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『神音』  作者: もちまむ
1/1

《はじまり》

僕の出発点となった今日この日を絶対に忘れない。


 20××年、春。


長期休みを経て、今日から高校2年生。



最寄り駅から校舎まで、約10分の道を、

同じ制服に身を包んでいる生徒の大軍と進む。


真新しい制服に身を包み、

まだ少しあどけなさの残る生徒は今年入学した1年生であろう。


そこでふと、自分、美来勇也(みらいゆうや)が、

1年だった頃のことを思い出した。




「バンド組もうよ!」



あれは、窓際の1番裏の自分の席に座っていた時、

確かお昼の時間になってすぐだった。


多方一緒にいることが多くなった、

春輝(みなもとしゅんき)の唐突な一言だった。


「ふあ?」


理解に時間がかかり、出てきた一言がとても間抜けたものだった。


「いやぁ、新入生親睦会したじゃん?

その時の、勇也歌すごくうまかったから、

ボーカルやらないかなって!」


言いながら、春輝は前の椅子に後ろ向きで腰掛けた。


「ちょぢょちょまって。僕そんなに上手じゃないし、

ボーカルなんて! そんな……。」


「大丈夫。大丈夫。俺経験者だから! ね!」


「ね!」と言われても。


春輝は、皆に平等に優しく、清潔感漂う風貌に、

高身長イケメンというスペックの持ち主だった。


多くの女子を虜にしたであろう爽やかな笑顔を向けられ、

僕はたじろいだ。



「ね。なんて言われても、僕には無理だよ。」


「何話してるの~?」



教室の後ろ側のドアから、赤石 歩夢(あかいしあゆむ)が、

大きめのお弁当箱を持ってやってきた。


手に、ペットボトルのお茶が握られていたので、

自販機に行ってきたのであろう。


そのまま空いている隣の席に腰掛けた。



「バンド組まないって話してたところだよ。」


「ああ、その話か。」


「僕には無理だって、歩夢からも言ってよ。」


「え~?俺は賛成。だし、俺ベースやるから。キラン。」



歩夢は、ウインクして顔の付近でピースした。

こいつも、引き入れられたあとだったか~。



「そもそも2人は楽器なんて、できるの?」


「うん。中学の時同じバンドで演奏してたからね。」


ぽっちゃり体型の歩夢は、

ふくよかなほっぺにお弁当を詰め込みながら、話した。


歩夢の、ゆるキャラのようなほのぼの感に、

ベース姿は少し想像つかない。



「中学でバンドって、すごいね。」


「そんなことない、そんなことない。

で、どうする?やる?やらない?」


「俺、結構勇也の歌声好きなんだけどなぁ。」



「なになに?なんの話し!?」



同じクラスの福井 (ふくいはな)が、近づいてきた。


「バンドやらない?って、勇也に誘ってるんだよ。」


「へぇ!いいじゃん!もちろんボーカルだよね?

私、勇也くんの歌すごく上手って思ったよ!」



福井さんにそこまで言われて、少し耳が暑くなった。



「そっそこまで言われたら…。」



照れた拍子に、許可してしまった。

自分のちょろさを疑った。


「おっ、いいねぇ。じゃあ決まり!」


春輝と歩夢が、手をグーにして喜んだ。


そして俺達は、まだなも無きバンドを結成した。


でもやっぱり、

僕なんかがバンドなんて。


ましてや、ボーカルだなんて。



不安しかないこの状況。



ここから僕は変わっていく

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