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僕は、女の子を拾います (短編)

作者: 茉莉花じゃすみん

カッコキメの更新代わりに短編を。

いつもと雰囲気違いすぎるので、風邪ひかないように。

朗らかな夕方。

秋の柔らかな風が頬を撫でる今日。


僕は、女の子を拾いました。



『僕は、女の子を拾います』



その体躯は140センチ程の小柄な様子。

段ボールの中で体育座りをしていた彼女を家まで連れて帰ったのは、

僕が厭らしい趣味を持ち合わせているとか、そんなわけではないのです。


「ありがとぉ」


僕は165も身長があるので、彼女が子供にしか見えません。

というか、恐らく子供なのです。


くりくりと忙しなく動く緑の瞳。

可愛らしくすぼめたお口は小さく、笑顔を見せるときには大きく開きます。

左側の方に八重歯。

大きく口を開くとちらりと覗いて、その容姿を更に幼く見せます。

ボロボロに穴が開いてしまった白いシャツの、はだけた部分からは白い肌が見えてしまっています。

七分袖は捲られて、細い手がニョキリと伸びています。

紺色のジーンズは、ワザとではないダメージで所々穴が開いてしまっています。


「怪我とかはしてないのかい?」

「ううん、だいじょーぶ」


この子の容姿で一番気になる点は、やはり獣の耳が生えている点です。

アニメや小説で獣人というのを知ってはいますが、

まさか現実世界にいるとは思わなかったので、最初は驚きました。


黄色の毛に黒ぶち。

耳だけはそんな色合いをしています。

ネコかヒョウか虎か、良く分かりませんがネコ科なのかな、とは思っています。

その下には金色の跳ねたロングヘアが乱れていて、きっと数日洗っていないのだと察します。


「とりあえず、シャワーでも浴びますか?」

「いやだ、おなかすいたの!」


高く舌足らずな口はそう文句を言います。

仕方がないので、僕は冷蔵庫に入れているもので、なにか食べられないか探ります。


唯一残っていたパスタの麺を湯掻き、ケチャップをかけて混ぜて提供しました。


「おいしい!」


素手で食べ始めた少女は、温かいパスタがよほどおいしかったのか、

一気に二束分を食べてしまいました。


「シャワーでも浴びますか?」

「あまい食べ物ないの?」


僕は極めて小さな溜息を吐いて、それから家を物色します。

賞味期限が切れた大福を見つけたので、ソレを手に渡してあげました。


「つぶあんだ!」

「シャワー浴びませんか?」


まったりと大福を食べてから、少女はニコリと笑って「しょうがないなぁ」と答えました。

どうやら僕がシャワーを浴びたくて仕方ないと思われているみたいです。


「ミアは水がきらいなの」

「へぇ、そうなんですか」


服を全て脱がせて、お互いに裸になります。

肋骨が浮かぶほどに細く泥だらけの身体。

泥のないところは輝くほど白く、目が奪われてしまいます。


「ねえ、しゃわー浴びるんじゃないの?」

「そうでした」


二人で浴室に入り、シャワーから水を出します。

お湯を沸かすのに四苦八苦してしまい、結局一分近く冷たい水を浴びてしまいました。


「かぜひいちゃうよぉ」

「ちゃんと温まりましょうね」


全身を濡らして、置いてあるボディソープで全身を泡だらけにします。

柔らかな肌を掌で撫でる度、少女、ミアは擽ったそうにしています。

ミアは今度、僕の身体を泡だらけにしはじめました。

柔らかな掌が、僕の筋肉を撫でて綺麗にしていきます。


「ふあぁ、いっぱいきれいになったね」

「まだですよ」


僕は、ミアの黄色い髪の毛を泡だらけにしていきます。

人間の耳があるはずのところから、獣耳が上に向かって生えているのが不思議です。

耳回りの毛を泡できれいにしてやると「こしょばいよぉ」とミアが抱きついてきました。


全身を一気にシャワーで流します。

フワフワの髪の毛、獣耳が姿を現し、全身も泥一つなくなりました。


「いいによおい!」

「よかったですね」


僕は先に浴室から出てタオルで全身を拭いてしまうと、

ミアの新しい服となりそうなものを家中ひっくり返して探しました。

丁度、可愛らしいリボンのついた服やヒラヒラのスカートを見つけたので、

それらをミアの元へと持っていきます。


浴室の前には、びしょぬれで歩き回ろうとしているミアがいました。

急いでタオルを取り出してミアの身体を拭いてしまうと、

手に持っていた可愛らしい服を渡します。


「ミアのふく!」

「そうですよ」


ミアはスカートを履き慣れていないのか前と後ろを逆に着てしまいます。

僕は腰元をもって回して戻してあげると、ミアは自慢げにポーズを決めました。


「ソウも着ないの?」

「僕は今までのでいいです」


元から来ていた服を着直して、タオルを数枚とってカバンに入れてしまいます。


「今日はココで寝ないの?」

「いいえ、家主が帰ってきてしまうので」


そこらへんに置いてあったグラスを手に持ち、水道水を何度も飲みます。

それをミアにも飲ませ、僕達は家を後にしました。



「ミアはね、ふかふかのおふとんがいいの!」

「また見つかって段ボール生活に戻りますよ」


僕は、擦れてきてしまっている自身のスカートの裾を握って下へ引っ張りました。

最近ピッキングが上手くなってから、食べる量が増えてスカートが小さく感じるようになりました。


「じゃあ、また会えるといいねぇ」

「そうですね」


久し振りに出会えたスラム仲間のミアは、柔らかなベッドを求めてまた旅立ってしまいます。



一人になった僕は、次の家を探してまた発つのでした。



そうしてまた、段ボールに入ったミアを見つけるのです。

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