表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドラゴとフウライ ― 旅の先にあるもの ―  作者: ナナマル
出会い編
4/32

風の子と、森の境界

牧歌的な村の風景によく似合う、子だくさんで賑やかな家族が暮らす少し大きな一軒家。

どこかしら夢を見ているようなまなざしの、少し癖のある黒髪を風に揺らした青年が玄関ポーチの階段に腰かけていた。

彼は、そうして自分の知らない世界を空に夢見ているのだ。

今年18歳になったばかりの彼が年の割にあどけないのは、7人兄弟の末っ子だからだろう。

大勢で面倒を見てくれるおかげで、今は特に仕事もしていない。

「この子は風のようだから」

親や兄弟は、いつでも笑って、愛される末っ子を見守ってくれているのだ。


15歳になると角のある魔獣を狩るのがこの地の成人の儀式。

角のある魔獣を狩って、初めて成人と認められるのだ。

彼の首にかかっているペンダントも、その時に狩った一角ウサギの角からできている。

兄や姉のようにグラウホーンやラドノスといった、魔牛や魔サイを狩るのではなく、

最初に目についたから、というのも彼らしい理由だった。


「ああ、こんなところにいたのね。あのね、お願いがあるのよ。」

彼が海の向こうを夢見ているとき、ふいに母の声が耳に入った。


「村の外れの薬師のおばあさんを知っているでしょう?」


村に一人だけの大切な存在だ。彼女がいなければ、治る病気も治らないだろう。

海の向こうから連れ戻された彼は、そう思いながら母に目を向ける。


「薬草を頼まれたんだけどね、今手が空いてる子がいないのよ。

だから、ちょっと届けに行ってきてくれる?」


彼女は薬草の入ったかごを、彼に差し出した。

今、仕事をしていないのは彼だけだ。断る理由もない。

かごを受け取ると、軽やかな足取りで村の外れに向かった。


森のそばの道を通り、薬師の家に向かった。

この森には厄災と呼ばれたドラゴンがいるのだという。

傾いた古ぼけた警告の看板にも、そんなことが書かれている。


「ほんとうなのかな」


好奇心は人一倍ある。一度見てみたいとも思っている。

だが、家族からは


「決して入ってはいけないよ」


と口酸っぱくして言われているのだ。


看板が見えなくなったころ、薬師の家にたどり着いた。

かごを差し出す彼に、薬師はにやりと笑いながら言った。


「お前は好奇心旺盛なのに、森には入らないんだねえ。」


当然だ。

彼は好奇心はあるが、危険なことをしたいわけではないのだ。


「私は帝国にいたことがあるんだ。」


彼女のいつもの自慢だ。

帝国といえば、最大の繁栄を誇る国だ。

街に入ることすら難しいのに、この薬師はそこで学んだのだという。


「噂なんて、自分で確かめないとわからないこともあるんじゃないかい?」


まるで、森に行ってみろと言わんばかりだ。


薬師の家を辞して、帰路につく。

彼は薬師に言われたことの意味を考えながら、来た時より少し重い足取りで歩いた。

ふと気づくと、森の入り口に立っていた。


自分で確かめろ――


彼は意を決したように瞳に力を込めると、森の中へと入っていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ