〝魔力乱壊砲(マジックバースト)〟!!」


 大量の魔力を閉じ込めていた小結界に開く、一点の穴。そこから膨張した魔力が吐き出され、一直線にテレスへ向かっていく。

 神霊族の扱いにくい魔力を無理に抑え込んでいた分、発散した際の威力は打った本人の想像を遥かに超え、巨大な魔力光線と化した。

 麻痺のせいで手も足も出せないテレスは、銃弾並みの速さで迫り来る砲撃を真正面で被る。


「うっ…!!?ぐ、グワァァァ!!なん、だ、これは!!!」


 ルナの魔法を受け、苦しみだす。心なしか、混乱の表情も伺えるテレスの様子に、モナは焦りつつも冷静に尋ねた。


「る、ルナちゃん…。その、死んじゃわないよね……。すっごく苦しそうだよ」

「ん?大丈夫よ。この魔法でダメージを負うことはないわ」

「え??」

「何が起こったのか、理解に苦しんでるのよ。すぐに分かるわ」


 やがて麻痺の効力が切れ、テレスは自由の身に。外傷は特に見当たらず、真っ先に悶絶の原因であるルナへ怒りをぶつけてくるかと思いきや、そんな感情すら抱く間もなく、前のめりになって倒れていた。

 完全に気を失っている。悪魔を打ち倒そうとする一心だったが故に、体力も魔力も尽きかけていた所を上手く狙えたのだろう。


「ハァ、ハァ…なんとか、上手くいったようね」


 呼吸を整えた後、ルナはテレスに与えた魔法について解説する。


「今のは、私が溜め込んでた魔力をアイツの中にぶつけて、体内の魔力法則を根底から〝破壊〟したの。ほら、自然魔力って無理に体内に取り入れようとすると、自分が持つ魔力と性質が全然違うから、魔力の循環経路に異常をきたすでしょ?それをやったの」

「は、はぁ……」

「本来は、自然魔力を集めるだけで事足りるけど、相手は只者じゃないから、そこにモナとアリアの魔力を足して、ようやく倒れてくれるレベルだったわ」

「え?アリアちゃんの?」

「そ。アリアのシールドの一部を魔力に変えて、少しだけ借りてたのよ。もしもの時のためにね」

「え、えっと、つまり…サラッと言ってるけど、凄いことやってのけたってことだよね?ルナちゃん…」

「そんなことないわ。私一人だけじゃ、絶対無理だもの」


 アリアが得意とする〝魔壊魔法〟の一つ。自然魔力を懐に溜め込み、相手にぶつけ、魔力の破壊(バースト)を図る。

 魔力を込めるのに少々時間がかかり、あまり戦闘には向いていないが、予想外の悪魔の参戦により、十分なエネルギーを蓄えられたのだろう。

 他者の魔力をかけ合わせれば、より強力な砲撃となり、速度・威力・質は急激に上昇する。元最強魔王と神霊族の持つ魔力を重ねた自然魔力光線は、テレスの魔力法則を書き換える要素になり得たのだ。


「さあ、ユィリスが心配だわ!様子を見に行くわよ!」

「ふにゃ!?なんであんな魔法打った後でそんな元気なの~~!??」


 様々な要因が重なり、勝利を収めた二人。何より、ルナの潜在能力(ポテンシャル)が色濃く表れた一撃は、悪魔をも静かに驚かせた。

 去り際、ルナは横になったテレスがいる方角へ振り向き、一言告げる。


「守ってくれて、ありがと!」

「どうしたの??」

「ううん。何でもないわ」

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