束の間の2人
よろしくお願いします。
「やばい、遅刻するー!」
壮大に寝坊してしまった今日この頃。
東雲さんに言われたことが気になって眠れなかったとか言ってられないよね。
ドーンっ!
何かに盛大にぶつかるってこのシルエット......
「な、鍋島?」
「お前はやっぱり朝から騒がしいな」
「あっ、おはようじゃなくて!なんでこんな遅刻しそうなのに呑気に歩いてるのよ!」
「今日休むつもりだったけど無断欠席は許さないって姉貴がうるせえんだよ。だからちょっと外で時間潰そうと思ってな」
口調とは裏腹に彼の表情は心なしか暗い。
「ねえ、学校に行きたくない理由って」
「なんでもねえよ。ちょっと具合がな」
「東雲さんのことだよね?」
私は我慢出来ず、彼に尋ねる。
「東雲さんが裏切った幼馴染なんだよね?それに鍋島は東雲さんと付き合ってたんだよね?」
少しの間の後、彼はようやく口を開いた。
「......沙霧のやつに聞いたのか?」
私はこくんと頷く。
「どうせ人の口から言われるぐらいなら自分から言う方がマシか......」
鍋島はそう言った後、東雲さんとの今までの経緯を私に話してくれた。
……
「そっか、やっぱり人と関われなくなったのは東雲さんが絡んでたんだね......」
東雲さんが私に言った、
“彼のことを好きになる人がいるなんてね”
それだけが引っかかっていたが彼が私に嘘をつくとは思えないし私は鍋島を信じたい!
「ま、あのことを俺はもう気にしてない。そもそも
幼馴染なんて関係は元々続くようなものでもなんでもないしな」
そんな顔で言われても彼の言葉を文字通り受け取ることはできなかった。
「それにお前のプライベートに関わるつもりはないが、今のあいつは何を考えてるのかが分からない、関わらない方がいいと思う」
「鍋島のこと裏切った人と私は仲良くしたいとは思わないから!でも鍋島は東雲さんが近くにいて大丈夫なの?」
「転入してきた以上はしゃーねえよ。ま、この問題は俺がいずれ何とかしないといけない問題なんだ。心配すんな」
「でも!……」
「胡桃、お前も可愛いとは思うが沙霧もモデルをするだけあって美人だ。奴はすぐこの学校のトップカーストに上り詰める。余計なことはするな」
「それに、俺と違ってお前が学校来ないとみんな心配するぞ?今からじゃ相当な遅刻だが、早く行け」
「鍋島は?」
「俺も後で行く。だから先に学校に行け」
彼がこの後学校に来るとは思えないけど、私はその言葉に従うことにした。
何かはわかんないけど、初めて彼女と話した時に鍋島に対する何かを感じた。
2人が一緒に行って遅刻を報告するよりかは1人ずつの方がきっといい。
余計なお世話かもしれないけど、私はM I NEを開き、有栖さんに一言メッセージを送った。
『東雲沙霧さんが私たちの高校に来ました』
と。
メッセージを送った後、私は学校へと向かう。
鍋島に私のことを好きになってもらいたい気持ちは当然ある。
だけど、彼が人と関われなくなった原因である東雲さんが来たということは今私がすべきことは彼女から守ること。
惚れさせるって目的もあったけど、嘘告白をしたことへの贖罪を果たす時はきっと今!
私が鍋島を助けるからね!
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