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惑星<ボク>を護る魔神<モノ>たち  作者: 東京特許きょきゃきょく
1/1

魔神が墜ちた<ウマレタ>日

 

 《死にたく・・・ないな》


 腹部に突き刺さるような強烈な痛みで目を覚ます。

 ――― いや、訂正しよう。

 腹部に何かが突き刺さっている。傷口から飛び散る噴水のような温かい感触が肌に伝わる。そして、熱の篭った強烈な痛みで意識が覚醒した。一体、何が起こったのだろうか?

 いや・・・現在進行形で腹部から血が吹き出ているわけだ。何が起こったか考える前に手当てをしなければ不味いわけだ。まずは腹部に突き刺さっている何かを確かめなければ―――!?

 

 ???「(か、身体が動かない・・・これは一体どういうことだ?)」

 

 腹部に手を伸ばそうと力を込めるも――― 動かない!意識ははっきりとしている。薄暗い部屋の中ではあるが視覚もある。腹部から伝わる痛覚もしっかりと感じ取れる。なのに身体がピクリともしない。

 

 ???「う・・・あう・・・あうあ(声が・・・出ない!しゃべれない!?)」

 

 発声がうまく出来ない。顎と喉に力がまったく入らず、ちゃんと言葉を出しているつもりなのだが全てうめき声に変換される。動こうという意識と思い通りに動いてくれない身体。まさにアンバランス。そんな気持ち悪い感覚と戦っている合間に再び襲い掛かる、突き刺さるような腹部に強烈な痛み。

 

 ???「んほぉ!・・・んぁ・・・(誰だ・・・誰なんだ!?)」

 

 腹部に突き刺さるような強烈な痛み――― 増えた。薄暗い部屋の中、仰向けの体勢でよく見えないがこの感覚は間違いない。誰かが自分の腹部を鋭利なモノで突き刺している。それも一回だけではない。

 

 ???「んあ!・・・んあ!!(だ、誰なんだ!止めろ!痛い!痛い!止めてくれよ!)」

 

 意識も痛覚も視覚も聴覚もある中で引っ切り無しに飛び込んでくる情報。鋭利なものが自分の腹部に入っては出て行き、入っては出て行きを繰り返す。弾けるような血しぶきが視覚と嗅覚を刺激する。グッポ!ギュッポ!というリズミカルな音が部屋中こだまする。そう、もう疑いようの無いだろう。現在の状況は――― 身体の自由を奪われてからの刃物でのメッタ刺し。つまり、殺されようとしているのだ。止めなければ・・・だがしかし、そんな思いは空しく斬戟の雨は止まらなかった。

 

 ???「あん!ああ~・・・あ・・・(止めてくれ・・・止めてくれよ・・・あ、死んじまう)」

 

 そして、永遠に続くと思われる地獄のようなメッタ刺しも遂に終焉を迎える事になる。

 

 ???「(あ・・・痛くないや・・・・・・そうか・・・死んじゃうのか)」

 

 意識が朦朧とする。先ほどまであった止めろという思いが飛んでいく。

 痛覚が鈍くなってきた。先ほどまであった痛いという思いが飛んでいく。

 視覚が暗くなってきた。振り下ろされる刃物と人影が今はもうぼんやりとしか見えない。

 聴覚が小さくなってきた。不快極まりない、刃物の挿入音ももう耳には届いていないようだ。

 

 消え行く命・・・消え行く意識の中――― 死にたく・・・ないな。

 

 リリスは心の中で呟いた。

 

 

 《あれ・・・もしかして死んでいる?》

 

 腹部に突き刺さるような痛みで手に持っていたグラスを床に落とした。

 ――― いや、訂正しよう。

 胃の中から湧き上がるような痛みと熱。こみ上げてくる猛烈な嘔吐感が彼女を襲う。一体何が起こったのだろうという疑問を浮かべる暇も無く彼女は――― 嘔吐した。

 

 ???「――――――<自主規制>――――――!!――――――!?」


 喉の奥から際限なくゲロが溢れ出る。鼻の奥から際限なくゲロが溢れ出る。自分の意思で止めようと必死に口を塞いでも、強烈な水圧<ゲロ>がそれを許さない。口の隙間から・・・歯の隙間から・・・鼻の穴から・・・必死に押さえている手の指の間から絶え間なく溢れ出るものがそこにある。ゲロスプラッシュ再び。 


 ???「うぅ・・・これはいっ―――! おぇ―――<自主規制>―――!!」

 天使1「???様!」

 天使2「きゃあーーーー!」

 

 彼女の周りに控えていた天使たちから悲鳴が上がる。

 

 天使3「すぐに拭くものをお持ちします!」

 天使?「それよりもお医者様デス!お医者様をお呼びしてくだサイ!」

 

 食卓の上の料理にぶちまけられた嘔吐物。床の上に散らばるグラスの破片と嘔吐物。平和な食卓が一変して地獄絵図。お世話係の天使たちも絶賛大パニック中。

 

 ???「――っ! みんな、落ち着いてください。私は大丈夫ですよ」

 

 嘔吐感は治まらないものの、吐き気の波が引いた隙を見計らって騒ぎになった食卓を落ち着けようとなんとか声をかける。ゲロスプラッシュをかましてしまった事で羞恥心はあるが立場上これ以上の騒ぎは見過ごせない。

 

 ???「ごめんなさい。お見苦しいものを見せてしまったわ・・・本当にもう大丈夫だから」

 天使?「???様。ご無理をなさらないでくだサイ。お片づけはこちらでしておきマスから、お部屋にお戻りくだサイ。お医者様にはお部屋に向かうようにお願いしておきマス」

 天使3「そうですよ! 今日はお体の具合がよくないのです。今日はこのままお休みください」

 ???「・・・わかりました。その・・・今日のことは出来れば・・・」

 天使?「他言無用デスね。ここにいる全員に徹底させマスのでご安心くだサイ」

 

 

 自室にもどった彼女は医者の治療を受けた。詳しい原因は分からないが恐らく食中毒との事。後日、精密検査。今日は一日安静に。そんなこんなで現在は自室療養中である。

 はずかしい。とってもとってもはずかしい・・・いや、冗談ぬきで。人前で嘔吐してしまった。それも部下たちである天使の目の前で盛大にぶちまけてしまったのだ。いい年した大人が子供たちの前で・・・はずかしくて死んでしまいたい。心が羞恥心で焦げ付く。

 

 ???「体調が悪かったんだから仕方ないだろ・・・な~んて思っているそこのアナタ! 知り合いの前でゲロをぶちまけてから言いなさいな! やらかした事の無いものにはわからないわよ――― ああああああ(超羞恥)!」

 

 と、照れ隠しのつもりなのか謎の一人芝居をしながらベッドの上で一人はずかしくてはずかしくて震えている。本人は体調管理には気を使っていた(つもり)。まあ、やっちゃう時はやっちゃうものなのだ。それが人生というものだ。

 

 ???「はあ・・・・・・もう、寝よ」


 そう、嫌なことがあった時は寝るのが一番デスよ。

 そして、すぐに眠りについた。彼女はひどく疲れていた。嘔吐というのは意外と体力を使うし疲労が溜まるものだ。そんな、疲れた身体を癒すために睡眠は深く深く――― なっていくデスよ。どうか心地よい時を・・・素敵な夢を・・・安らかなお眠りを・・・後の事は私におまかせくだサイ。

 

 深く沈んでゆく意識の中で――― あれ・・・もしかして死んでいる?

 

 ラファは心の中で戸惑った。

 

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