新世界より 貴志佑介
さて、昨日読み終わったこの本(上中下巻とありましたが)を入れてようやく5作品め。
このペースでいくと1年に100冊はおろか、50冊も危うい感じです。
言い訳はたくさんあるのですが、一番の原因は私が速読派からじっくり読む派へとコンバートしてしまったからでしょう。
強がりじゃなく、もっとやる気出して読めば倍のスピードでいけます。
テストならそれでいいとして、せっかく自分のための娯楽の読書なんだから、隅から隅まで舐めまわすように味わいたいというのが本音でして、スピードより質重視でやろうと思ってます。
それにしても、遅いですが……ああ……。
タイトル、あらすじ、作者、私がどれをもっとも重んじるかというと、あらすじです。
特に世界観が面白そうなやつは大好きです。
必然的にSFチックなものは雰囲気買いといいますか、惹かれやすい傾向にあるみたいです。
ゲームの攻略本を楽しむような感じですかね(喩えがわかりにくいですが)。
さて、新世界より。
なにが来るのでしょうか。それは読んでのお楽しみと行きましょう。
では恒例のAmazonよりあらすじ引用。
ここは汚れなき理想郷のはずだった。
1000年後の日本。伝説。消える子供たち。
著者頂点をきわめる、3年半ぶり書き下ろし長編小説!
子供たちは、大人になるために「呪力」を手に入れなければならない。一見のどかに見える学校で、子供たちは徹底的に管理されていた。
いつわりの共同体が隠しているものとは――。何も知らず育った子供たちに、悪夢が襲いかかる!
とのことです。
1000年後、理想郷、消える子供! 呪力!?
……いやー、そそられますね。
しかも私の大好きな和風チックな世界観。千年後の生き物たちの奇妙な生態とか、呪力(超能力)を持ったがゆえの定めとか、すごく興味深かったです。
その圧倒的な世界のなかで繰り広げられる、世界の荒廃に関わる事件。
おまけに原稿用紙2000枚の超ボリューム!
私は短編も好きですが、長編も大好きですので(要はなんでもいい)、これはもうレジに直行しました。
ちなみにこの新世界より、モナミやジェノサイドといっしょに買ったのですが、消化するのに10日近くかかりました……。
一気読みするもよし、じっくり時間をかけるもよし、おススメの一冊ですね。
バトルシーンなんかは想像力全開でカッコいいですし、作品中で明かされる日本のこれから1000年の歴史なんかも、読んでいるだけで楽しいです。
それに最後までどんでん返しが用意されているという素晴らしさ。
いやー、こんな話を書いてみたいものです。
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まじかよバケネズミって人間だったの!?
まずはそこから。
作中で我々人間は異類であるバケネズミを大量に虐殺しています。
それが最後に人間のなれの果てであったと明かされたとき、そこにどんなメッセージがあったのでしょうかね。
現代でも人を人とみなしていない無残な戦争が行われ、いまもどこかで人が死んでいます。
そして、それをなんとも思わない人がたくさんいます。
まるでネズミを殺すことのように、あたり前で罪悪感もなにもないことのように。
呪力は核兵器のさらに上をいく、絶対的な力です。
それを個人単位で有しているということは、いつだって世界崩壊のスイッチが押されてもおかしくない。
そんな未来が待っているかも知れませんね。
人間がいちばん怖いのは人間。
今よりもっとその風潮が強力になるかもしれないです。
で、早々に瞬が殺されてしまう。
彼はのちのち何度も出てきては助言をしてくれるわけですが、上巻で死んでしまうんですよね。
あんだけカッコよかったのに、自分を抑えきれなくなって、処刑されちゃうんです。
悲しいですね。
将来有望な子どもなのに、ほんのちょっと心が乱れただけで、真実を知ってしまっただけで、大人に処分されてしまうんです。
そして自分が他人を傷つけてしまうことを、瞬はよく理解している。なにしろ賢い子ですから、どうすべきかもちゃんとわかっている。
この作品では、すべての死に悲しみが詰まっていました。
瞬や街の人々、バケネズミの一匹に至るまで、想いを馳せればきりがありません。
戦闘の派手さの裏側にそういった犠牲があることをしみじみと感じさせられます。
人間はどれだけ残酷になれるのか。
その裏側にはいつだって恐怖があるんだと思います。
強くなりすぎる力を押さえつけるために恐怖がある。力が大きくなれば、それだけ大きな恐怖で抑制しなければならない。
考えればきりがありませんが、私はそういうことなんだと思います。
他人を信じていたら、殺される。そんな世のなかにはしたくないですね。
とまあ、ここまで長々と書いてしまいました。
久々に読み終えたあと寂しくなるような作品でしたので、こんなに熱く語ってしまったのでしょう。いつか読みなおしてみたいです。それでは、次の作品でまた会いましょう!