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ドラゴとフウライ ― 旅の先にあるもの ―  作者: ナナマル
小島編
18/32

歓待の夜

村の寄り合いに使えるほどの大きさの家が村長の家だ。もうすでに準備ができているようで、酒を酌み交わす7,8人ほどの村人が見えた。さっきの子供たちも混ざっているようだ。


「ようこそ、いらっしゃいました!」

「小さな島だけど、ゆっくりしていってくれ!」

「客人は久しぶりだものね。」

「ほう、本当にドラゴンが一緒とは!」


二人の姿をとらえると、次々に歓迎の言葉を口にする。


「さあ、こちらへ。」


村長に案内されると、フウライはその隣に座り、ドラゴはその横にどかりと座る。漁村にしては豪華な食事を前に、朝から何も食べてないことを思い出す。


「うわぁ、おいしそう!」

手近なごちそうから手を付け、満足そうにほおばる。


「ドラゴも食べなよ!おなかはすかないけど、食べれるんだよね…?」


「うむ、だが手がないのでな。」


「はいっ、どうぞ。」


よく焼けた魚を差し出す。少しだけ引いた体を前に倒し、おずおずと口にする。


「うむ、うまいな。」


味は感じるみたい――フウライは目を細め、いっぱいの笑顔になるのだった。


「酒はいかがかな…?」


村長は地酒であろう、白く濁った液体の入った盃を差し出す。


「あ…、僕、飲めないんです…」


「そうでしたか、では…」


酒を酌み交わしていた若者が、す、と立ち上がる。手には淡い橙色のみずみずしい果物を手にしている。


「じゃあ、これ行ってみろよ!島の奥でしか取れない、珍しい果物なんだ。」


フウライの前にくると、その手を差し出した。ふわり、と果物のいい香りが漂ってくる。フウライが手を伸ばそうとした、その時。


「やめておけ」


低い声で、ドラゴが制止する。


「脂の多い物の後にそれは腹を壊す。」


なるほど、と伸ばそうとした手を引っ込めたフウライは、申し訳なさそうに告げる。


「ありがとう!でも、もうおなかいっぱいだから!」


「そうか!残念だな!」


席に戻ろうとくるりと後ろを振り向きざま


「チッ」


と舌打ちしたのを聞いたのは、ドラゴだけだった。


「ゴホン…」


気を取り直したらしい村長が咳払いをする。


「実は、困っていることがありましてな…この村の浜辺に幽霊が出るようなのです。」


「ひえっ!」

幽霊。フウライは生まれてこの方、そんなものとは縁がなかった。話に聞くのだって怖いから、兄姉にはそんな話をしないで、と頼んでいたぐらいだ。三番目の姉がそんな話をして怖がらせるものだから、父に叱られてたのはいい思い出だ。…だがこれは現実だ。


「ドラゴ、幽霊だって、どうしよう…」

島に降りたことを後悔しながらも、ドラゴに助けを求める。


「落ち着くんだ。人間が住んでいれば死にもする。幽霊なんぞそこら中にいるだろうよ。」


「そうだけど…」


少し落ち着いたフウライを、申し訳なさそうに見ながら村長が続ける。


「怖がらせてしまって申し訳ない。ですが、子供たちもとてもおびえておりましてな。ぜひ、そちらの――」


ドラゴのほうに目をやりつつ


「お強い方に退治していただけないかと。それに、いくらかなら報酬も出せますし。」


報酬、でフウライの目が少しだけ輝く。旅には欠かせないのだ。仕方ない。強く懇願されてしまっては、引き受けるしかないだろう。


「では、我が寝ずの番をしてみるとしようか。」


フウライは寝てろ、というドラゴに少しだけ安心するフウライだった。

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