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第三夜 光る都

 

               8


 地上層の入り口から続く長い階段を上がった先から広がる光景に圧倒されたのは、アイルだけではなかった。記憶を失っているカノンにとっても同様で、地上層の街に初めて足を踏み入れたと言っても、あながち間違いではないだろう。

 そこは街と呼ぶにはあまりに広大だった。もはや大都市メトロポリスと呼ぶにふさわしく、豪華絢爛なオブジェが埋め尽くしていた。地下と同じく、地上もまた何層にもテラスのように分かれており、それらを幅広い歩道橋が蜘蛛の巣のごとく上から下へ、右から左へと繋いでいる。七色に光る摩天楼が暗闇の空を覆い隠し、眩しいネオンの波が縦横無尽に交差する。光を基調とする装飾が過剰に、目まぐるしく張り巡らされている。影を限りなく抑えた、極彩色の都である。無数にそびえるビルの谷間、そのはるか上空を、飛行船が煙の尾を吐きながら航行する。

 驚嘆すべきは何も建造物だけではない。地下ではあり得ないほどの、行き交う群衆の波がそうである。老若男女を問わず、服装は洗練されており、色のある肌を持った顔は地下層にはない、ある種の余裕を感じさせた。物量が必ずしも心の拠り所となり得るとは限らないにせよ、煌びやかなアクセサリーをつけ、堂々と闊歩する様は地下の世界にない、凶暴なまでの自信の高さが窺い知れる。

 カノン自身、以前にここで溶け込んで暮らしていたなど到底信じられなかった。

「カノン、あれを見て!」

 目を輝かせるアイルは高層ビルを指差した。神話の英雄を思わせる若い男の巨人がビルとビルの間をよじ登りながら移動していた。少し先に、何倍もある蜘蛛の怪物が壁面を闊歩している。

「すごい……」天を仰いだまま、アイルは立ち尽くした。

 他のビルには、ホログラムの大蜘蛛を相手に、甲冑に身を包んだ勇者が剣を片手に戦っている光景、深紅のローブに身を包む女魔道士が、手に持った杖から服と同じ色をした烈火を繰り出し、烈火に燃える不死鳥の姿に変わり、他にも、大掛かりな高速エンジンを尻に付けた飛行船が壁面に沿って、らせん状に上昇してく、苛烈なレースがビル群を跨って映し出される。抱擁を交わすカップルが壁面を歩きながら華やかなウエディング姿から、小さな子供を連れた親子を経て、老夫婦になっていくホームドラマの絵巻が繰り広げられる映像もあった。

 カノン達は知らないままであるが、ビルよりはるか高い位置、【ドーム】の天井付近に設置された球体、その表面を埋め尽くす無数のレンズが、遠く離れたビルの壁面にホログラムをピンポイントで投影していた。プラネタリウムと同じ原理だが、新しい文明のそれは闇を頼らない。むしろ忌避する。テクノロジーをもって常闇を払いのけ、謳歌の光を満たす事こそが新世界の密室、【ドーム】における科学力の証左とされた。

 二人は長い階段を抜けると、見晴らしの良いテラスに出た。四方に洒落た出店が軒を連ね、奥にはエスカレーターがいくつか伸びており、さらに上へと続いている。テラスの手すりからは、何層も折り重なる小さな区画の光の束を望めた。 エレベーターのそばに設置された電光表示板には、それぞれ行先が表示されていた。

「どれに乗ればいいんだろう?」

 カノンは表示板と睨めっこするが、どれも知らない地名ばかりだった。もちろん土地勘などない。

「ちょっと待ってて」

 アイルは人だかりに押されながら辺りを探すが、地下と地上では勝手が違い過ぎるせいか、右往左往するばかりだった。

 カノンは肩をすくめると、仕方なく近くを通る人に尋ねようと、ある店先に立ち寄った。エプロン姿の若い店員がカウンターの向こうで何かを焼いている。香ばしい匂いが煙と共に漂ってくる。

「あの、すみませんが、マイントワース・エンタープライズってビルの行き方を知りませんか?」

 記憶の断片にあった社名と軽快なPRを思い出しながら、カノンは言った。店員の反応は弱かった。

「うーん。悪いが知らないな。オレはここに越してきたばかりでよ」

 それより、肉串はいらないかと、口をニンマリと歪めながら言ってくる青年に、背中を震わせた。「もう行こう」と、少女の手をアイルが引っ張った。

 頭の片隅で、記憶とは別に何かが引っ掛かったが、気のせいだろう。

「方角が分かったよ」

「じゃあ、そろそろ身代金の額を決めたら?」

 彼女はボソリと冗談交じりで言うが、アイルは真剣に怯えた顔つきで否定した。少年の握る手に力が自然と入った。

 二人は、南を示すSの電光板に沿って平行エスカレーターで進んだ。地上層の高低差が異様に激しく、まるでピラミッドのように、上に行くほど道が減って、逆に高層ビルが増えていく。ふと見上げると、同じ物に乗る人達がいるのだが、皆逆さになっている。彼らの脳天がこちらに向いている。それに乗ると、重力が逆さになるのである。周りにはそんなエスカレーターが幾重にも並んでいるので、カノンは変な錯覚に陥った。

 ビルごとに映る、立体映画。重力を操るエスカレーター、重層構造の街、そして天井を占める人工の星空。地上という縛りから解放された、まさに天界そのものである。人口の地下層の四分の一でありながら、約三十倍の電力を駆使する地上層が辿り着いた文明の尖頭を、カノンとアイルは目の当たりにしていった。

「ホントに、すごいや」

「騒がしいだけだよ」とカノンは冷めた意見で排した。五分もしないうちに忙しない気持ちで一杯になる。 

 エスカレーターで数十分上り下りの移動の末、二人が終着の階層に降りた直後、ホログラムのショーが一様に消えた。転じて、物々しい音楽が流れ、大袈裟な太文字のテロップが現れた。

『ニュース速報! マイントワース・エンタープライズ令嬢誘拐事件』

 どの建物も右に倣えのごとく同じ内容の報道番組が流れ、背広の男が解説を始めた。

(昨日、その消息が様として知れなかったマイントワース・エンタープライズ社の御令嬢、カノン・マイントワースさんが先ほど、地下層にてその姿を目撃されました)

 そして、カノンの写真が映る。結構、幼い頃のものだ。

(更に驚くなかれ、なんと彼女は地下層に住む未成年の犯罪者によって、誘拐された可能性が浮上したのです)

 通行人はいつの間にか立ち止まり、どよめきと戸惑いが湧い上がらせる。成り行きながら覚悟をしているであろうアイルも顔を伏せ、肩身の狭い居心地の悪さを醸し出している。

(事件の詳細は、今宵のゲスト――【ドーム】の市民の中では知らぬ者などいないでしょう、名探偵ミコ・クリステリア……その彼女の優秀な助手ノエル・フォード君が説明いたします)

 キャスターを押しのけるように、あの少年探偵が颯爽と現れた。振り乱していた髪は整えられ、濡れた服は着替えたようだ。

 ノエルは大袈裟な咳払いする。(ボクはミコ探偵の次期後継者です。助手ではありませんから、悪しからず。その証として、必ずや令嬢を救い出し、卑劣な賊を捕らえてみせます)

 画面の端から喝采が起こる。液晶に映る童顔は得意満面に歪んだ。

(おお、何と心強いお言葉でしょう!)キャスターは芝居じみた動作で感嘆する。(幼いながら大人顔負けの所作。有望な弟子を持って、ミコ女史もさぞ安心しているでしょう)直後、仏頂面を視聴者に向けた。(さて、皆さん。これがノエル名探偵の提供による、誘拐犯……名字なしのアイルです)

 映し出された似顔絵を見て、当のアイルは声を上げそうになり、カノンが慌てて口を塞いだ。その彼女は吹き出しそうになるのを何とか堪えた。

 大袈裟な顔の傷といい、つり上がった目つきといい、ニヤリと歪めた唇といい、すべてが誇張され、別人のチンピラといってもいい。おそらく、アイルの顔写真を加工合成したのだろう。

(この顔ですよ、皆さん。よーく記憶に焼き付けて下さい。少しでも心覚えのある方はご一報お願いします。最後に、御息女を誘拐された、我が社マイントワース・エンタープライズ社長である、グレゴリー・マイントワース氏から涙の会見を紹介いたします。通行人の皆さん、是非ハンカチのご用意を)

 新しく映し出されたのは、満月頭の小太りの男。高級そうな背広に身を包むその人物に、カノンは写真や記憶の断片を通じて見覚えがあった。

 ――この人が、わたしのパパ……?

(お願いだ。金ならいくらでもやる。だから、娘だけは返してくれ! カノンは病気なんだ。外の空気を吸うと瞬く間に悪化してしまう不治の病なんだ)

 腫れた目を向け、ミスター・マイントワースは悲痛な声で訴えた。彼の前に割り込むようにして、ノエル探偵がカメラの前に立つ。その後ろで司会者が他のゲストと一緒にわざとらしい号泣を上げている。

(誘拐犯アイル、両手を差し出して待っていろ)

 マイントワース氏の嗚咽が響く中、キャスターとゲストの凶悪な笑みで速報は終わった。

 さすがのカノンも、暗い顔をした少年に同情した。

「……大丈夫だよ。私が説得するから」

「うん」

 しかし、本人は芋虫をすりつぶしたような苦い顔を浮かべている。

 ふと、カノンは背中に震えが走った。誰かの執拗な視線を感じたのだ。まさか警察だろうかと思い、振り向いたが姿はない。気配だけが依然として残っていた。

 視線を送る主は、二人の真下にいた。

 飴玉を咥えた幼児だった。唖然とこちらをまじまじと見つめる顔と目が合った。幼稚園の制服を着ているが、裾をはみ出し、髪もボサボサに乱れ、頭には竹とんぼの生えた帽子を被っている。前歯が一本抜けた口を醜く歪める、意地の悪そうな顔は、まさに悪童のそれだった。

 悪童が液晶に映る二人の顔と、目の前に立つアイルとカノンを交互に観やる。やがて、ニンマリと笑顔をつくり、手を筒にして口に当てる。

 大声を出すつもりだ。これはまずい。非常にまず過ぎる。アイルは彼を取り押さえようとする前に、カノンはピエロ少年を制した。

 少女は首を横に振り、咄嗟に財布から硬貨を一枚取り出すと、悪童に渡した。目をパチクリさせる幼児に、カノンは無言で口元に人差し指を立てる。彼女の意図に気づいたアイルも、両手を合わせて願い事の仕草をする。

 言わずもがな、口止め料である。

 為せば、成るものだ。悪童は口をほころばせ、大きく頷いた。カノンとアイルはまるで双子のように、同じタイミングで胸をなで下ろした。

 金の力は強い半面で、それによって生まれた絆はもろいものである。液晶に再び光が点り、ノエルの姿がまたしても大写しに現れてこう言った。

(そうそう、こいつを捕まえた人には、賞金をあげまーす。情報提供だけでも、一応懸賞金が出るから、皆さんよろしくね!)

 ウィンクしながらノエルは消えて、代わりにマイントワース・エンタープライズの電話番号と、ゼロの桁が異様に多い賞金額が表示される。止めのダメ押しと言わんばかりに、賞金額のちょうど真上に、アイルの凶悪面が画面一杯に映し出された。文字通り、賞金首と言えばふさわしいだろう。

 さっき、カノンが渡したワンコインを百倍にしても足りない、法外な懸賞金。それがたった今、アイルに懸けられたのである。

 悪童は液晶に映った額を指で数えた。唇のイヤらしい動きは、『一、十、百……』と自然に聞こえてきそうだ。そして、手の平に乗った一枚のコインを何度か見比べると、やがて、彼らに向けて厚ぼったい唇をニンマリと歪ませた。

 誘拐犯に勝るとも劣らない悪童が大きく息を吸い込んだ時――アイルは俊敏な動きで、悪童からコインを奪い取り、カノンの手を掴んで駆け出した。

 背後に轟く喚き声を無視し、二人は雑踏の波に紛れた。


               9


「何してるんだろう、僕……」

「君と一緒になって逃げる私もどうかしてる」

 繁華街を抜けた後、二人は公園と思しき場所に出た。片隅に並ぶベンチに座って、重力を無視して下から上へと循環する噴水のアーチを、アイルは飽きずに眺めている。カノンは近くに置かれた自販機から買ってきたサンドイッチを持って戻ってくる頃には、仕組みが気になるのか水に直接手を伸ばして確かめていた。

 呑気なものだと、カノンは呆れた。

「一応、案内してもらうためのお礼だから」と、アイルに渡すと目を輝かした。今まで冬眠していた熊のように平らげた。揚げたパンの中には、冷たいフルーツが挟まれていて、アイルはおいしいばかり言うのがおかしかった。

「指名手配されてるのに、余裕なんだね」

「だって、冤罪なんだもん」

 確かにそうなのだけど……。言葉に窮した彼女は、ある疑問をぶつけてみた。

「星使いってさ、星座と仲が良いの?」

 カノンは、先ほどの双子座の兄妹を思い出していた。他にも呼び出したりできるのかもしれない。

 周りをはばからない道化姿の少年は、「うーん……」と考えを唸りながら、「星座さん達は人間と同じなんだ。相性が合って、星座同士もそうだし、僕との間にも合う合わないがあるみたい。オオワシ座が気さくでも、一角獣座にはそっぽを向けられる」

「一角獣座?」

 脳裏で反芻していた単語が耳に入り、カノンは思わずつぶやいた。

「星座にも性格があるんだ。鷲も一角獣もプライドが高いのだけど、鷲の方は優しい感じで僕と相性があったの。一角獣の方は怖い。人に例えると、一人だけでいていつもムスーとした怖い顔をしているみたい」

「じゃあ、そんな人が星使いなら、一角獣と相性が合うのかな?」

「分かんない。僕も、この力がどういうものなのかあまりよく知らないんだ。でも、悪い力じゃない気がする」

「使う人次第なのね、きっと」

「ねえ、カノンは、もし――」

 言葉を続けようとした少年の顔にめがけ、強烈な水鉄砲がかかった。突然の出来事にアイルは為す術なくベンチから転げ落ちる。噴水の方から飛んできたみたいだった。

 カノンが向くと、噴水の上に薄い布をまとった女性が腰掛けていた。水色の髪をまとめ、雪のように白い顔は彫刻のように整っているが、吊り上り気味の眉はやや不機嫌な感じだ。か細い手には、大きな瓶を持っている。

「彼女は水瓶座アクエリアスだよ」

 アイルはずぶ濡れの顔で言った。幻影の女神は、カノンを指差しながら何かを怒っている。何とかなくだが、一体この子とどういう関係なのよ? と言っている気がした。

「違うよ。君と同じただの友達だよ」

 アイルの失言に重ねて機嫌を損ねたのか、水瓶座の乙女は瓶を持ち上げると、アイルの頭にスッポリと被せた。瓶は高速回転し、少年の体は為す術もなくもがく。やがて、女神が瓶を持ち上げた。中から現れた少年の頭は散々たるものだった。ボサボサだった髪は余計に爆発し、鼻水は垂らして、両目がグルグル回っている。千鳥足を絡ませ、アイルは床に倒れ込んだ。

 水瓶座の女神はアッカンベーをすると、空へと舞い戻っていった。静まり返った中で、アイル少年は盛大なくしゃみを放った。

「これ以上文句を言ったら、大雨が降るから我慢するよ」

 摩天楼が並ぶ繁華街とは違い、周りが開かれたここでは、【ドーム】の天井――何層ものドーム状ガラスの向こうに広がる満点の星空を一望できる。海に散りばめた宝石のように、大小含めて強弱の光を放ち、四季の夜空を彩る星座達が一堂に会し、中心を皮肉にも人工の月(時間によっては太陽にもなる)が統べる。

 水瓶座と入れ替わるようにして、無数の星が彼らの元に降り注いだ。小さな光の点と、それらを結ぶ銀の糸。流星群は次々と形ある物体へと姿を変えていく。人の形、動物、鳥、魚、楽器、文房具と枚挙に暇がない。

 星座達はアイルの周りを踊った。満面の笑顔で、アイルは「やあ、皆」と挨拶すると、サーカスのショーの時みたく、ギクシャクなダンスを始めた。笑って見物していたカノンも少年の元へと向かった。千差万別の星座に囲まれる中、二人が手を繋いだ。これ以上とないほどの心地よい感覚が少女を包んだ。本来あるべき状態と言えば大袈裟だが、殻から出て大空を駆け巡る、そんな解放感に酔いしれた。

 今の自分に相応しい言葉があるとすれば、それは自由。屈託なく微笑みかける少年と顔を向い合せながら、カノンはそう確信した。

 少女の想いと通ずるように、少年は夜空に何かしらの願いを込めた。


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 彼らは、古くは【ドーム】の外からやって来た。もちろん、人の目を盗み、わずかな隙間から侵入してきた。人間ならば、当然と折れるはずもない狭い場所でも、彼らなら容易いに通る事ができた。

 街の中にたたずむ鬱蒼と茂る人工の森――人間が気慰みのためだけに造った偽りの自然公園は、ハリボテの月が出ている時は誰も通らない。元々、【ドーム】の外にいた彼らにとって、自然に溶け込むのは造作もない。彼らは本来の姿をさらし、人間とは違う独自の言語で小さく囁き合った。

『やっと見つけた、カノンというガキだ』

 リーダー格の一言で、周りがざわめいた。

『千載一遇のチャンスだ。逃すなよ』

 一人の声に呼応して、複数の異形が低いうなりを上げる。

 人間は、彼らをヒトモドキと呼ぶ。そして、おとぎ話の怪物のように忌み嫌い、茶化している。本人達にすれば、耐えがたい屈辱であった。

『もうすぐ、ドブネズミみてえな生活からおさらばだ』

 憎いはずの人間となるのが、彼らの悲願であった。憎いからこそ、人間に取って代わりたいのだろうか。いずれにせよ、彼らは今、少女の存在を見つけた。カノンという名の金持ち娘。その代わりになった暁には、損のない人生を送る人間になれる事を意味するのを、彼らは知っていた。

 獲物が一人になった機会はなかなか訪れないが、一緒にいるのが同じ子供ならば共に喰らえばいい、と彼は考えていた。地下層で見つけた時から、後をつけた甲斐をふいにするわけにはいかない。だが、場所を選ぶ必要がある。ここよりも、もっと暗く、大人の人間も近づかないような場所――例えば、裏路地に獲物達を誘い込めば……。

 彼らの名は、ヒトモドキ。文字通り、人とは似て非なる姿形をし、生きた人を喰う怪物である。そして彼らは今、遠く離れた公園――人間が気休めのために来る場所としか知らない――にいる少年少女を視界に捉えていた。

 終わりはいつも駆け足でやって来る。



                   つづく

 次回の第四夜「凍える記憶」は15日(土)の同時刻に投稿します。

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