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ドラゴとフウライ ― 旅の先にあるもの ―  作者: ナナマル
神殿編
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神殿への道

村の入り口とは反対側、緑のトンネルのような――神殿の参道入口に立っていた。

朝早く、治療院で出してもらったお弁当と薬草を入れる袋、サンプルの薬草をドラゴのバッグにしまい、神殿へ向かったのだ。


参道はところどころ苔むした石が転がり、それが整備された道路だっただろうことは想像に難くなかった。


「ちょっとだけ登りなんだねぇ。」


これから山登りになるであろう、その前に、膝や体の曲げ伸ばしをしながら、フウライは参道についての感想をドラゴに投げかける。


「神殿は山の上だからな。

だが、参拝が活発だったころは、こんなに木もなかったと聞く。」


先代のドラゴンから聞いた話だ。


「ドラゴンは飛んでくるからな。」


木は邪魔だ。


ドラゴはそう付け加えると、二人でトンネルの中に足を踏み入れた。


参道は長い長い緑のトンネルだった。

苔の生えた石は滑りやすく、普通に歩くより体力を要した。


「うう…これずっとこのままなのかな…」


代わり映えしない、鬱蒼とした景色にも飽きてきたフウライは、既に音を上げている。


「なんだ、フウライ。疲れたのか?

あそこで休んでもいいんだぞ。」


顎で指し示すのは、参道の脇の崩れかけたベンチだ。

休むためなのか、景色を楽しむためなのか、ところどころに木のベンチがおかれていた。


「疲れてはないんだけど……

もしかして、ウツミムシだっけ?あれに刺されたのかも!」


飽きてきたのを虫のせいにしながら、それでも歩を進める。


「そりゃ大変だ。胸に発疹が出てないか?」


ドラゴはあきれつつ、それでも一応付き合う。

ウツミムシがいないわけではないが、刺されてないのはわかっている。


「冗談でも言わないと、やってられない…ん?」


目の前に、緑に染まった長い長い階段が姿を現す。


「うわ、なっが!これ登るの…うそぉ…」


階段は急ではなく、子供でも登りやすそうだった。

おおよそ30段登ると広くなっているのは、小休止のためだろう。

だが、木の枝が行く手を邪魔しているところもある。


「…ドラゴ、階段って登れるんだっけ?」


段差のある所はドラゴの背中や足につかまって飛んでたよな、と思うフウライは、心配げに問いかける。

多少の高さがないと飛ぶのは厳しい。なにしろ木が邪魔だ。


「問題ないな。」


フっと笑うと短い足を巧みに使い、少し跳ねるように階段を登る。


「おお!すごい!」


フウライは嬉しそうに笑うと、同じように階段を登る。


「フウライは先に。うっかり転ばれたら面倒だからな。」


落ちてきたら受け止めてやる。


そんなことを言いつつ、フウライードラゴの順に階段を登っていった。

100段近く登ったあたりで、開けた場所に足を踏み入れた。

休憩所だったのだろうか、朽ちた建物が参道の両脇に寂しげにたたずんでいる。


「大丈夫か。疲れたなら休んだ方がいい…」


休憩所跡を見たドラゴがフウライを気遣うが


「大丈夫だよ!僕はこれでも山奥で育ってるんだよ!」


山登りはいつもしてたし!と元気に答える。


邪魔をする木をよけつつ、300段近くまで登るとさらに開けた場所にたどり着いた。

階数が多かっただろう半壊した建物――宿、だろうか。

かつてはベッドだったものが、今は乗せる者もないとばかりに転がっている。


「さすがに疲れたね。そろそろお昼じゃない?」


フウライは壊れているが座れるベンチに腰を掛け、弁当のサンドイッチを広げる。


「みんなはここで泊まって行ったのかな?」


崩れた何かの像や、遊具らしきものを見ながらフウライは過去に思いを馳せた。

ドラゴはふわりと白く淡い光をまとうと、


「そうねえ。階段は半分くらい登ったから、ここで泊まってゆっくり神殿に行ったんでしょうね。」

「我らはそんな悠長なことしてられないものね。」


と言いながら、サンドイッチをつまむ。


「さ、あと一息だね!」


食べ終えたフウライが、元気よく立ち上がる。


「あと半分あるけどね。」


白ドラゴの返しに、そうだった、とため息をつく。

ふむ、と考え事をする白ドラゴに


「どうしたの?」


と問いかける。


「歩いて帰るの、面倒じゃない?」

「飛んで帰れないかしら、って考えてるの。」


ぱたぱたと白い小さな手を振りながら答える。

確かに帰ることを考えると、緑の地獄にうんざりする。


「そうだけど、木が邪魔なんでしょ?」


飛べない理由を思い出しつつ、フウライが返す。


「神殿に行くときは下りれないってのがあるけど…」

「帰りは木をなぎ倒して飛んでしまえば、後は村に行くだけだから。」


豪胆な考えを披露する。


「ド、ドラゴができるなら楽だけど…」


若干引き気味になりつつも、楽に帰れるに越したことはないし、

異論などあろうはずもない。

軽口をたたきつつ、残りの階段を登ったのだった。

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