月の下で
既に闇に包まれた海は、月の明りに照らされたさざ波が立つくらいの風に吹かれていた。寝ずの番では腹が減るだろうと、村人が持たせてくれた、ほぐした魚が詰められた固めのパンを持って、フウライは海を見渡す。
「夜の海も素敵だねぇ。」
ふう、とため息をつきつつ、うっとりと言葉を放つ。先ほどまで怖がっていたのがウソのように、ふわりとした表情を浮かべる。
「でも、どうやって寝よう?毛布はもらったけど、ドラゴとつながってるじゃない?」
ドラゴは赤い輪郭を解くと、白く淡い光を放ちながら形を変える。
「それは、こうするのよ。」
ジャララ、と鎖を伸ばす。フウライの目がみるみる丸くなる。
「僕、もうびっくりすることは、少ないだろうって、思ってたけど…」
「フフ。まだまだ知らないことなんて、たくさんあるわよ。さ、毛布を自分に巻いて。」
丸くなった目を思い切り細め、毛布を自分に巻きながら、
「そうなんだ!楽しみだなぁ」
楽しいことが大好きなのである。
毛布に巻かれたフウライを、鎖を回して背負うように、器用に自分につないでいく。
「ふわふわであったかーい。」
毛が生えているのは見てわかるが、冷血動物ではないようだった。
「この体勢で寝れるかな。」
心配とは裏腹に、適度な揺れを感じながらすぐに寝息を立てる。フウライが寝たのを確認すると、白ドラゴはゆっくりと動き始めた。
幽霊が出ると聞いた場所――
浜辺からおよそ5メートルぐらいだろうか。
海を見つめる目が細められ、少しだけ海の中へ進む。しばらく立ち止まると、そのままゆっくりと後退した。
月の作る影が一番短くなった時。
ざざざざっと音を立て、海の一部が盛り上がる。
――幽霊が音を立てるって?
フッと笑いながら、その影を見つめる。影は人型となり立ち上がり、長い髪の毛は濡れて月に照らされ揺れている。
なるほどね――




