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川のある下町の話     川端康成

 久々の更新となってしまいました(約一カ月ぶりかな)

 この時期は花粉症だったり進級だったり卒業だったり就職だったり、いろいろ忙しいんですよね。

 という言い訳をしつつ、今回の本を紹介したいと思います。

 文豪、川端康成の『川のある下町の話』です。

 彼の作品で有名なものはもちろん「トンネルを抜けると……」の一節で知られている『雪国』だと思うのですが、こちらもなかなか面白い小説でした。

 個人的には同作者の短編である『片腕』なんかも好きなんですが、こちらは無料で公開されているのでぜひとも読んでほしいですね。女の片腕を持ちかえるという妖しくも奇怪なストーリーと描写が素晴らしいです。



 さてさて、今作のストーリーですが、ぱっと読んだ感じでは恋愛ゲームか! というような印象を受けました。

 主人公である栗田義三はイケメンで医者の卵。完ぺきなスペックですね。

 その義三がたまたま助けた美少女ふさ子、同級生のインターンである民子、いとこの桃子の誰とくっつくのか、というあらすじです。

 本当はもっと文学的で深いストーリーがあるのかもしれませんが、私の浅い読解力ではこれが限界でした。

 昔の作品であるはずながら、読んでいて思わず唸りたくなるほどのじれったさを出している主人公とか、魅力たっぷりのヒロイン達とか(こう書くと安っぽくなりますが)、現代にも十分に通じる要素を持っていて、その先見性に驚かされます。

 川端康成の作品といっても文学的過ぎて読みにくいとか、ストーリーが難解すぎてわからないとか、そういう問題は一切ありませんでした。

 普通の恋愛小説として、有名作家の作品を楽しめる感じです。

 コアなファンにはちょっと物足りないかもしれませんが、最初にとっついてみるのにはちょうどいいかもです。







――――――――――――――――ここからネタばれあり――――――――――――――――








 メインヒロインはふさ子で間違いないです。

 ですが個人的には民子とくっついてほしかった。

 民子にはいわゆるツンデレっぽいところがあるんですね。病気の看病して「こ、これは仕方なくやったことなんだからねっ」みたいなニュアンスです。

 別に私がツンデレ好きというわけではなく、もっともいじらしく描かれていたのが民子だったと感じたんです。

 もちろんふさ子とくっつきそうなところでお金を盗まれて全部が破綻してしまったり、桃子の積極的なアプローチに関わらず毅然としちゃっている義三とかも読んでてもどかしくなるんですけど。

 これをプロットにしてドラマ化、ゲーム化しても何ら問題ありませんね。



 そして頼りない読解力で文学的に読み解くなら、貧富の差もしくは身分の差というものに着目しないわけにはいきませんね。

 貧乏人であるふさ子、あまりお金を持っていない義三、普通くらいの民子、裕福な家庭の桃子、こういった登場人物たちが複雑に関係している以上、それぞれになにかのメタファーがあるのでしょう。

 義三がふさ子に恋をする。

 目のきれいな美少女という風に描かれている彼女は、お金持ちにはない魅力を持っているのかもしれない。自分よりも弱い存在だからこそ守ってあげたくなる、それが男心というやつです。

 それぞれに魅力的であるヒロイン達ですが、そのなかでなぜふさ子を選んだのか。

 終戦まもない下町という舞台と、変わりつつある人の心と、作中に描かれている美しい性格の人々と、それらを結ぶと、ひとつのメッセージが浮かんでくるように思います。



 ありきたりかもしれませんが、物質的な幸せがすべてではない。

 もちろんお金がないことによる不幸はごまんとあります。それも描かれています。けれども恋にそんなものは関係ない、幸せや人の良さには関係ないのだと、私は読みとりました。

 どんな身分であろうと人はそれぞれ個性的に、そして美しく生きて行ける。

 読み終って、ふと、そうなんじゃないかと感じました。




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