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明日は楽しい

淡いオレンジが小高い岬の先に座る二人を照らす。


「うわぁーっ!すごく広い!陸地が見えないじゃない!こんなに水がたくさんあるんだねぇ。んん、なんだか口の中がしょっぱい!」


「今更か…明日旅立つのというのに。」


「だって、毎日仕事だったでしょ?海に感動する暇なんてあったっけ?」

むぅ、と口をとがらせた。ドラゴに乗っただけとはいえ、仕事をしていなかったわけではない。ドラゴを不審がる村人の間に入ってとりなし、まとわりついてくる子供たちの気を逸らせたりしたのだ。


「……なんか、ちょっとあれだね。生臭い?っていうか…」

はじめて顔に潮風を浴びたフウライは、海の匂いに顔をしかめる。


「魚や貝、海藻…たくさんの命がある。それはしかたあるまい。」


「そっか、命の匂いなんだねぇ。」


納得したようにうなずくと、ふい、と空に目をやる。


「明日は出発だね!楽しみだなぁ~。海を渡るんだね。僕、ここへ来てから海をちゃんと見たの初めてだけど、渡るのも初めてだよ!」


「我は海なんぞ見慣れておる。この島と本島なんぞ、何度も渡ったものだ。…まぁ大抵は人間に追わて火を吹いたりしたな…」


「え!?火?火を吹くって言った?本当に?」


そこに食いつくのか。だが、見せねばなるまい!


「……当たり前だ!我は火のドラゴンぞ!」


ゴウ、とそれでも控えめに火を空に放つ。周りには熱が広がった。

フウライは目を丸くし、あらん限りの勢いで手を叩く。


「すごい!すごいよ!魔法みたい!」


「魔法がどうかは知らんが、魔法より上だろう。」


ドラゴは胸を反らせて答える。


「焚火するのに便利だねぇ……」


焚火。


ふ、とフウライの顔が少し曇る。


「小さい火は出せるのかな?さっきのだと、焚火しようとして僕まで燃えちゃうかもしれない!」


「我は!自由自在に!火を!扱えるのだ!」


言葉の勢いとは裏腹に、小さな炎をフウ、と放つ。

とたんにフウライの曇りが消え、目にさらなる輝きが宿った。


「ドラゴはなんでもすごいんだねぇ…」


焚火ができれば、魚でも芋でも焼ける。一緒に食べればきっと――


――明日も楽しいだろうな


フフ、と笑うフウライと胸の奥が少し暖かくなったドラゴはしばらく夕日を眺めていた。

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