王都は少し高い
人の囲いから抜け出し、ドラゴと連れ立って歩いていると、店の看板に目が留まった。
手紙を棒の先につけ、馬に乗った人の形が書かれている。
「あ、ドラゴ!ここが伝令のお店じゃない?」
あらかじめオークダンプの少女に聞いておいた、看板のマークがそこにあった。
「あら、そうね。じゃあ、ここでお使いを出しちゃいましょうか。」
カランカラン
店に入ると、何人かの客が店員と話をしているようだった。
フウライは少しだけ体を固くしつつ、空いている店員に向かう。
「いらっしゃいませ。」
店員は、とても丁寧にフウライを迎える。
さすが王都である。
白ドラゴが担いでいるバッグから、老女の魔物に襲われた時の状況と日時をメモした紙を取り出す。
「オークダンプの宿宛てに、急ぎの伝令をお願いします。」
これでいいのかな、といいたげに白ドラゴを見て、店員に向き直る。
「かしこまりました。」
「オークダンプですと、到着は明後日の予定です。」
にっこりとメモを受け取ると、配達用の封筒にしまい、“急ぎ”のスタンプを押す。
決して少なくない金額を支払うと、店を出た。
「配達のお金、もらっておいてよかったね。」
無事役目をはたしてほっとしたのか、両手を上げて体を伸ばすと、白ドラゴに語り掛ける。
「旅にお金が必要だっていうのは、フウライの必死さからよく伝わったわ…」
「のんびりしているのか、しっかりしているのか、よくわからないわねぇ。」
少しあきれたように返すと、フウライはえへへと笑い、
「だって、お腹が空くのは困るからさぁ…」
と言い終わる前に、
ぐうぅ~
と腹を鳴らすのは、近くの屋台から漂ってくる肉を焼いた臭いのせいもあっただろう。
「ね、ね、お肉焼いてるよ!あれ、食べよっか。」
よだれを垂らしそうな勢いで誘われた白ドラゴ、
「我は肉より、果実のほうがいいわねぇ。」
とこれまた飴につつまれた果実をうっとり眺める。
「でも、宿場町で見たのより、少し高いんだね。」
フウライは値段に目を止め、少し戸惑い気味につぶやく。
「ここだけの話、王様が倒れちまってから、肉を手に入れるのが大変になっちまってな。」
屋台の主人が、小声で話しかけてくる。
「どうも、後継者同士で争ってるのか、流通を邪魔してるらしいって話だ。」
やれやれといったように、肉の串を渡してくる。
「追い出されないのはよかったけど…」
少しだけ胸が重くなった気がするフウライは
「この街、滞在してても大丈夫なのかな…」
オークヘイブンのことも頭をよぎり、不安を口にする。
「平気でしょ。我もいるし。」
果実をかじりながら、白ドラゴがなんてことない、といったようにフウライの不安を吹き飛ばす。
「それもそっか。」
すっかり胸が軽くなったフウライは、さらに買い食いしつつ宿に向かったのだった。




