はじめの一つ
「えーっと、まずは、試作が必要だと思うの。」
少女は流れを考えつつ、次の目標を定める。
「村の人間だと信用されないかもしれないから……」
フウライに目を向ける。
「試しに木彫りの何か、作ってみませんか?」
交渉の場にいたメンバーの目がフウライに集まる。
「え?僕?
うーん…木彫りかぁ…」
ちら、と面倒かもしれないという気持ちが顔をのぞかせる。
「旅の役に立つかもしれないわよ?」
白ドラゴが少女を援護する。
今まで守られる一方だし、何かあった時に…とフウライも思い直す。
ペンダントだって作れたんだし…
「うん、じゃ、やってみようかな?」
照れくさそうに頭に手をやると、試作することに同意した。
フウライの同意を受け、少女は連絡係に木こりや森林の管理人の調達を伝える。
村の産業がうまくいくかもしれない、という思いは連絡係の村人を元気づけたのか、勢いこんで走り去っていった。
村長はオークの森の住民に人間の管理が入ること、裏切ったらドラゴが味方になることなどを連絡するため、そばのオークに伝言を託した。
「さっそくだが、木を見に行くといい。」
村長は残ったオークの監視員に向き直り、
「何かの縁だろう。お前が行ってきなさい。」
と命令を下した。
俺にできるのか?
やったことないんだがな。
命令された監視員は焦りを隠せなかったが、やってみるしかない。
四人で連れ立って森の中から木を見つけるため、村長の家を出たのだった。
「こっちだ。」
三人は、監視員に乱雑に積まれた木材が置いてある広場に案内された。
管理は苦手といっても、木を間引くようなことはしていたようだ。
「これから切るんじゃないんだね。」
木こりが切るのかと思っていたフウライは、少し拍子抜けしたようだった。
「これから切ったら大変だろう。木を切るのは時間がかかる。」
「乾かす手間もあるし、すぐに作るっていうなら――」
監視員はフウライを見てから木材のほうに向き直り
「もう切ってある木材から選ぶのが妥当だろ。」
と言われれば、その通りと思うしかなかった。
フウライの村は畑と薬草がメインで、材木は近隣の村との交換で成り立っていたので、事情がよく分からないのは仕方ない。
「よし、お前だったら――」
監視員がフウライと材木、交互に目をやりながら木材を選ぶ。
「これだな。これで木のスプーンを作れ。」
1つの木材を指で差し、作るものを指定する。
「木のスプーン!?」
フウライと少女、驚いたように同じ言葉を発する。
「家具じゃないんだね…」
フウライはつぶやきつつ、同時に簡単そうでよかったとも思った。
「1年ぐらい置いてあるから、乾燥は十分だ。後は表面の水分を飛ばせばいいだろう。」
オークのアドバイスは続く。
「どのくらいですか?」
少女が問いかける。場合によっては宿を準備する必要もあるからだ。
「2,3日だな。日の当たる場所に置いておけばいい。」
「……俺、こんなこと知ってたんだな。」
監視員も自分で自分のアドバイスに驚いている。
同時に、これから面白いことになりそうだ、とも思ったのだった。
「出来上がった物は、持ち歩く必要があるの?」
少女が白ドラゴに尋ねる。
「旅に出たら、タンスなんか持ち歩けないでしょ。」
木で鼻を括ったような返答が返されたが、少女はその通りとうなずいた。




