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異世界で花婿修行  作者: 叶陽月
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女の子とそのあと

つぶっていた目を反射的に開いた。


眼が、合う。

幼いながら整った顔立ち、おっとりとした目じり。そのなかにの瞳には喜びが見て取れた。

だがこちらはそれどころではない。むしろどうやって逃げようか、とか考えていた。


なぜなら、僕はあの恐ろしい悪夢トラウマが起こってからというもの、女子、女性、おばあちゃんに至るまで女という存在と一度も話せなかったのである。

そんな僕が唐突に見ず知らずの女の子とどうやって話せというのか。そもそも対面するのさえ怖くて平静を保つこともできないというのに。無理ゲー。

そんな僕の葛藤を知らない女の子は、喜びに目を輝かせながら話しかけてきた。


「ねえ君、どっからきたの?おかあさんおとうさんはいるの?あの傷は何?なんで森に倒れてたの?」


止めてください、そんなに矢継ぎ早に質問されたら恐怖と頭の処理で死んでしまいます。

しかし女の子の質問攻撃は止まらなかった。


「君森の中に意識を失って倒れてたのよ?しかも傷だらけで。どうして気を失ったか覚えてたりする?あと名前を教えて欲しいのだけど」


暫く一方的に質問し続けた女の子だったが、僕が質問に答えないことで気を悪くしたらしい。ムスッとした顔になって質問の仕方を変えてきた。


「なんで黙ってるのか知らないけれど、君の怪我、直したの私とお父さんだから。せめて名前だけでも教えてくれないかしら?名前がわからないと話しかけづらいのよ。あ、私の名前はシェーネよ」


シェーネね覚えた。夢を叶えてくれた人を忘れるわけがない。

お父さんってもしかして、さっきのイケメンマッスルのことか?マジで医者だったのか。まあ、それは置いといて。

名前ならさっきそのお父さんに教えたから聞いてきたら?っていうのはひどい気がする。というか、それでは結局女の子と話さないとだめじゃないか。なら少しでも短いほうを選びたい。


「ラング」


簡潔すぎる挙句、震え声になってしまったが女の子には伝わったようで、「そう、ラングね、よろしく。暫く寝てるといいわ」とだけ言って部屋から出て行ってしまった。

あ、お礼言ってない。でも今はまともにしゃべれる気がしないし後でいいか。


「ふう、怖かった」


思わず口から出てしまって、慌ててドアのほうを見たが、ドアにさえぎられて聞こえなかったようで特に何も反応はなかった。これで一安心。



それにしても……なんかぶっきらぼうな人ばかりだな。病人に厳しいのかな?


まあそれはいいとして、今は自分の確認をしないと。とりあえずさっきの記憶を見ればいいかな?しかし、ひとつ懸念が。


……DVの部分も見なきゃいかんのか?マジ?辛くない?

見たら余計に女性が怖くなると思うのですが。


前世なら男友達に頼んで女性と話すという難を逃れればよかったけども、現状だと友達はおろか知り合いすら周りにいないから、困ったときに頼むこともできないじゃないか。どうするんだこれ。


……さっき流れ込んできた時にちらっと見たけど、記憶がほとんど家の中の風景だったんだよな……

つまり、このラング君は親から死にそうなほど虐待を受けていて、そんでもって家からも出してもらえなかったと。挙句の果てには、森の中にポイですか。ふーん


頭に来るな。

正直ラング君の気持ちとかは記憶を見てみないと正確にはわからないけれども、大体なら僕でもわかる。DV仲間ってのも嫌な話だけど。

まあ……今は置いておこう、俺が怒って過去が変わるわけでもあるまいし。この記憶はもう少し落ち着いてから見ることにして、今はこれからどうすればいいか考えよう。


そのあと、特にやることもなかった僕は体がだるかったので考えるのを放棄して寝た。

......体に慣れてなくて思考が難しいし、風邪の時みたいに体も頭も重いからしょうがないね。


その日は残りもだらだらと過ごし、お昼頃にシェーネの母親っぽい人が入ってきて目が覚め心底怖かったが、話しかけられると返事が返せず困ってしまうので寝たふりをしてやり過ごした。

母親らしき人は僕が寝ているのを確認した後、スープにパンを浸したものを置いて出て行ってくれた。朝から何も食べておらず、下手したら何年もまともに食事をしていなかった僕の体はそれを見たとたん思い出したように空腹を感じ、次の瞬間にはスープが染みたパンにかぶりついていた。


......おいしい

見た感じ、具は少なめ汁多めで甘いミルクスープっぽいがそれがちょうどと言っていいほどパンに合う。なぜなら前住んでいたところのような柔らかく口どけの良いパンではなく、違う地域にあるフランスィパンのような、固くバサバサとしていて噛みごたえが抜群だからである。

その固いパンが甘いミルクスープをたくさん含んでいて、一口噛むたびにジュワジュワとあふれるスープおいしい味の喜びたるや、空腹も相まってこの世で一番おいしいのではないかと錯覚しそうになる。いや、一番だろう。


とまあ、お昼ご飯で食事の喜びを改めて知った後、おなかが膨れて眠くなったので生理的欲求に身を任せて寝た。

人間だからねしょうがないね!


そして惰眠をむさぼること翌日まで、僕はシェーネがお椀の回収に来ていたことにも、シェーネの母親が体をふきに来たことにも気づかず眠り続けた。

そして翌日になって体がすっきりしていることに気付いた僕は、事の真相をグラースから聞き、恥かしさで死にたくなった。


......うう、20歳でまったく知らない成人女性に裸を見られるなんて

いやまてよ?今僕の体は5歳児くらいなんだから別に恥ずかしく無くね?でも心は20歳だし............まあいいか今回だけだろうし


それから数日の間、体が満足に動かせなかった僕はシェーネとシェーネの母親に体を拭かれ続けることになるのだが、それは今の僕には予想もできなかった。








書くのが遅い。次はもうちょっと早く書けますから、お兄さんお姉さんゆるちて。

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