1、小悪魔と呼ばないで
マイペース連載ですが、よろしくお願いします。
「羽田野って俺のこと好きなんだろ?付き合おうぜ」
クラスの男子にいきなり言われて、
「いや、全く好きじゃないから、付き合うとか無理」
咄嗟に断ったんだけど、
「じゃあ、なんで制服の袖のボタンつけてくれたんだよ?!俺のこと好きだからじゃないのか?!」
目の前で怒る男子の言っている意味がわからない。
「えっ?意味なんてないよ。気になったからつけただけだし」
「・・・やっぱり、羽田野が小悪魔って噂は本当だったんだ」
私が小悪魔って噂が流れているのは知っていたけど、実際に目の前で言われると落ち込んだ。
「別に、俺は羽田野のこと好きじゃなかったし、俺のこと好きならって思っただけだから」
クラスの男子は走り去った。
後ろから、笑いを我慢している親友の美八の声がした。
一応、何かあった時のために近くにいてもらったのだ。
「いや~、小悪魔ちゃんまたやっちゃったね。ボタンつけるとかハードル高いことするからだよ」
「何がハードル高いの?」
「だって、ボタンつけるとか母親か彼女ぐらいしかしないものでしょ」
「そう?別にソーイングセット持ってるクラスメイトがつけたっていいでしょ。誤解する方がおかしいよ。だって、気になったんだもん、ボタンがぷらんぷらんしてるの」
「まあ、那奈の場合はかわいくて優しいうえに声が綺麗で癒し系だから、コロッといっちゃうんだよ」
「声?普通だと思うけど」
「普通なら告白なんて何回もされないでしょ。いい加減気づきなよ。優しくするだけして、あっさり振るからって、小悪魔って噂が流れてるんでしょ」
ビシッと美八に言われて、考えてみる。
私こと羽田野那奈が小悪魔と噂が流れて約3ヶ月。
優しさのつもりで、声をかけたり、ノート貸したり、色々助けたりしていたら、何故か好意を誤解され、今回のようなことになる。
今回のクラスの彼で5人目だ。
でも、5回とも断った。
私が小悪魔だと噂も広まっているはずなのに、同じことを繰り返していた。
最近思う。
優しくするのは間違っているのかと。
優しいって何?私はしたいようにしてるだけなのに。
だけど、やっぱり困っている人を見るとほっとけなくて、声をかけてしまうのだった。