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ドラゴとフウライ ― 旅の先にあるもの ―  作者: ナナマル
人里編
33/33

宿を拠点に

「窓の数からすると、五組くらい泊れそうね。」


入口からしばらく歩いたところ、村のおおよそ中ほどで、その家の前に立った。

白ドラゴがその家をざっと見て、そう判断する。


「けど、今は稼働してないのかしらねぇ。」


ところどころはがれた外装。

汚れた窓にカーテンが閉まっている。

それを見てため息をつく。


「…観光地にしようとしたこともあったんです。でも…」

「何か特別な景勝地があるわけでもないし、うまくいかなかったみたいで……」


きまり悪そうに少女がつぶやく。


「あ、い、いらっしゃいませ!」


少女たちが来たのを見たのか、中から女性があわただしく飛び出してきた。


「お食事の準備はできています。どうぞ、中へ。」


中へ入ってもイメージは変わらなかった。

ところどころ壁紙が剥がれ、塗装を塗り直している最中なのか、

塗料の入った容器が置かれている。


「あ、まだ工事はしていますが、いつでもお泊まりいただけるようにはなっているんです。」


女将が取り繕うように語り掛けてくる。


「ですけどねぇ。なんの取りえもない村になんて、誰も来ませんよ……。だって、何をしに来るんですかねぇ。」


最後を自嘲気味に言って、女将は片頬を上げる。

少女は唇をかみしめ、フウライは視線を下に向けるだけで、何も言うことはできなかった。


「さ、こちらです。どうぞごゆっくり。」


手を食堂に差し出し、口早にそう言うと、まだ仕事が残っているのか、そそくさと立ち去っていった。


一行は、パン、スープ、卵料理といった食事が並ぶ食卓に着いた。


「わぁ!おいしそう。いただきます!」


腹ペコを思い出したらしいフウライが、真っ先に手を付ける。

少女はそこまでお腹はすいていないのか、手でもて遊ぶパンを見つめつつ、話を始めた。


「それで、オークの森のことなんだけど……」


「あぁ、オークの森を使いたいって話だったわね。何に使うの?家具でも作るつもり?」


言い淀む少女に、白ドラゴが口をはさむ。

オークの森を使いたいという村長との会話を思い出し、使い道について尋ねる。


「……昔、オークヘイブンではオークの森の木を使った家具を作ってらしいんです。その家具には、不思議な力があったって聞きました。」

「癒しの力、みたいなんですけど……」


「ううん。それはどうかしら。」


何かを思い出そうとしているのか、白ドラゴは少し顔を上げる。


「昔……なら確か、オークと人間が共同で森を管理するって話だったはず。」


思い出しながら、慎重に話を進める。


「オークが木を見出して、人間が彫ったり、組み立てたりするって聞いたわよ。」


首を傾げつつ、思い出したことを語っていく。少女の目がだんだんと輝いていくのが分かる。


「出来上がった物には不思議な力が宿って、一度だけ願い……だったかしら。

何か奇跡が起きるんだったかしら。」


「人間が自分で作らないとダメだったって聞いたわ。

奇跡だかなんだかが起きたら、その木の作品は崩れてしまうんですって。」


一気に話した白ドラゴは、満足げに一同を見渡す。

二人とも目を輝かせ、ドラゴを見つめていた。


ひときわ目を輝かせた少女が、勢いづいて話し出す。


「じゃ、じゃあこの宿を拠点に、村外の人に来てもらって、

オークの森で見いだしてもらった木から、何かを作る――というのはどうかな?」


「私たち村人は世話係として、オークとの仲立ちができれば!」


村が再生できるはずだと、少女は言い募る。


「それで、オークたちは何がもらえるの?」


フウライが素朴な疑問を投げかける。

村にはいいかもしれないが、オークには何がいいんだろう?


「あ、それは…」


「フフ…フウライは手厳しいわねぇ。」


白ドラゴが楽しそうに首を振る。


「えっ!だって、オークにお願いするなら、何か報酬がいるかなと思って!」


フウライは慌てたように弁解する。

自分も何かしたら報酬をもらっていたので、当然だと思っていたのだ。


「まぁ、そこは交渉次第よ。オークは人間と違ってそういう“欲”はあまり持ってないの。」


何か考えがあるようにそう告げると、一行はオークの森へと出発することにしたのだった。

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