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君が、僕を嫌う前に。  作者: もじゃもじゃ
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第二節

熱中症に気をつけるだけの夏休みが過ぎて、同じ所に足を運ぶ生活が始まった。

あの日からカエデさんからは一つの連絡も来ない。連絡先から消されているのだろう。一度遊ぼうと約束をしたのに、その一週間前から何かがぷっつりと切れたように連絡が途絶えた。考えたってしょうがないが、自分はカエデさんに何をしたのか、カエデさんは何を思って一切の連絡を絶ったのか夏中はずっとこんな事を考えて、暑い日を過ごしていた。

全校集会がおわり教室に入ろうとした時に、肩が誰かとぶつかり少し弾き飛ばされる。振り向くと背の高いショートカットの見覚えのある女性だった。

「よっ、げんきだった?そりゃ元気か、三日前にあったもんね」

今から夏休みが終わる三日前、彼女とは遊びに出かけた。遊園地に行きそれこそ酔ってしまうくらいに乗り物にのって騒いだ日があった。食をとる暇さえアトラクションの列に並んでいたので吐くものもなかったのだが。夜中まで遊び終電を逃してあまつさえ、バスもない。数十キロを歩いて帰り、家に着くと携帯を充電しながら眠りに落ちたのを、昨日の事のように覚えている。

「ほのか。今日映画行かない?」

「いいぜー」

今日は全校集会とLHRで終わり、ちょうど部活も休みなので午後は暇だった、気分を晴らすには丁度いい。疲れこそまだ溜まっているが、晴れない気持ちのままではいたくないし。ちょうど観たいと思っていた映画の公開が今日からある。

教室に入り席に着くと、間もなくして担任の先生も入ってくる。LHRが始まり先生が幾つか話をした後、生徒数人を個別に廊下の方に呼んでいた。ほのかも呼ばれていたので何をしていたのか訊いたら、将来の事についての話だったらしい。

LHRが終わってリュックを背負うと、ほのかと一緒に教室を出て駅で待ち合わせするように約束する。一人でバス停に向かい携帯を見つめる。僅かな間のやり取りを思い出す、その中にどうしても忘れられない言葉がよぎる。誕生日の話だ。

短い文章で続くやり取りの中で、今の自分が一番覚えてる会話だ。帰ってしばらく、寝付けないままの中で「誕生日はいつ?」とカエデさんから訊かれた。僕は五月の七日と答えた。カエデさんの誕生日は休みの期間と被っているので、始業式の日に何かプレゼントをしようと考えていた。

携帯のメールのやり取りを見返していたら最寄り駅に向かうバスが当直した。僕は運賃を払い一番奥の座席に座り込みイヤホンを耳に当てて音楽を流すと眠りに着いてしまった。

騒々しいブザー音がなると目が覚めて、気が付くと終点に着いていた、乗客が全員降りていたので自分も降ろしていたバックを背負いバスを出ると、駅の方に向かった。改札付近で立っていると携帯のバイブスがなり、開くとほのかからメールが来ていた。

『ごっめーんデパート一階のクレープ屋さんに来て?』

「了解」と返すと来た道を戻り、ジャンクフードのチェーン店を横切り、そこらに置かれてる観用殖物をかわしながらデパートの入口に向かう。

中に入りすぐ左に曲がる、お洒落なカフェの隣にあるクレープ店に辿り着く。

「あ、彼じゃない?」

「んー?あ、居たいた。おいおばかさん!こっちこっち」

声の主の方を見ると、見飽きた顔と、それともう一人知らない顔があった。小柄の低身長、肩にかかる程の髪の長さで赤いマニキュアをしていた。片手にはクレープを持っていて招き猫のようにおいでおいでと手を振っていた。

軽い人混みを縫う様に避けて二人の元へ着くと、軽い挨拶をした。

「彼女は宮野結愛(みやのゆあ)、男子サッカー部のマネージャーだよ。って言っても分かんないか」

「あれ、彼ってバレー部だっけ?確か梅雨の時に、体育館使えないか見に来た時に」

「あぁ、そういえば」

「なんだ知り合いだったの」

「て言っても全然喋ってないんだよね」

くるや否や人をネタに盛り上がる二人。クレープを食べ切るとほのかが「カラオケに行こう!」と言うのでついて行くことにした。エスカレーターで四階まで上がり、中華料理や焼肉屋等が並ぶ所を進むとカラオケ店があった。

「すいませーん、フリータイム空いてますか?」

「はい。今からですと、直ぐにご案内出来ますが?」

「学生で三人お願いします!」

「ごめんトイレいって来るから、後よろしく」

「あ、私も行ってくるね」

定員さんに学生書を見せると、宮野さんとトイレに向かう。店を出てすぐ右に曲がった所にあるトイレに向かった。それにしても、ほのかはもう少し店員さんと話す時の言葉を「あのー」

「…あ、うん?」

「ほのかと仲良いんだね」

「まぁ、一年の時からずっと一緒にいるね」

「ふーん」

トイレに着くと「ここで待ってるね」と言い残して先に姿を消した、自分もトイレに入り用を済ませて出ると、携帯をいじっている宮野さんがいた。

「行こっか」

「ねぇ君さ、プリクラとか撮ったことある?」

そう言うと、携帯をしまって合わせた掌の指先を顎につけた「あのさ、今から撮りに行かない?」

「…え、あぁ。うん」

「ほんと?じゃあいこ!」

手を引っ張られて、ゲームセンターの奥の方まで小走りで駆け抜けた。機械にコインを入れて中に入り写真を撮る。そのたった数分が、なぜか何時もより特別に楽しい気がした。写真を撮り終わり、ラクガキをしていると、ほのかからメールが来ているのに気づいた。

『おそーい!』『へやばん二六だからな!』

『悪い、すぐ行く』

そりゃあ、トイレにしては長いか。宮野さんにこの事を伝えると「少し急ごっか」と笑顔を振りまきながら呟いた。どうしてこんなに親しくしてくれるのかとも疑問に思ったが、仲良くなれるならそれはいいことなんじゃないかな。

「ねぇ、君ってさ。朝何時くらいに学校に着く?」

「あーえっとね。七時五十分くらいにはここに着くから…」

「じゃあ私と同じくらいだよ。良かったら朝一緒に行かない?」

急に、そんなお誘いがくるものだから、尻込みしてしてしまった。断る理由は確かにどこにもないし、正直嬉しかった。しかし何故か、何かに対して申し訳ない気持ちが湧いていた。

「ダメかな?」

「あ、うん。じゃなくて、良いよ、一緒に行こう」

「ほんと?やったー」

ラクガキを済ませると写真のプリントが始まった。撮った写真を携帯でも送る為、連絡先を交換した。その後はまた小走りでカラオケ店に向かった、店員さんからコップを貰い飲み物を注ぐと教えて貰った二六番の部屋に入る。そこにはもう歌い始めているほのかの姿があった。




前にプリクラ撮った時に、デジカメで撮った。みたいな風に見える様に落書きしたんです。写真の左下に日にちを手書きで描いたんです、11月に撮ったのに1月と描いてしまって。

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