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ショートショート7月~2回目

類友

作者: たかさば
掲載日:2021/07/03

気が付いたら、いつも居たはずのあいつが、いなくなっていた。


ほんの少し、気に入らなかったことを注意しただけなのに、あいつは大げさに受け取って。

勝手に盛大に傷ついて、俺のもとから逃げ出してしまったのだ。


…別れを口にする事なく、あいつは去ってしまった。


……せめて、別れの言葉くらい、かけさせてほしかった。


さようならが、あいつに届くことを願って、文字を並べる。

さようならが、あいつに届くはずもないのに、文字を並べる。


いつになく、センチメンタルな気分が俺を襲う。


あいつがいない、世界を眺める。

あいつがいないだけなのに、世界がまるで違う。


……あいつのいない世界は、実に平穏だ。


俺を否定する言葉がここには微塵も見当たらない。

俺を軽んじる言葉がここには微塵も見当たらない。


思えば、あいつが一緒にいた世界は、実に辟易するものだった。


あいつに貶されるたびに、俺は自分を呪った。

あいつに罵倒されるたびに、俺は自分を蔑んだ。


あいつが中心の、俺の日々。


あいつへの気持ちを優先させた、俺の純真。

あいつの涙に騙され続けた、俺のやさしさ。


俺の気遣いありきの、相思相愛。


いつだってあいつの顔色をうかがい、言葉を吐いた。

いつだってあいつの顔色をうかがい、自分らしくない言葉を吐いた。


……あまりにも、あいつと一緒に、いすぎて。


俺は、いつの間にか、自分の言葉を、放り出してしまった。


俺らしくない言葉が、あいつの喜ぶ言葉が、次々に浮かんでくる。


……俺は、思いのほか、繊細だったらしい。


俺の横に、憎らしいあいつがいないのが、寂しいなんて。

俺の横で、腹立たしいことをつぶやくあいつを求めてしまうなんて。


長く、長くあいつと共に過ごしてきた俺には、わかる。


今頃、あいつも、寂しくてたまらないはずだ。

今頃、あいつは、俺の胸を思い出して、枕に縋りついているはずだ。


俺は、心が広いから。


あいつを迎えに行こうと思っている。

あいつを迎えに行けるのは、俺だけだ。


年金が入ったら、探偵を雇って、あいつを必ず……見つけ出す。




ようやく、束縛のきつい彼氏から逃げ出すことができた。


小さなことをいつまでもぐちぐちと攻め立てる、典型的なA型の彼氏。

小言を聞かない日がないくらい、いつだって目ざとくこちらのミスを責め立てた。


…別れたいなんて言ったら、ものすごい攻撃を食らうとわかっているから。


……何も言わずに、着拒、ブロック、アカウント削除、した。


彼氏にかかわるすべての事から、逃げ出すと、決めたから。

彼氏の事を、きれいさっぱり忘れて、新しい生活を手に入れると、決めたから。


こんなにも、自分は優柔不断だったのかと、思う。


彼氏がいない、世界を眺める。

彼氏がいないだけなのに、世界がまるで違う。


……彼氏のいない世界は、実に平穏だ。


信じられないセンスの悪さに、カツを入れるパワーを使わずに済む。

つまらないオヤジギャグに、いちいちかわいらしく反応しなくて済む。


思えば、あいつが一緒にいた世界は、実に辟易するものだった。


ちょっと突っ込むと、すぐにヘタレた事ばかり抜かすからめんどくさかった。

ちょっときつめにダメ出しすると、俺はもう駄目だと絶望するのがうざかった。


あいつがさりげなく主導権を握っていたのが気に入らなかった。


自分の写真は載せないくせに、こっちの写真をどんどんリクエストするとか。

こっちがえーんって泣いたらお終いの、一連の流れができているのが気持ち悪かった。


はたから見たら、相思相愛の、バカあまカップルってね。


つまんないつぶやきに、砂糖まみれのくどい返しをされて、引いてたんだよ。

無下にするのもなんだと思って、絵文字で返したらさらに砂糖漬けになって返ってきてさ。


……ちょっと、付き合いすぎちゃったんだよね、たぶん。


ごく普通の言葉じゃ、満足できなくなってきちまった。


言葉のどこかに、甘い要素を求めるようになっちまった。


……完全に、毒されてしまった。


スッキリとした画面に、ねちっこい呟きがないのが、少し寂しい。

飾らない武骨な呟きの続く画面に、ゲロ甘な文字列を求めてしまうとは。


足掛け三年の、付き合いか。


今頃、あいつも、寂しくてたまらないのかも、しれないな。

今頃、あいつは、俺という彼女を追い求めて、ポエムでも呟いているかもしれないな。


……だまして悪かったとは、思ってるんだけどさ。


あいつに本当の事は、言えないな。

あいつに本当の事がバレなくて、マジよかったわ。


そうだ、次の部誌のネタ、「ツイ恋物語」で書いてみるかな。


あいつのおかげで、甘いやり取りを学んだからな。


……きっと、良いものが書けるはずだ。


いけすかない、文芸部のOBどもに、見せつけてやるぜ!






……見せつけた、結果。






どうなったと、思う……?

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― 新着の感想 ―
[一言] ん? 性別が……? ん? 文芸部のやつに見せつけたら、お月様に作品が投稿された……。というオチでしょうか。
[良い点] 全年齢でそっち系?。サラサラと読ませてドロドロ落とし。 [気になる点] うん、コメナシで。(駄目だ、突っ込んだら駄目だ、罠だ。)
[良い点] >>> 年金が入ったら、探偵を雇って、あいつを必ず……見つけ出す。  すっごく笑いました [気になる点] ぎゃー! ヘンテコ物語。 [一言] わけわからん執着ストーリー。はい。わかんない…
2021/07/03 21:40 退会済み
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