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6、小悪魔の料理

朝起きると既に嘉見くんはいなかった。


一緒に生活してるはずなのに、1人で生活してるみたいで、寂しい。


嘉見くんが朝早い理由って、なんだろう?

部活の朝練とか?


私は、今夜にも聞いてみようかなと思いながら、家を出た。


次は英語なのに辞書がなくて、修ちゃんに借りようと反対の校舎に行く。

修ちゃんと嘉見くんはG組だった。A組の私とは前半クラスと後半クラスで、校舎が折れている様になっており、反対側にある。


嘉見くんをすぐに見つけられなかったのも、クラスが離れていたせいだと思う。反対側の校舎は行きづらかったし。


「修ちゃん、辞書貸して」


「おう」

修ちゃんは電子辞書を差し出した。ありがとうとお礼を言い、隣の席を見るが嘉見くんがいない。疑問に思いながら聞いてみる。


「あれ?修ちゃん、1人?珍しいね、嘉見くんは?」


「ああ、女子に呼び出されてな。多分今頃告られてる。それより同居生活は上手くいってるか?」


「上手くいってないと思うけど、生活は快適だよ」

嘉見くんの家は最新家電が揃っているから、家事なんてほとんどしなくていい。

お風呂も大きくて、毎日贅沢だなと思いながら入ってる。


「那奈と嘉見って、絶対合うと思ったんだけどな。那奈はいつまでいるんだ?」


「あと5日ぐらいの予定だけど」


「前に言ってたお礼は言えた?」


「話は少しするけど、すぐに部屋に入るし、ゆっくり話出来なくてまだ言えてないよ。頑張って話しかけても、なかなか心開いてくれないし」


「そっか、残念。嘉見って、食べることに興味ないだろ?たまに俺や他の友達と放課後心配してどこか行くようにしてるけど、いつか倒れるんじゃないかと心配してたんだ。那奈がご飯とか作ってくれたりしたら、食べることに興味持つかなって思ったんだけどな。あっ、2人だから、駄目なのかな?今日俺嘉見の家行くから、晩御飯作ってよ。3人で食べよう」


突然の提案に、驚きつつ胸が踊る。

嘉見くんの役に立てるといいな。


「因みに、嘉見の好物は肉の唐揚げだから。それがあれば多分大丈夫だよ」


「苦手や嫌いなものは?」


「さあ、聞いたことないから、わかんないな」


「修ちゃん、帰りは6時ぐらいでお願いしたいんだけどいいかな?」


食材から、鍋とか色々買わないといけないし、それに出来たてを食べてもらいたいし。


「OK。旨いもの期待してるな」


「あっ、それと嘉見くんの好きな色って、何か知ってる?」


「青かな?ペンとか携帯とか持ち物青が多いし」


「ありがとう」


今日の放課後は忙しくなりそうだ。



放課後食材を買い、急いで帰った。

着替えて早速料理を開始する。


嘉見くんは料理しないみたいだけど、鍋や食器類はあったから助かった。

鍋やフライパンは有名メーカーのものだし、コンロも電気で3つもあるし、この環境で料理出来ることに喜びを感じていた。

無意識で鼻歌を自然に歌っていた。


ちょうど料理が出来た6時頃、


「ただいま」と言う修ちゃんの声がしたから、私は玄関まで行き「おかえりなさい」と言った。


嘉見くんも続けて「ただいま」と言い、靴を脱いだ。


「何?丸原が来るとか珍しいとか思ったけど、新婚ごっこでも(うち)でするつもり?そういうのは、丸原の家でしなよ。迷惑だ」


「・・・新婚ごっこ?」


「料理の匂いがする。2人で食べるんだろ?」


「違うよ。3人で食べようと思って」


「はっ?何勝手に作ってるの?ご飯は各自って、言っただろ?」


「まあまあ、とりあえず文句言う前に手を洗って座れ。マジで那奈の飯は美味しいから。嘉見の好きな肉の唐揚げもあるし」


修ちゃんは強引にリビングの椅子に座らせた。

嘉見くんは、じっと机の上の料理を見た。


「俺、手料理は家族が作った料理しか食べないって、決めてるんだ。前に彼女の手作り弁当に髪の毛入っていたから。それ以来他人が作ったものなんて気持ち悪くて嫌で。差し入れとかも全部断ってるし」


「嘉見、ごちゃごちゃうるさいよ。那奈が俺と嘉見のために作ってくれたんだ。食べ物に罪はないだろ。ごちゃごちゃ言わずにとりあえず食え」


丸原くんに言われて、嘉見くんは渋々箸を持った。

好物の肉の唐揚げをとり、口に入れる様子をドキドキしながら見ていた。


「・・・あっ、美味しい」


「本当に?嬉しい!あの、よかったら野菜も食べて。このサラダとかも。ドレッシング作ってみたけどどうかな?」


「美味しいよ」


「だろう?那奈は料理上手だからな」


「・・・てか、丸原って、こいつの料理食ったことあったっけ?」


「手作りのお菓子を何度か。アップルパイとか、フルーツタルトとか」


「・・・それでよく料理上手言えるな」


「お菓子をなめるなよ。分量や行程間違うと不味いんだ。意外と奥が深いんだぞ。お菓子上手く出来るなら、料理も絶対上手いと思った。うちの母さんの料理より上手いかも」


「修ちゃん、それは褒めすぎだよ。お世辞でも嬉しい。ありがとう。またお菓子作るね」


「おう、楽しみにしてる。聞いてくれよ、それより今日の数学の授業でさ_____」


修ちゃんが、今日あったことを話しだした。

嘉見くんと私はご飯を食べながら、笑ったり、突っ込んだりで、楽しい食事だった。


こんなに、楽しい食事はいつ以来だろう。

たくさんの笑い声、漫画やドラマの中の憧れていた食事風景。


嬉しくて胸がいっぱいで、思ったより食べれなかった。







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