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ドラゴとフウライ ― 旅の先にあるもの ―  作者: ナナマル
魔物編
30/33

夜が終わるころ

炎の熱が届かない高さまで舞い上がると、そのままオークの森の上へ羽ばたきを進める。

その様子を見上げているのは避難するオークであろうか。

フウライはドラゴの背に乗り鎖にしがみつきつつも、オークの森の様子を伺う。


「あ!今なんかキラって光ったよ!」


避難するオークの最後尾のあたり、だろうか。オークの手のあたりが光った気がしたのだ。


「大事なものを持ち出したんだろう。だが、そんなこと気にしている場合ではないな。」


火矢に追い立てられるように、オークの森とオークヘイブンから遠ざけれているのだ。


その様子を注意深く観察している者――


ずれた眼鏡を直し、口角を上げる。


――姿を現しましたね。


いつの間にか、避難する村長の前に立ちはだかる。混乱に乗じて先回りしたのだ。


「あなたがオークの森の村長ですね。」


静かに語りかける。


「その通り。何が起きたか知らないが、オークは何も関係していない。」


鋭い眼光を放ちながら補佐官を睨めつける。


「そうでしょうか…。人間とドラゴン。ドラゴンは厄災と呼ばれています。ならば人間を取り込み…」


――あなた方に与したのでは?


「そのようなことは一切ない。それに森に火を放っても優勢なのはオークだ。」


実際に犠牲は人間のほうが多かった。だが、これ以上森を焼かれては――。


「なるほど。そういうことなら…、我々は和平を望みます。今までのように、警戒しあうのではなく、真の和平です。」


懐に手をやり、一枚の羊皮紙を取り出す。

その羊皮紙を見て村長は息をのむ。


魔法契約書。


話には聞いたことがある。帝国の秘術とも呼ばれる技で作られたものだ。約束を破れば滅びが待っているという。


「ご存じのようですね。」


ならば話は早い。と羊皮紙を広げ、内容を見せる。

人間はオークの森に入らない、オークはオークヘイブンを攻めない、という内容の不可侵条約のようだった。


「ただし――」


眼鏡の奥が鋭い光を放つ。


「そちらの宝を頂きましょうか。それはあなたがたのためのものではない。」


村長は即答できなかった。今までずっと守ってきたものだ。宝を抱く腕に、わずかに力がこもる。

だが、オークの願いは叶えられたことはない――。

確かにこれは人間の物なのだろう。


「……いいだろう。だが先に和平を結んでからだ。」


絞り出すような声で村長が同意を表明した。


「ご英断です。」


眉と口角を上げると、近くの兵士から短剣を受け取る。指を少しだけ傷つけ、魔法契約書に血を垂らす。

その魔法契約書を、短剣とともに村長に差し出す。村長は同じように魔法契約書に血を垂らした。

魔法契約書は強い光を放つとそのまま消えてしまった。契約が成立した、ということだった。

もしどちらかが約束を破れば、その街――森――は滅びることになる。


「…これを。」


差し出された台に乗っていたのは、みずみずしい木の葉を今取ったかのような緑のかけらだ。そして、あの美しい青いかけらと同じ質感を持っている。


「本当にあったんだ…」

「我らに力を貸さなかったのは、人間の物だったからなのか。」


その姿を初めて見たオークたちの間でどよめきが起きる。


その宝が人間の手に渡った瞬間、燃えていた木々が一斉に沈黙し、村長をはじめとしたオークたちも沈黙したのだった。

森の木々はすでに白い光をまとい始めていた。

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