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ドラゴとフウライ ― 旅の先にあるもの ―  作者: ナナマル
王都編
39/46

護衛の終わり

一行は最後の山を越えるべく、細い山道を進んでいた。


「申し訳ない。広い道を使いたいのはやまやまなのですが…」


東国の使者は申し訳なさそうにつぶやく。

山を回り込めば広い道を使えるが、何分急ぎの旅なのだ。


「この道は魔物の群れが出ると聞いています。馬なら駆け抜けることもできましょうが…」


馬はおそらく宿場町まで戻っただろう。

この道を使うためには、ドラゴを頼るしかなかった。


「王が倒れ、王都では後継者争いが、すでに始まっています。」


それだけ言って、使者は一度、言葉を切った。


「主の命で、主の妹の息子である王子を支えねばなりません。」


何かひっかかるところがあるのか、目を伏せて物憂げに続けた。


「ど、どんな魔物なんだろ…」


昨日の魔物を思い出し、フウライが身を震わせる。


「一匹なら一角ウサギぐらいの強さだろうが、群れだからな。厄介なんだろう。」


人間にはな――


フウライの言葉を受け取って、ドラゴが答える。


「昨日の魔物よりは、弱いんだね。

でも群れなら、ドラゴもそっちの方が厄介なんじゃ?」


フウライはどちらがより倒しやすいのか、という疑問を持ったようだ。


「昨日の魔物は、人を取って食らう種類の魔物だ。

しかも、知恵があっただろう。そっちの方が厄介だ。」

「人間同様、だまし討ちするからな。」


片方の口角を少し上げ、ドラゴが答える。


「もう、そうやってチクチクと――」


フウライが言い終わらないうちに、ドラゴと使者が立ち止まる。


「先に行け。広いところへ。」


ドラゴが使者に言うな否や、使者は走り出す。


「フウライ、乗れ」


慌てて背に乗ると、ドラゴはばさりと翼を羽ばたかせる。

そのまま低い位置で使者の後を追う。


「ひえっ!」


フウライは、肝をつぶしたような声を上げる。

チラ、と後ろを振り返ると小鬼のような魔物が甲高い声を上げながら、群れをなして追いかけてくるのが見えたのだ。


草の広がる平坦な地に、使者が駆けこむ。

続いてドラゴが飛び込むと、フウライと使者を後ろに隠し、息をためる。

同じように駆け込んでくる小鬼の群れに、柱のような火炎を放つ。

先頭の小鬼がいくつか倒れたところで、後ろの群れはドラゴに勝てないと悟ったのか、奇声を上げながら逃げ去っていった。


「無駄な戦いをしないところが、魔物のいいところでもあるな。」


ドラゴは我の強さに恐れをなしたのだ、と胸を張る。


「戦うのをきちんと見たのは初めてだけど、本当にすごいねぇ…」


フウライは目を輝かせ、尊敬のまなざしを向ける。

老女の魔物時は顔を伏せていたせいもあって、よく見えなかったのだ。


「本当に助かりました。」


使者はほっと息をつき、あらためて護衛を頼んでよかった、と思うのだった。


一行はその広場で野宿をすることに決めた。


「さっき、王都では後継者争いが始まってる、って言ってましたよね。」

「その、王様はどうなっているんですか?」


火を囲みつつ、フウライは王都の様子を尋ねる。


「王が倒れたようなのです。」


ドラゴのバッグにあった芋をかじりつつ、使者が答える。


「もう先がないだろうと。」

「賢王として有名な方でしたが、子供たちは……」


目を伏せ、言いよどむ。


「ああ、ポンコツしかいないって話だな。」


ドラゴが楽し気に使者に言い放つ。


「え、てことは、東の王子さまも……」


フウライが悪気なくつぶやいた。


「とてもお優しい方なのですよ。周りが…」


そう言って、使者は言葉を飲み込んだ。


「あっ、す、すみません。」


決まり悪そうに、口ごもりながら言うと、僕も自制が必要だな、とフウライは思うのだった。


あけて次の日、一行は王都の門前にたどり着いていた。


「よくいらっしゃいました。」

「王子がお待ちかねです。」

「主に荷物を預かっているのでは?」


東の王子の部下らしき者たちが、矢継ぎ早に使者に話しかけてきた。


「こちらは…?」

「たしか、オークヘイブンの人間に、ドラゴンと人間が一緒にいると聞いたな。」


ドラゴとフウライを警戒しているのか、持っている武器に手をかけている。


「こちらは私の護衛をしてくれていた方々だ。」

「失礼のないようにしていただきたい。」


使者が厳しく制する。つづけて、


「こちらの方々に、一週間ほど宿を手配してほしい。」


部下に命じると、部下はしぶしぶといった様子で立ち去った。

使者はドラゴとフウライに向き直ると、


「宿は町の広場の前にあるから、すぐにわかります。

東の王子の印が入っていますから、目印にこれを。」


報酬の入った袋には、東国を示す、東の王子の印が書かれていた。


「ありがとうございます!」


報酬と宿を確保し、フウライはほくほくだった。


「それでは。」


それ以上は何も言わず、使者は少しだけ頭を下げ、残りの部下と去っていった。


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