つながれた正義
大きな窓を背に、執務机と椅子。鬢に白い物が混じり始めた女性が座り、お茶を飲みながら書類に目を通していた。
その目には損得を計算する鋭い光が宿っている。
そばの事務机には、眼鏡をかけその目に知性を宿した男性が静かに書類をめくっていた。
いつもなら静かに叩かれるドアが、大きな音を立てて開けられる。
「何事です?」
お茶を置き、闖入者に鋭い目を向ける。
「少し落ち着いてから話してください。」
めくっていた書類を置き、立ち上がって近づく。
「ド、ドラゴンが!人間を連れたドラゴンが現れました!」
町長は目を見開き、補佐官に目を向ける。
「本当だったのですね…」
補佐官は眼鏡の位置を直しつつ、静かに
「そろそろ街に着く頃なのではと思っていました。」
一日ずれましたが。
落ち着いた様子で返事を返す。
「オークの森を通ったということは、ドラゴンがオークと手を組んだ可能性を考えねばなりません。」
目を町長に向け、懸念を伝える。
「物理的な争いごとは極力避けなければなりません。特にオークとの戦いではいつも大きな被害を被っているのです。」
落ち着きを取り戻した町長は静かに争いを否定する。
「しかし、オークが攻めてきてからでは遅いのではありませんか?いつも静観して」
「――結局街に攻め込まれて被害を被っている。」
顔を町長に向け、はっきりと言い切る。
眼鏡が。あの眼鏡を見ると、少しだけ頭がふらつく。
「あ、ああ、そうだったわね。帝国が軍を貸してくれているから、そうしましょうか…」
――攻め込まれたことなんてあったかしら――
そんな思いが頭をかすめたが、結局は軍を動かすために部屋から出ていった。
後に続いて警備員も扉を抜け、入れ違いに別の警備員が入ってくる。前の警備員と違うのは、一番上のボタンに鎖のマークが入っていることだろうか。
同じく一番上に鎖のマークのあるボタンと細い鎖で繋がったブローチを付けた補佐官に向き直る。
「あなたのおかげで、うまくドラゴンを呼び込むことができたようです。」
補佐官が薄く口角を上げ、警備員に声をかける。
「はい、漁村の知り合いに伝えておいてよかったです!」
補佐官の言葉に、胸を躍らせる。自分も正義をなしたのだ。
「さて、これからですね…」
補佐官は思案顔で窓の外を見つめるのだった。




