乙女系男子の恋愛事情
2週間程度の春休みが終わり、生活リズムの完全に狂った俺はあくびをしながら校門を通った。知り合いに会うことはなく昇降口にたどり着き、大きな紙に並べられた名前の配列から少し苦労をしながら進藤七海の4文字を探し出した。
「2組……」
未だ眠気の完全に飛んでいない頭には周りの騒がしい声が不快に思われたので、同じクラスに誰がいるのかを確認するのを諦めて早足で教室に向かうことにした。
教室は三階の階段の一番近いところにあった。中へ入ると人はまだ数えられるほどだった、外に貼られていた名簿を縮小したものが黒板にあったので先程諦めたクラスの人達の名前を見たが、話したことのある友達は数人だった。帰宅部の俺は部活に加入している生徒よりも交流が少ないことが原因の1つだろうと考えている。
「よお、七海!2年も同じクラスか!」
サッカー部の木村翔だ。家が近所であり幼い頃からの仲だ。
「またお前と一緒かよ、最悪だー」
なんてわざというと翔は嬉しそうな顔をしながら
「そんなこと言っちゃってー、本当は嬉しいくせに」
なんて言ってくるから、面倒くさくなった俺は席に着こうと翔を無視して机を探した。名前の順で窓側後ろから2番目という最高の席であった。
しばらく自分の席でスマホをいじっていると、不意に後ろから声をかけられた。
「おはよ、あたしここの席なの、よろしくね」
後ろの席の瀬戸希だった。
俺はまさか声をかけられると思わなかったので、ひどく体を跳ねさせてしまった。すると瀬戸は
「あぁ、驚かせちゃってごめんね」
と手で口を軽く隠しながら笑っていた。その姿が朝日に照らされて、なんだか上手く言えないが、綺麗だと思った。
これが俺と瀬戸との出会いである。




