side_Grave-maker (2)
・話好きの刑務官
「ミリセントは、相手の運を丸ごと奪っちまうような凶悪な聖霊だ。あん? 奪われた方がどうなるかだって? 名前の通りさ。破滅だよ。……まあ、なんつーかな、劇的な最期を迎える。何回かそういう状態になった奴を見たが、しみじみ思ったよ。この世界で生きていられるだけでおれたちは十分にラッキーなんだなって。……運がすっからかんになったらさ、生きていられないんだ。自然界が真空を許さないのと同じ理屈じゃないかな……っつーのはほら、ガキの頃に学校で習ったような単純な科学の話だよ。ここに真空管があるとして、その蓋が開けられたら、まわりの空気は血相変えて管に流れ込むだろう? で中身の真空を潰すわけだ。正確には満たすんだろうけど、まあ例えの話さ。それと同じ理屈で、世界がそいつを消しにかかるんだよ。運命に殺されるんだ。……本当に運がない状態ってのは、言っちまえば人間の形をした空洞も同然なんだろうな。世界そのものに殺意を向けられたら、そりゃ誰だって生きていけない。だからあいつは破滅――破滅の聖霊、ミリセント・リリアン・ワーズワースなのさ」
・気の良い受刑者
「勝つぜ、おらぁよ。へへっ。ポーカーはおれの一番得意なゲームなんだ。勿論、イカサマが得意なんだぜ? ここにぶち込まれたとき、ミリセントとの勝負に勝った奴はどんな極悪人でも即無罪放免って話を聞かされてよ、奴といつかゲームするときのためにずっと相部屋の奴らと練習してきたんだ。今日の相手もポーカーで勝負するらしいからせいぜい勉強させてもらうぜ。相当やばいことをしでかしたっつーいけすかない野郎だが、かなり腕の良い詐欺師だったらしいから、きっとずるい手を考えてくるはずだろう。まあ、簡単に負けるなんてことはないだろうし、ミリセントの運を削ってくれるだけでも充分さ。大トリはおれがもらうよ。――ところであんちゃん。あんたの頭に生えてるそいつぁ、一体なんだい?」




