王都にて、解散
「王都の宿なんて、どんな感じなんだろう?」
フウライは胸を躍らせ、ドラゴに問いかける。
「さあな。我が泊ったのはお前と同じ宿しかないからな。」
追われたことしかないのでな――
ドラゴはそれを言わずに、フウライに目を向ける。
「ドラゴもわくわくする?すごいよねぇ、王都って。」
テーブルが外にまで出ているカフェに目を丸くし、見たことのない生地で作られた服を飾った店に声を上げ、キラキラと光る宝石店に胸を抑える。
「さすがは王都といったところだな。なんでもある…」
ドラゴが言いかけたところで、
「あっ!ドラゴ、あれあれ!」
指さした先には、先日宿場町で見た芝居一座のポスターが貼られていた。
勇者、決死のドラゴン退治!
実物を見たからなのか、ドラゴンの着ぐるみがドラゴに近くなっている。
芝居を見たのか、城下町の住民であろう人々が物珍し気に、こちらを見てるのに気づいた。
その目に恐怖はないので、宿場町での出来事も伝わっているのだろう。
「わぁ!ドラゴンだ!」
「ねぇ、お芝居のドラゴンさん?」
「すげぇ!本物って鱗すげえよ!」
「強そう~。」
瞬く間に子供たちに囲まれる。
「遠慮なく集まってくるねぇ。」
フウライが笑いながら、少し上目遣いにドラゴに目を向ける。
言葉に詰まって棒立ちになったドラゴは、ふっと白い光をまとう。
「あんたたち、集まらないでよ!はい、解散!」
集まってくる子供たちに解散を言い渡すが、
「かいさん、てなんだ!?」
「うーん、海の、貝じゃ、ないよねぇ?」
「変身した!変身した!」
「白いドラゴンさん、きれい~。」
子供たちに通じるわけもなく、却って喜ばせただけだった。
喜んでいる子供たちに目を細める大人たち。
だが、そんな騒ぎをよく思わない者もいる。
「おい、お前ら!」
「いったい、何をしている!」
「騒ぎを起こすな!」
王都を警備しているであろう兵士が数人、騒ぎを聞きつけて様子を見に来たようだった。
「この王都に、そのような魔物はふさわしくない!」
「厄災が何をしたか、わかっているのか!」
「お前らに王都にいる権利はない。さっさと出ていけ!」
――ドラゴは魔物なんかじゃない
――そもそも人間が攻撃しただけじゃないか
――何もしてないし、ここにいる権利はある
フウライの頭に、いろんな考えが押し寄せる。
だが――
「バァーカ!」
一番偉そうな兵士を指さし、罵声を浴びせる。
――だって、こんな奴らに言い訳してどうなる?
「お前も!お前も!」
そのあとも、順番に指をさす。
「アラアラ…。フウライったら…。」
「そんなに言ったら、かわいそうじゃない?」
白ドラゴは嬉しそうに、止めるふりをして止めない。
「お前も!」
「バァァーカァ!」
フウライは言い終わると、満足げにため息をつく。
兵士も子供も住民も、全員固まったままフウライを見つめ――
「バーーカ!」
「あはは、バーーカ!」
「バーーカ!バーーカ!」
子供たちは真似をする。
大人たちはこらえきれず笑いの渦を発生させた。
毒気を抜かれた、そんな気分になったのか
「いいか!おとなしくしてろよ!」
と言い放つと、兵士たちは去っていった。




