白き知と、夜明けの潮
海の向こうが白んでくるころ、ふ、とフウライの目が開いた。ドラゴの背ではなく、地面に横たわっているのに気づく。
視線を感じた白ドラゴも大きなあくびをしながらも体を起こした。
「よく寝てたわねぇ。結局、あれ幽霊じゃなかったわよ。よかった、のかしらねぇ。」
「え、そうなんだ!幽霊じゃなくてよかったよ~。もとは人間でも、今は体がないわけだし…」
ふう、と息を吐いて安どする。
「ただね…」
白ドラゴは顔をしかめる。
不穏な空気に、フウライは少しだけ体を固くする。
「潮の流れが尋常じゃないのよ。海の中で、ぐるっと縦に回ってる感じね。幽霊を退治しようと近くへ寄ろうとしたとたん、海の底に持っていかれる。そして――」
我でも、しばらくはあがってこれないわね。
ドラゴでさえしばらく上がってこれない。なら、僕は…?
「ドラゴ、近くにいかなくて、よかった、ね」
白くなった顔で声を震わせる。
太陽が海の上に姿を現したころ、村人たちも目を覚ましたのか、姿を見せる。村長もその中にいるようだったが、こころなしか表情のない、どろりとした目をしているように見えた。
「ご無事だったのですね。よかったです。」
手に報酬の入った袋、だろうか、無造作に手に下げながらこちらに目を向け、口角だけを上げる。
「ええ、残念ながらね。幽霊ではなかったわよ。流木に海藻が絡まった物が月の影響で立ち上がっただけ。人型に見えた、ってだけね。」
「そうでしたか。子供たちももう安心でしょう。」
「よかった。」
「これでもう村は安心だ。」
口々に安どの言葉を口にするが、嬉しそうなのは口元だけだった。口とは裏腹に、鋭い目線を二人に向ける。
「こちらは、お約束の報酬です。本当にありがとうございました。」
差し出された報酬の袋を、フウライはおずおずと受け取る。




