これはおっぱいの話です
おっぱいを巡っててんやわんやする2人の阿呆を
書いてみました!
短編でサクッと読めるので、ぜひ読んで頂けると嬉しいです!
1キロはあろうかという長く急な下り坂。
巷では“地獄坂”なんて呼ばれている。
なぜならその坂の先には巨大な交差点。自転車で下ろうものならたちまち地獄行きだ。
「「イノシシの群れが〜西の森から〜わんさか〜わんさか〜」」
何やら楽しげな歌を口ずさみながら、一台の自転車がその長い長い下り坂を下っていく。
―――ゆっくりゆっくりではなく
猛スピードで。
その時速60キロは出ようかという暴走自転車に跨るのは二人の阿呆。
ハンドルを握る命知らずは、名をしょうた。
そしてその肩に捕まりいけいけと言わんばかりに拳を掲げて後ろに跨るいかにもサークルの新歓で率先してコールを振ってそうな恥知らずはたかし。
久闊を叙する10来の友の如く見えるこの二人、実はついさっき知り合った
ばかりである。
―――事の発端は1時間前へと遡る
時刻は既に12時を回り、真っ暗な公園にひと際ぽつんと佇む移動屋台。
そこでは2人の大学生が時間を忘れ飲み明かしていた。
「「あーーーー女ってわっかんねぇ!!」」
「「、、、む?」」
大ジョッキをドンと叩きつけ、叫んだその声がハモり、二人はお互いに顔を
見合わせる。
阿呆たちには、その一言で十分だった。
酒も相まって、次の瞬間には肩を組んですっかり意気投合する二人。
「まさか同じ大学とはなぁ」
顔を真っ赤にしながらビールを口へと運ぶたかしは、しょうたと同じK大学の3年生。
経済学部と法学部で学部が違うため、話すのはこれが初めてである。
たかしもまた同じだった。
しかし阿呆にそんなことは関係ない。
まるで古くからの友人に話すかのように、たかしは相談を始めた。
「聞いてくれよ、俺には三年付き合ってる彼女がいるんだ」
「三年かぁ、てことは結婚も近いんじゃねぇか?羨ましいなこのやろ」
「あぁ、だがな、、、」
いかにも意味深長な間を作ったたかしは、ビールをグイッとあおりその勢いで言う。
「今の今まで、おっぱいすら触らせてくれねぇんだよぉ!!
結婚するまでそういうことはしたくないらしいが、おっぱいだぞ!?OPPAI!!
何も膜をぶち破ろうなどとそういった話をしている訳じゃねぇんだ!!
女ってのは何考えてっか分かんねぇよほんと!!」
「それなっ!!」
ちくわの穴を覗き込みながら独自の理論を爆発させるたかしに激しく同意した
しょうたは、バトンを受け取ったかのように自分語りを始める。
「俺もよぉ、大学に好きな子がいてだなぁ、そりゃもう誰もが振り向く学年のマドンナ、
高嶺の花子さんだ!!」
「おぉ!!」
「その子とは確かに付き合っちゃあいねぇし、いい感じって訳でもねぇ!!
どうせ俺なんてのは友達の友達、知人Bだってことくらい分かってる!!
でもなぁ~でもよぉ~!!
ずっと追いかけてきたんだよ!小、中、高、大!ドラクエみてぇにひっついてよぉ、、、
なのに、、、、なのになぁ、、、!」
これまた意味深長な間を作り、グイッとあおったジョッキを叩きつけるとしょうたは
続ける。
「今の今まで、おっぱいすら触らせてくれねぇんだよぉ!!!!」
「それは当たり前な気もするが分かる!分かるぞぉ!!
女は貞操を気にしすぎなんだ!バージンロードがなんだってんだ!だから童貞が増えて
少子高齢化が進むんだ!」
それでスイッチが入ったのか、二人は更に自論をぶつけ合う。
「大体童貞と処女で希少価値が違うのが気に食わねぇ、童貞は悪、処女は正義みたいな
風潮な!あれが気に食わねぇんだよ!」
「ほんとそれだぜ相棒!どっちも同じバージンだっつーの!童貞を守れねぇ奴に
何も守れねぇんだよ!」
「違いねぇ!」
ひとしきり盛り上がり、二人同時にビールをくいっとあおると、空の大ジョッキを
突き出し声を揃えて言う。
「「もう一本!!」」
「はいよ」
―――それから何杯か飲み進め、酩酊といった様子のしょうたがワントーン低い
テンションで話始める。
「俺ぁちっちゃな頃から悪ガキでよぉ、15でエロガキと呼ばれたが、それでなぁにが
悪いってんだぁ、、、!社会に揉まれ、世間に揉まれてびくびく生きるお利口さんよりゃ、
おっぱい揉みたいばかのがよっぽど良いじゃねぇかよ、、、!
イケメンがなんだ、、、スポーツマンがなんだってんだばかやろぉ、、、、、、
あ~~~~、、、おっぱい揉みてぇ、、、」
つらつらとダサすぎる心の叫びを漏らしながらテーブルに突っ伏すしょうたの
横で、たかしが何かをふと思い出す。
「そういやおっぱいといやぁ、ガキの頃流行らなかったか?」
「ん、あぁ、あれだろ?」
「「100キロで走ってる車の窓から手ぇだすとおっぱいの感触になる!!」」
その日何度目かのしょーもないはもりをみせ、盛り上がる阿呆二人。
「結局確かめずに終わったなぁ、、、」
「まぁ無理もねぇよ」
妄想に耽りながら、手でおっぱいをもみもみする二人。
続けてしょうたが何やらキメ顔で続ける。
「なぁ相棒、その噂、10年越しに確かめてぇとはおもわねぇか?」
「、、、何かあてがあるってか?」
「、、、あぁ、ちっとばかし危険だが、、、」
そういいながらビールを口にするしょうたにたかしが拳を差し出す。
「ほれ」
「!」
「ここで会ったのも何かの縁だ、今夜はとことん付き合うぜ相棒」
「、、、、、、あぁ、最高だぜ心の友」
そんな、最終回二死満塁、一打サヨナラのピンチのバッテリーの如く、
拳をコツンと合わせる二人の阿呆。
―――かくして冒頭へと戻る。
こうして二人は今、坂を下っているのだ。
森閑とした夜空には、二人の声が響く。
「見ろ相棒!その先が例の坂だ!!
そりゃあもう地蔵も驚く急な坂でよぉ、地獄坂なんて呼ばれてやがる!!全速力で
爆走すりゃあ時速100キロも夢じゃあないが、先に待つのは夢か地獄か、
それは俺にも分からねぇ!!
最後に聞くぜ!覚悟はいいか!?」
「んなもんとっくに決まってらぁ!!」
「よっしゃぁ!!」
そのセリフを口火に、しょうたはペダルを全力で回しながら、坂へと向かって
漕ぐ、漕ぐ、漕ぐ。
風圧で息が詰まるほどのスピード、もう後戻りはできない。
「そういや聞いてなかったが!!お前さんの彼女の名前はなんつーんだ!?」
「風月ッッ!!」
「!!」
その言葉に、しょうたは目を見開く。
たかしとは同じ大学、そしてかづきという女子には珍しい名前、しょうたには
思い当たる節があった。
「ちなみに苗字はァ!!」
「かとりッッ!!かとりかづきッッッ!!!!」
それを聞いた瞬間、しょうたの目からは大粒の涙があふれ出る。
かとりかづき、字面にすると“花鳥風月”、その他にいるはずもない森羅万象を
兼ね備えた学園のマドンナにふさわしい唯一無二の美しぎる名前。
自分が幾度となく叫び、脳裏に焼き付いてきたその名前、
―――そう、かとりかづきはしょうたが小中高大と追いかけてきた想い人そのものである
涙で視界が歪む。それでもしょうたは全力でペダルを漕いだ。行き場のない感情を
ぶつけるように。
そして後ろの相棒に、涙が気付かれぬように。
詰まる胸の痛みを抑えながら、顔を上げていよいよクライマックスを迎える。
「幸せになれよぉおちくしょぉおがぁあ!!」
二人は両手を大きく掲げる。
「「おっっぱいにッッッスカ―――――――イダーーーーーーーーーイブッッッ!!!!」」
その刹那、猛スピードで地獄坂を下ってきた自転車が思いっきりガードレールに
衝突し、両手を大きく掲げ空中でおっぱいを鷲掴む二人の阿呆が時速100キロで
真夜中の交差点へと投げ出された。
―――翌日
「―――えー続いてのニュースです。今日未明A街の交差点に男性二人が自転車で
突っ込みました。幸い命に別状はなく、事情を聞いたところ“おっぱいを揉みたかった”
などと供述していることから、酔いが原因だとして捜査をーーーーーー」
真昼間の病室に流れるそんなニュースを聞きながら、手と足に包帯を巻いた
二人はやさぐれた顔で見つめ合う。
「「、、、、、、、、、、、、ぷっ、、、」」
「「ぶはははははははははははははっっっっ」
しばしの沈黙の後に、二人は腹を抱えて大笑いする。
「待ってたのは地獄ってか!?」
「ばっかじゃねーのまじで!」
「そもそもチャリで100キロとか無理だっつーの!!」
「ほんとなっ!」
自分たちの行動に何故か笑えてきた二人は涙目になりながらそんなことを言い合って
いると、病室のドアががらりと開く。
「たかしくん!大丈夫!?」
そこに立っていたのは、噂のマドンナ、花鳥風月ことかとりかづきだった。
美脚に美尻、そしてボインとボンキュッボンを絵に描いたようなモデル顔負けの
スタイルにキューティクルな黒い髪、
ーーーそして顔はめっっちゃブス。
「あ、かづきちゃん、来てくれたんだ」
「当たり前でしょ!?彼女なんだから、、、!、、、、、、あれ?」
そう言って病室に入ってきたブス、、、ではなくマドンナは、しょうたを見て足を止める。
「しょうた!?」
「お、おっす」
「え?知り合い?」
「、、、ちょっとな、、、はは、俺はお邪魔かな?」
このカオスな空間に、しょうたは最大限の作り笑いでそういうと、松葉杖を手に取る。
「気使うなよ相棒、もうちょいいろって」
「いいっていいって」
―――今にも涙が零れそうだった
その涙を必死に堪えながら、しょうたは病室を後にする。
―――俺の恋は終わった。だが、あいつになら任せられる。
立ち止まるな、そのまま突き進め、ただひたすらに、涙が零れる前に、、、、、、
“ガッ”
「あ」
ベッドの角に躓いたしょうたは、そのまま前に倒れこむ。
“パフッ”
そして見事にGはあろうかというたわわなおっぱいにすか~いだ~いぶ。
「、、、て、てんめぇえええええ!!何してんだこのド阿呆が!!」
「ふ、不可抗力だ不可抗力!!」
「なに!?ふかふかだぁ!?まだ俺ですら触ってねぇのにこの野郎!」
「言ってねぇよんなこと!」
「なんだぁ!?逆ギレかぁ!?」
そんな低レベルな言い争いをしながら取っ組み合いのけんかをする阿呆二人を傍から見ていたかづきは、涙目になりながら言う。
「二人ともやめて!!私のために争わないで!!」
「うるせぇブス!!!!」
―――病室の外では、ただ滑稽と言わんばかりに阿呆鳥が鳴いていた。
最後まで読んで頂きありがとうございます!
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