森の挨拶
少々景色に飽きてきたころ、前方に島影らしきものをとらえた。島というには少々広い。大陸、だろうか。
海ともまた違う広さ、そして何より高さを持つそれを見て、フウライは思わず息をのんだ。
「うわぁ…あんなに広い島があるなんて…。あ、大陸…だっけ…?」
「大陸だな。だいたい半分ぐらい来たあたりだな。だが…大丈夫か。」
ふと思い出し、フウライの尻を心配する。
「うん!まだ大丈夫!」
うっとりと島…大陸を見つめ、これから体験するであろうことに思いをはせた。
次第に大きくなる陸に少しだけ緊張と安どを覚えたころ、桟橋の崩れた砂浜へ降り立った。近くには塗料が剥げ、錆の浮いた漁船が寂し気に横たわっていた。
フウライは珍しい物でも見るように船に近寄ると、その横に木のマークが残っているのを見つけた。オークの木、だろうか。
「木を輸出してたのかな。今はどうしてるんだろ。」
周りを見渡すが、関係ありそうなものは見当たらない。
「オークの森は、今はオークの物だ。」
「今は、ってことは人間の物だったってこと?」
「元はな。」
ドラゴはそれだけ言って、森の方へ目を向けた。
「いつの時代も、人間は縄張りを争っている。
その前は――オークの物だったかもしれん。」
目を伏せ、足元を見つめるフウライ。
「さあ、行くぞ。
オークヘイブンに行くにはオークの森を通るのが近い。」
重くなった空気を振り払うかのようにドラゴが続ける。
オーク。好戦的だし、何よりオークの森のオークは人間と争っている。フウライとしては、売られた喧嘩は買わない主義なので、ちょっとだけ心配だ。
「オークがいるんだよね。」
「我もいるからな。」
決まりである。
森の中は、鳥のさえずりや木々の間から漏れる光で幻想的な光景を映し出していた。
フウライがその美しさを語ろうとしたとき、木々の緑とは違う緑がこちらに近づいてくるのに気が付いた。オーク。軽く武装しているのであろう、槍を持った強面である。
「こんにちは!」
とっさに出た言葉だった。こわばってはいるが、笑顔を作ることもできたと思う。喧嘩はしないんだ、喧嘩は。
槍を握りしめながら、目をドラゴとフウライ、左右に揺らしたオークは
「お、おう、っこんにちは…」
とだけ言うと、そのまま通り過ぎていった。
ドラゴと安どしたフウライはその背中を見送った。




