一進一退
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胡桃以外の奴と会話が出来たというのは成長と捉えていいのだろうか?
彼女は神野と言っていたな。普通にノリは
悪くなさそうだが、どんな人物なのかはわからないな。
「ねえ、鍋島ここってこの向きであってる?」
「その向きで合ってる。ていうかそこに見本があんだからそれ見ろよ」
「いちいち人に口答えするんじゃないのー」
「口答えってなぁ....まあいい。さっさと終わらせよう」
なんだか最近胡桃との距離が近くなっているのは気のせいだろうか?
まあこいつといるのが1番落ち着くのは事実ではあるんだけどな。
「鍋島、お化けの役を引き受けてくれてありがとうな!」
目の前に俺にとっては近寄り難いイケメンが
現れる。
「海堂....俺も一応クラスの一員だ。少しくらいは役に立ちたいって思ってたから礼は別にいい....ぞ?」
海堂、こいつは人気者だ。こうして女子から離れて俺のところに来たというのにすぐさま女子が寄ってくる。
もちろんその中には胡桃と同じグループの最上早苗もいた。
「えー海堂くん。鍋島と何話してたのー?」
「なになにー?気になる~」
「お化け役のお礼を言ったら別に俺もクラスの一員だから礼はいらないって言われたよ」
「意外に鍋島って仲間意識高かったりー?」
「なんかもうちょい近寄り難いイメージあったんだけどー?」
「あ、いやまぁ、俺も高校祭はみんなでワイワイする方が楽しいかなって」
「そんなビビらなくてもいいじゃーん。髪も
なんかキメてきちゃって~!なら高校祭の時は頑張ってもらうしかないっしょ!」
「私たちも交代でお化け役するからよろしくねー」
「にしても鍋島も大変じゃないー?」
最上が突然俺に言葉を発する。
「なにがだ?」
「萌の男避けにこうして使われてさー。嫌になったりしないのー?」
「そうそう、鍋島はもっと大人しい子がタイプなんじゃないー?」
周りのギャルらもそれに乗っかる。
俺が胡桃の男避けってか、周りから見たらそう見えるのかもしれないな。
ただ俺はその言葉でこの最上という女は胡桃の
ことをあまりよく思ってないことも感じた。
「あー胡桃のことか。まああいつも色々大変なんだろ」
俺には胡桃の真意までは分からない。
それこそ、ここで俺が変にあいつの気持ちを
読んで言うのもおかしいだろう。
「もしかして萌のこと好きなのー?」
「ちょ、早苗!」
胡桃が強引に話を遮ろうと試みる。
だが最上はそれに怯むことなく続ける。
「好きだから利用されてても一緒に居れるんじゃない?」
この言い方、こいつは完全に胡桃と俺を煽っている。
はぁ、少し人と話してみようと思ったらこのザマか....
突っぱねるのは楽だがこの時期にそれをして俺の孤立はいいが、胡桃まで巻き込むのは意に沿わない。
「俺は好きでもないし胡桃が利用してるかも知らない。逆に聞くがお前はなんで雨宮のグループにいるんだ?別に彼女の人気を利用してるわけじゃないだろ?」
「も、もちろんそんなことはないよ!一緒にいて楽しいからだし!」
適当に言ったつもりが図星か。
やっぱ大したことないな。
「なら俺も一緒だ。損得でも好意でもなく一緒にいて楽だからいるだけだ」
「わ、私もそう!鍋島は気を使わなくてもいいし楽だから....」
「最上~ダメじゃん。2人のことからかったりしちゃー!」
「そうそう!準備の続きしよ~!」
どうやら話は終わったらしい。
人と関わることを決めた途端いきなりこんな
厄介なことになるなんてな......
「鍋島ごめんね、なんか私のことで」
「気にしてねえよ。謝るのは俺の方かもな」
「それにしても好きじゃないって即答かぁ」
「なんだよ、あの場で好きって言って欲しかったのか?」
「ふーん、そんなんだからモテないんだよーだ!早くこれ作っちゃうよ!」
なんであいつ怒ってんだ?
やはり人と関わるのは少しずつにしようと決めた俺であった。
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