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5、小悪魔と母

朝、学校に着いて携帯を見ると、家からの着信が50件を超えていた。


嘉見くんに母には連絡すべきだと言われたことを思い出した。


授業が始まるまでまだ時間に余裕がある。

誰も来なそうな屋上に行き、母の携帯に電話した。


「那奈?!」

第1声は、慌てる母が私を呼ぶ声がして、心配しているのがわかって嬉しくなった。


「昨日仕事から帰ったら、那奈は居ないし、(さとし)くんは縛られてるし、訳がわからない。那奈は無事なのね?」


哲くんとは、義父のことだ。


「うん。無事だよ。お母さん、私ね昨日あの人に犯されそうになったの。だから家を出たんだ。家には暫く帰らない。あの人と同じ部屋の空気吸いたくない」


「えっ?えっ?お母さん、理解が追いつかないんだけど、とにかく家に帰ってきて。みんなで話し合いましょう?誤解があると思うのよ」


「だから、家には帰らないって言ったでしょ!お母さんはあの人の味方なの?」


「どっちの味方とかじゃくて、2人の味方よ。私達家族でしょう?話し合えばわかり合えるわよ」


母のことは好きだ。

だけど、空気が読めないところは嫌いだ。


発言や行動はいつでも自分中心。

悪気はない。でも、自分では気づいてない。


理想は高く、いつでも自分のやりたいようにする。

話し合えばわかると言うけど、無理だ。

母と考えが違うと、とにかく否定し、自分の思いどおりにさせようとするところがある。


話し合っても無理だろうなと思っていたけど、予想通りだった。

「じゃあ、お母さん犯されそうになった男と一緒住めるの?お母さんも女ならわかるでしょ。私もうあの人が気持ち悪くてたまらない。無理」


「那奈の話はわかったわ。でも、哲くんの話も聞きたい。時間もらえる?今どこにいるの?」


「友達の家。暫く泊まってもいいって、言ってくれてる」


「なら、お言葉に甘えましょう。後日お礼に伺うわ。そうね、1週間待って」


「うん。わかった。また1週間後電話する」

私は電話を切った。


1週間で事態が変わるだろうか?

私が1番いいのは、あの人が出ていくことだけど。


********


朝渡された合鍵を使い、嘉見くんの部屋に入った。


私の方が早く帰ったみたいで、「失礼します」と言ったけど、返事はなかった。


料理を作ろうと、冷蔵庫を開けて驚いた。

中には、水のペットボトルと、ゼリー飲料しか入っていなかったのだ。


驚いていると、嘉見くんが帰ってきたみたいで、玄関から音がした。


「おかえりなさい」

玄関まで行って嘉見くんを迎えたけど、少し沈黙して


「ただいま」と返事が返ってきた。


「それより大変。冷蔵庫の中に水とゼリー飲料しかないの」


「別に大変じゃないし。それが通常だから」


「えっ?」


「だから、うちは余計な食材とかないの。だから、食事は各自って言っただろ?あっ、ゼリー飲料飲みたいなら、飲んでもいいけど」


「・・・あの、普段嘉見くんは、何を食べてるの?」


「朝は食べない。昼は学食。夜はゼリー飲料か、どこかに外食」


「・・・あの、それで体調おかしくならないの?」


「ならない。いたって元気」

平然と言う嘉見くんを見て思った。だから細いんだと。


「あっ、私お母さんと話したよ。1週間待ってって、言われたの。1週間お世話になっていい?」


「ああ」

嘉見くんは、冷蔵庫からゼリー飲料を取り出し、口にくわえ自分の部屋に入って行った。


お風呂から上がって、部屋に入るとシンプルな柄のパジャマが置いてあった。


嘉見くんのパジャマかと、パジャマを着るうちに、ドキドキしてきた。

これって、間接キスならぬ、間接パジャマみたいな?


もちろん洗剤の匂いもするし、ちゃんと洗ってあるけど、人の・・・しかも男の子のパジャマを着るなんて、普通に生活していたらそんな機会はない。


ある意味、今は貴重な体験してるんだろうな。


そして、1週間なんてきっとあっという間に過ぎるんだろうなとか、色々考えていたけど、あまり寝ていなかったせいか、眠くてすぐ寝てしまったのだった。




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