旅立ちの前に
「ふわぁ~できたあぁ…。」
なんとも情けない声を上げつつ、フウライの試作品が一応の終わりを見た。
村の家具職人から、木材を削るコツや道具の使い方を教わりつつ、数日かけてようやく完成したのだ。
置いたら少し傾くものの、使えないほどではない。
「こんなに難しいなんてさぁ…。」
ブツブツいいつつも、出来上がった物を横から、上から見て満足そうだ。
「フウライさん、そのスプーンなんですけど、宿に置いていっていただけませんか。」
出来上がりを見守っていた少女が、意を決したように願い出る。
「え、これ?……使うの?」
ちょっとおろおろしつつも、フウライが問い返す。
「もちろん使います。フフ。」
その様子が少しおかしかったのか、少女が口元に手を当てつつ答える。
「置いていっていただけたら、壊れた時に奇跡が起きたんだな、ってわかるじゃないですか。」
「壊れた日時を記録しておくので、もし奇跡が起きたら知らせてほしいんです。」
後半は、手を握りながら切実に願う。
フウライに奇跡が起きれば、そしてその日時が同じなら――
オークの木の奇跡は確実なものとなるのだ。
「あぁ!なるほど!」
フウライは目を輝かせ、楽しそうにぽん、と手を叩く。
「そっか、そしたら宣伝もしやすくなるしね。」
たくさんの人が来るといいねえと白ドラゴに言いながら、次の旅について話をする。
「それなら、王都に行ってみたらどうですか?」
すっかり安心したらしい少女が、次の旅先を提案する。
「ここからは一週間くらいかかるけど、途中宿場町もあるし。」
「宿に泊まれるよう、宿場町の友人に連絡しておきますよ。」
白ドラゴにちらりと目をやり、心配はいらないとばかりにフウライを見る。
「わぁ!助かるな。ありがとう!」
フウライは目を見開き、そして細める。
オークヘイブンで断られているのだ、少し不安になるのは仕方ない。でも宿に泊まった実績があれば…
「これはお礼です。本当に何から何まで、ありがとうございました。」
少女は報酬の袋を差し出す。
見ると、結構な金額のお金と、白ドラゴの分も入っているであろう、お弁当が収められていた。
「こんなに!?」
フウライは驚くが、
「村の復興がかかってたんですよ。当然です!」
少女は胸を張って答えるのだった。
「わぁ…こちらこそ、ありがとう!」
少女にお礼を言うと、白ドラゴに向き直り
「じゃあ、行こうか!」
次の冒険へ出発するのだった。




