side_Grave-maker (3)
その瞬間、ミリセントが僅かに目を見開き――次いで微かに口元を綻ばせるのを墓掘りは見た。こんな見るからに運に見放されてそうな男との運試しが一発で終わらなかっただけでなく、むしろ二回目に表を出さなければ自分が負けていたという事実を意外に思い、かつ、そのことが嬉しくてたまらないといった表情だ。
自分はどうだろう、と墓掘りは考えてみた。不思議な感覚だった。
喜びよりかは、困惑の方が勝っている。
これがビギナーズラックという奴……とは違うのか。
まだ勝てていない。
……次だ。
墓掘りはコインを手に取り、拳の中で固く握り締めた。
次に出す面も、既に決められていた。
「真剣な目になりましたね」
ミリセントが、三日月のような笑みを婉麗に深めて言う。
「良い。……素晴らしいですよ。頑張ってください、是非に」
墓掘りは、まだくだんの占い師のことを頭から信じたわけではなかった。しかし、既にベットしてしまった命だ。
自分が出くわしたのが天使だったか悪魔だったか後から考えることに、今更何の意味がある?
今は目の前の破滅の聖霊だ……。
「……」
墓掘りはコインの面を決め、また帽子の下に隠すように差し入れた。
ミリセントが鋳貨を右手の親指にのせ、トスの準備をする。
――墓掘りはまだ知らない。
突然やってきた今にも死にそうな男が天災級のギャンブラーに引き分け、あまつさえ初戦を勝ちかけたという事実に、見物に詰めかけていた所員で一杯になっていた地上の監視室では上を下への大騒ぎが持ち上がっていることを……。
それは、この刑務所でミリセントを収容することになった日から、これまで一度も起こらなかったことだった。




