湖の上の仕事
湖全体が見えたころ、フウライは少し上体を起こし、目だけで周りを眺め、体に吹き付ける風を楽しんでいた。
湖の手前、小振りな泉の上空でゆっくり羽ばたく。
「どうしたの?」
「汚れた容器のまま湖に入れるわけにはいかんからな。この泉は”洗う用”の泉だ」
「そんなのあるんだ!」
井戸で水をくむときってどうしてたっけ…そんなことを考えながら、ジャブジャブと容器を洗うドラゴを待った。
「意外とちゃんとしてるんだねえ。というか、ドラゴはなんでそんなことまで知ってるの?」
「意外ととは何だ。ドラゴンはそういうものだ。知っているのは…教えてもらったからだ。」
わかったような、わからないような、そんな答えにフウライはふうん、と言いながら、それでも特に追及するようなことはなかった。
ゆっくり上昇し、いよいよ湖の上空へ入る。と、フウライは目の端に何かをとらえたのに気づき、そちらへ顔を向けた。フラリ、とドラゴがよろめく。だが、向けた先は静かな湖面があるだけだった。
「どうした、フウライ。」
「あ、ごめん…なんか、いま、キラって光った気がしたんだけど…」
「朝日が当たったんだろう。飛んでいれば光の加減でそんなこともある。」
そんなものか、と思い直し前を向く。
――あれは、青の宝か。我らを見て姿を現したか。
青の宝。ドラゴンが”人間のために”残した宝。自分には関係ない、人間だけに作用する宝だ。どう使うかは人間次第――
湖の中頃、ドラゴはゆっくり羽ばたいて下降し、容器を沈める。いっぱいになったところで上昇し、復路を羽ばたいた。その頃には空の旅が楽しくなったフウライ。
「ねぇ!もっと早く飛べる!?」
すっかり上体を起こし、片手で鎖を持つ勇ましい姿はまるで乗馬だ。
「ああ…まあ…飛べるが…」
往路はあんなにへばりついていたのに…やれやれ、といった調子で少し羽ばたきを強くするのだった。




