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短編集。

君想ひ 袖濡らせども 麗月の--

作者: 天音 神珀

 君は知らない。

 此処が1000度目のセカイであることを。







 初めて君と出逢った日を、僕は未だ鮮明に憶えている。


 季節の狂った世界、反転した色の中、雪の白と桜の薄紅を背に、紅色の着物を纏った君。



 その瞳からはらはらと落ちるのは透明な、どこまでも透明な雫たち。


 けれど君は笑う。


 優しく、美しく、残酷に笑う。


 そうして僕は、君を失った。







 君と話したい。

 君に触れたい。

 君が愛しい。




 君ノ「スベテ」ガ欲シイ。




 色褪せ遠のく世界を見つめ、僕は君を脳裏に焼き付けた。



 そうして僕は、君を探し求め、ソレを手に入れた。



 愛する君を、愛しい君を、僕の世界から逃ガサナイ楔。朽ちた鍵を。






 どうやら君が死ぬ運命なのは避けようのない未来らしい。




 何度か君を失って、泣きながら笑いながら消えていく君を失くして、ようやく僕はそれに気がつく。



「ごめんね」



 違う。


 僕が欲しいのはそんな言葉じゃない。


 僕が欲しいのは、




「永遠ニ一緒ニイルヨ」




 どうして逃げるの?


 僕が嫌いになった?


 そんなわけないよね君は僕のたった一人の大切な大切な味方だもんね?


 だったら逃がさない。


 君との未来が存在しないなら、未来なんかいらないよ。




 ずぅっと…………ここにいられればいい。それが優しいHAPPYEND??







 だからね?



 僕はみつけたんだ。



 今を留めておく方法。



 君が生き続ける方法。



 簡単だよ?


 君の過去と未来を壊して、その端と端を繋ぎ合わせるだけ。



 僕が君に素敵な「今」をあげる。





 君が朽ちると言うのなら。

 君を閉じ込めてしまえばいい。

 だから。





 檻を作ろう。


 鈍感な君が気がつかないくらい広い檻をーー






 君は一人しか存在しない世界で何度も何度も自分を殺し続ける。


 そうして僕は、君を何度も何度も再生し続ける。





 ああ、桜が色づいて来た。


 また君とのお別れの季節がきたね。


 でも大丈夫、僕がいるからね。

 僕がここで待ってるからね。



 君を失くして進み続ける世界も、素知らぬ顔する時間も、僕が君を放り込んだこの狂った(セカイ)も、決して君に優しくはない。





 だから君は泣くのかな?


 だから君は終わりに焦がれるのかな?



 でもいつかきっとわかってくれるはず。





 残酷な残酷な世界の中で、僕だけがたった一人、君の味方であること。







 ああ、また雪が真っ赤に染まってしまった。



 でもいいよ、僕は待ち続けてあげる。



 この世界に終わりはない。



 君が望むなら、僕は君が望むだけ、その真っ赤な遊戯(あそび)に付き合い続けてあげる。



 左様なら、愛しい人。


 初めまして、恋しい人。








君想ひ 袖濡らせども 麗月の

亡き月照らす 庭咲く牡丹

最後のはよくわからない詩だな……と思いつつ気分で載せました(笑

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― 新着の感想 ―
[一言] ご参加下さり、ありがとうございます。 ループし続けて、大切な人がなくなるのを見続けてしまったら……病んでしまうのかも知れませんね。 》 君想ひ 袖濡らせども 麗月の 亡き月照らす 庭咲く…
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