風の子と、運命の鎖
何者かが入ってくる――
厄災と呼ばれた赤いドラゴンはゆっくりとその目を開け、そしてそれを細める。眠ってからどのくらいたったのか、この森に入ってくる人間は久しぶりだ。今度の人間は、どんな欲を持って入ってくるのか。
「たいていの欲は見てしまったからな」
――楽しませてくれるといいんだが。
森の中を楽し気に、踊るように歩く風のような末っ子。
「荒れ地だったって聞いたけど、ほんとかな」
緑の匂い、生い茂る木々を見ると、とても荒れ地だったとは思えない。しばらく歩くと、少し開けた草原のような場所に出た。
そこにぽつんとたたずむ
――ドラゴン
「わぁっ!本当にいた!」
叫ぶように言い放ち、走り寄ってその正面に立つ。
「本物かな?生きてるのかな?」
容赦なく好奇心を叩きつける。
その目はその好奇心の分だけ輝いて見開かれていた。
後ろに回り、横に回り、存分にドラゴンを堪能する。
思ったより翼は大きかった。
「飛べるのかな」
答えてくれるとは思っていないであろう、問いかけ。
――ああ、飛べるとも。お前を乗せてもだ。だが我が答えたらこやつは腰を抜かすのではないか?
困惑と混乱しかないドラゴンはそんなことを思う。
「なんだろ、これ。」
ドラゴンの首から延びる、銀に虹を帯びた鎖。
鎖の噂はすでに廃れてしまった。彼は知らないのだ。
――やめておけ。
ドラゴンが思ったところで、彼の好奇心が止まるはずもない。
つい、と鎖を手に取る。
次の瞬間、鎖はシュルシュルと音を立て、彼の右手に巻き付いた。




