これからの村
ドラゴはオークの森を過ぎ、火矢の届かないであろうところまでくると、ゆっくりと地に足を付けた。
「夜が明けちゃったねぇ。」
大きな口をあけながらフウライがドラゴに語り掛ける。
「だが争いは終わったようだな。」
ドラゴが森のほうを見やりながらあくびに応える。
「よかった…ん?」
オークヘイブンとはまた違う雰囲気をまとった人々が、少し離れたところから様子を伺っているのに気づいた。
「あの、大丈夫ですか?」
一人の少女がおずおずと進み出る。
「あ、ええと、ドラゴはドラゴンだけど、悪いドラゴンじゃなくて…」
オークヘイブンの警備員とのやり取りが堪えているのか、言葉がつかえる。
「何があったんですか?森、燃えてましたよね…」
少女はそれでも、フウライから視線を外さず、警戒した様子を崩さない。
赤い翼がふわりと閉じ、白い光をまとう。
「オークヘイブンの人間様が、オークの森を攻撃したのよ。我らがオークに与したとかで。馬鹿らしいわね。」
ふん、と鼻を鳴らし、フウライを隠しながら――発揮した地獄耳で得た情報を伝える。
「関係ないんですよね?」
白く、形まで変わったドラゴに目を見開き、それでも少女は念を押す。
「関係ないわよ。それどころか我らにまで火矢を放ってくるから、逃げて来たってわけ。」
少女はす、と緊張を解き、目を細めて笑顔を作る。
「よかった。ドラゴンさん、そちらの――」
「フウライです。こちらのドラゴンはドラゴ。赤くなったり白くなったりするんだ。赤いほうはとても強いんだ!白いほうはとても頭がいいんだよ。」
白ドラゴの後ろからひょっこり顔を出し、自己紹介ついでにドラゴも紹介する。ドラゴの紹介のほうが詳しいのがフウライらしい。
「ウフフ、フウライさん、ですね。」
その様子がおかしかったのか、少女は顔をほころばせながら名前を確かめた。
「もし、よければなんですけど…私たちの村に寄っていきませんか?オークダンプは小さい村ですが、これからの村だと思ってるんです。」
強い決意を秘めた瞳で、フウライたちに目線を送る。
「それに、おなかすいてません?」
途端にフウライの腹が鳴る。
「正直なお腹ねぇ…」
白ドラゴはあきれ顔でフウライを見やる。
「でも…昨日食べたのって、魚とドングリだけじゃん…」
しょんぼりしながらフウライがつぶやく。
「宿で簡単でよければ食事も出せますよ。」
少女が笑いながらも食事に誘う。
「行きます!ね、ドラゴ!」
勢いよく顔を上げたフウライが、さらに勢いよくドラゴに目をやる。
「仕方ないわね…。」
そうして、ドラゴとフウライは少女と連れ立って宿に向かうのだった。




