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ドラゴとフウライ ― 旅の先にあるもの ―  作者: ナナマル
王都編
42/46

決断の重さ

少し体を固くし、鋭い視線を崩さぬまま、迎えに来た東の王子の側近とともに長い通路を歩くのは、東国からの使者だ。

到着日は手続きで会うことがかなわず、翌日の面会となったのだ。


後継者候補は別に宮殿が割り当てられているため、滞在中の王宮から長い通路を通って会いにいく必要があった。

王の財力もあってか、東国の屋敷らしいデザインが取り入れられた、最新の宮殿に目を瞠る。


これでは主が甥を王としたがるのも、無理はない――


東の王子の母親は、東国の主の妹だ。

私が幼いころに嫁いでいったそうだが、とても聡明な方だと聞いた。

主は武功に優れているが、その反面政治手腕に少し不安があった。

その分の政治手腕は彼女が担当していたと。


そのような女性の育てた王子はどのような方なのか。

期待と不安が入り混じる。

迎えに来た部下や側近に、どうしても不安がぬぐえなかった。


面会の部屋で片膝をつき、頭を下げて王子を待つ。


ふわりとした足取りで王子が入ってくるのが分かった。


「頭を上げてください。」


とてもやさしい声が、頭上から降ってくる。


顔を上げると、微笑みをたたえた穏やかな顔が目に飛び込んでくる。柔らかい表情とは裏腹に、不安が湧き上がるのは少し虚ろに見える目のせいだろうか。


「遠いところ、ご苦労様でした。」


東国のデザインを取り入れた瀟洒な服に、つややかで美しく伸びた黒い髪。

ふ、と漂ってくるのは桜をイメージした香水だろうか。


気取られないように観察しつつ、挨拶する。


「主の命により、ただ今罷り越しま…」


言い終わらないうちに、


「ああ、そのような堅苦しい挨拶はやめてください。」


優しげだが、有無を言わさない強さで言葉を遮る。


「私はいつも皆と一緒にありたいのです。」


王子は周りを見渡しながら、満足げに話を続ける。

部下たちはおっしゃる通りとばかりに、力強くうなづいている。


――これは。


「来た時に王都の市場の様子を見ましたが、流通が滞ってきている様子。」

「おそらく、他の後継者、おそらくは西の御方がなされたかと。」


湧き上がる不安を押し殺すように、これからの対策について話す。

まずは、城下の住民の暮らしを整えなければなるまい。


「あぁ…そのことですね。」


どこか夢を見るように、王子が答える。

既にお考えだったか、と使者は胸をなでおろしたが……


「とても胸が痛いです。

部下にはすでに、そのようなことは辞めるように言うよう、言付けています。」


少し眉根を寄せ、苦し気な様子を見せる。

だが、どこか満足げでもあった。


――部下に言付け?


まさか、それだけで何とかなると、思っているのだろうか。

誰が、誰に、何を伝えるのか。そして、その結果は?


使者が口を開こうとしたとき、


「そういえば、伯父様から預かった物があるのでは?

手紙は昨日もらって読みましたよ。

私を気にかけてくださっていて、とてもうれしいです。」


王子の畳みかけるような問いに、話題は流されてしまった。


「もちろん、こちらに。

ですが、これは後継者になるための軍資金として、こちらで……」


東国でしか取れない、東国では国宝である美しい宝玉を目の前に差し出す。

王国の大富豪では厳しいだろうが、帝国の大富豪ならふさわしい金額で売れるだろう。幸い伝手もある。


「では、こちらで預かります。」


王子がにこりと笑い、手を差し出す。

周りは固唾をのんで宝玉を見つめる。


「恐れながら、これはこちらで換金して管理します。これから……」


この方に渡した宝玉がどうなってしまうか、わからない。

今後のためにも、渡すわけにはいかなかった。


だが――


「伯父の手紙には、私の好きにしていいと。」


手紙を側近に渡し、側近がその手紙を持って使者に差し出す。

慌てて手紙を受け取り、目を通す。


その宝玉は、お前のものだ。

お前の好きにしてもいいのだよ。


そんなことが書かれていた。


国宝を、個人の裁量で……


使者は、がっくりと両ひざをつき、うなだれるしかなかった。

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