水のない村と、働くドラゴ
「ならば、働く間は我が家に泊ればいいだろう。飯も出すし、金も少しなら出せる」
堂々とした体躯、日に焼けた年配の男性が進み出る。この村の村長だろうか。長いこと漁に出た証が外見に出ていた。
「なら、決まりね。…そうね、フウライがおなかをすかせてるの。今食べられるもの、何かないかしら?」
村長は近くの男性に声をかける。男性は急いで家の中に入っていった。
「ええと…容器になる樽はこれね。3つ…ということは大体300リットル入るわね。この村は…大体5,60人といったところかしら。一人大体20リットルくらい使うから、一日1,200リットルくらい必要ね。洗濯やらで海水も使うとしても…そうね、1,500リットルもあれば間に合うかしら。そうすると5回位水をくむことになるわね。半日かかるんだっけ?だとすると我が飛べば片道15分くらいかしら。往復だと30分ちょっとだろうけど、フウライの状態や休憩も考えるとだいたい5時間くらいね。」
畳みかけるような解決策に、村人たちもフウライも目を白黒させる。なんだかよくわからないが、村人たちからはパラパラと拍手まで聞こえる。5時間程度で1日の村全体の水がまかなえるのだ。当然だろう。
そうこうしているうちに、先ほど男性が入っていった家から子供が飛び出してくる。手にはサンドイッチの乗った皿を持っている。
子供はフウライに駆け寄ると、皿を差し出す。フウライは皿を受け取り、ありがとう!とこれまた子供のような顔で笑顔を返す。
ついで…といっては何だが、子供は白ドラゴをちょっとだけ触る。白ドラゴはその様子と、サンドイッチをモグモグするフウライを見比べ――
「なんだか、あんたたちなんか似てるわねぇ。」
とあきれた様子で返すのだった。
「とにかく、樽をつないだのはいいとして、我が持つための持ち手が必要ね。これ、つないだ人がいるんでしょ?なら持ち手も付けるようにしてちょうだい。それと、新しい井戸も必要でしょう。我が探すから、村を案内してくれる?」
村長は次々に近くの村人に声をかける。村人は任務を果たすため走り出す。次に白ドラゴに向き直り、
「こちらへ」
と村の中央へと誘った。村の広場に村民が使う井戸が備えられている。白ドラゴは井戸をのぞき込むと
「ああ、これは呪物が入ってるわね。もうこの井戸はあきらめるのね。埋めて何か別のものにしたほうがいいわ。新しい井戸は…そうね…」
村の外れ、北側の小高い丘のふもとに新しい井戸が掘られることになった。新しい井戸ができるまでの10日間がドラゴたちのバイト期間だ。
日が落ちてきて、一行は村長の家に向かった。




