午後の曳航 三島由紀夫
さて来ました、三島由紀夫パート2!
もちろん第一弾は『潮騒』でしたね。個人的には今回のほうが文学していて、読み応えがあったのですが、やっぱりきらりと光る文章が目につくんですよね。
最近の作家さんの文章が嫌いというわけじゃないんですが、やっぱりどこか違うんですよ。
風情があるといったらいいんでしょうかね。
文学~! って感じのが読みたくなるときがあります。そういう中毒性があると思います。
あらすじの紹介は簡単にいうと、主人公の母である未亡人に、船乗りのお父さんができる。
という感じですね。
そこに至るまでの子供の心境の変化なんかに注目です。
船乗りって仕事はたいへんだと思いますね。
いまでこそ事情は違うかもしれませんが港から港へ、家族をおいて旅に出なきゃならない。だからこそ魅力的でもあるのでしょうが、やはり辛いものでしょう。
私は舟に弱いのでとうていなれそうもありません。
船乗りの語る外国の物語ほど興味をひかれるものもないでしょう。そういう雰囲気をかもしながらも、きっちりと少年の心情の変化を描きだす。
大人になりかけの少年がどんなことを考えるのか。
私達の少年、少女時代とはまったく違ったことを考えているはずです。そこを楽しむのが正攻法かな、と私はひそかに思いました。
――――――――――――――――――ここからネタばれあり――――――――――――――――――
とはいえ純文学にネタばれもくそもないようなものですが。
最後はお父さんを殺しちゃうんですよね。
それも友達にそそのかされて、計画的に。
彼らの語る哲学的な話は、正直私には良くわかりませんでした。だがまあ、舟の男が家族を持ち、陸に上がってしまった以上、それはもう船乗りではなくなってしまったのでしょう。
船乗りにあこがれていたがゆえに、母を奪ったただの凡人が許せなかったのかなあと思います。
義理の父が子供に愛想を振る舞うのは当然でしょうが、なんとも皮肉な結末です。
この後にどんなバッドエンドが待ち受けているのか、想像するだけでも悲しくなります。少なくとも殺人についてはすぐに露呈するでしょう。
が、主人公たちは無罪。なぜなら14歳に満たないから。
家族の崩壊は免れないでしょう。そうなったとき、彼らは自分の失ったものの大切さに気付くのでしょうか。少なからず憎んでいた家族について。
港に行ったら、舟をぼんやりと眺め上げて、そんなことを夢想するかもしれませんね。