森を預ける
「オークと交渉するなら、連絡する係が必要ね。」
少女は思案顔でつぶやくと、三人で出発する前に宿の女将を探し、二人の人員追加をするよう村長に伝えてほしいと伝えた。
オークの森の入り口付近で男女一人ずつの連絡係と合流すると、ちょうど森の奥から監視員が歩いてくるのが見えた。
「こんにちは!」
フウライはぱぁっと顔を輝かせると、嬉しそうに声をかける。
声を掛けられたオークのほうは少し顔をしかめ、しぶしぶ
「あ、ああ、こんにちは…」
と返す。白ドラゴににらまれている以上、返さないわけにはいかない。
「……お前らはオークダンプの人間だな。何しに来たんだ。」
警戒は解かないが、攻撃しようという様子はない。
「僕たち、村長さんに話が……お願いがあってきたんです。」
フウライが言葉を選びつつ、監視員に要件を伝えた。
「お願い……うーむ、確認してくるから、ここで待ってろ。動くなよ。」
そう言い残すと、くるりと踵を返して去っていった。
「あいつ、大丈夫か?仲間連れてこないだろうな?」
「うん、ちょっと心配。」
オークを敵対する魔物と思っていた連絡係の村人は不安げに尋ねる。
「大丈夫よ。まずは信頼を取り戻さないと。」
白ドラゴにちらりと目をやりつつ、少女は連絡係を勇気づける。
――いっぽう、監視員のオークは腕を組み考えつつ村長の家に到着していた。
「村長、オークダンプの連中がお願いがあるって…。例のドラゴンも一緒です。」
「――何?」
「お願いか……。ドラゴンが一緒なら聞いてみるしかあるまい。」
またか、という様子でため息をつきながらも交渉を受け入れるしかなかった。
戻ってきた監視員に案内され、広めの家に入る。
――あれ、何がおいてあったんだろ。
フウライは目の前にある、宝を失って寂しげにたたずむ台座に視線を奪われた。
「では…」
村長の声で我に返ると、視線を交渉の場に戻す。
「お願いというのは?」
単刀直入に聞かれた白ドラゴは
「昔オークと人間で木を使って何か作ってたでしょ?あれ、またやりなさいよ。」
単刀直入に返す。
「あ、あ、何か欲しい物とか、あれば言ってください。報酬もちゃんと払いますから!」
フウライが慌てて取り繕う。
「もちろんです!どういった報酬が必要か、言ってくだされば。」
少女も援護射撃する。
「我々は物を欲するわけではない。今のままで十分だ。」
少女の顔が曇る。このままでは――
「だが、森の管理が難しくてな。」
「オークに繊細な作業は苦手だ。森の美しさを保ってくれるなら――」
「協力してもよい。」
少女は目を輝かせて村長をまっすぐに見る。
「それじゃあ――」
少女が更に何か言おうとしたとき、
「だが」
「人間は裏切るからな。もし裏切ったら……」
村長は白ドラゴに目を向ける。
「ドラゴン殿は我々に味方し、人間に制裁を与えてほしい。」
目を向けられた白ドラゴは面白いことでもあったかのように
「ですってよ。どうする?」
少女に目を向ける。
少女はうつむき、唇を噛む。
そののち――
「わかりました。その条件で構いません。」
交渉が成立した。




