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4-5

 銃弾が切り払われブレードを抜く。

 剣戟は僅か三合で終わり、分の悪さを悟った俺が後ろに飛ぶも、投げつけられた剣を回避した直後に剣の柄で背中を殴打される。

「ぐっ」という声が漏れ出るが、振り向き様の一撃で反撃を試みるも腕を掴まれた。

 こう簡単に銃を使えない距離を維持され、有利なポジションを取られるのだから転移能力というのは厄介極まりない。

 腕が引き寄せられ、投げられまいと力で対抗するが、それを見越していたかのような脱力で体勢を崩される。

 足をかけられて転ばされるが、逆に勢いをつけて回し蹴りのカウンター。

 当然のように腕で防御されたかと思えば足裏を掴まれ、地に足がついていない状態では足首を捻る力に逆らうこともままならない。

 この状態でさらに追い打ちをかけようとするフィオラに対し、俺は爆薬を取り出し自分諸共吹き飛ばし状況のリセットを狙う。


「停止せよ」


 爆薬は武器を切り替えたフィオラが斬り捨てる。

 起爆装置が反応しなかったことで「そういう命令もできんかよ!」と心の中で吐き捨て、ブレードで相手の首を狙う――と見せかけて近接武器の切り替えで直角に剣の軌道を変えて俺の足を掴む腕を斬る。

 咄嗟に足を離して剣でブレードを防いだフィオラだが、足が止まったその瞬間を見逃さずハンドガンを連射。

 弾丸を全て回避したものの、後ろに下がったフィオラを見て俺はチャンスとばかりに両手にサブマシンガンを装備する。

 距離を維持するために走り出すも、相手が使う武器は雷皇剣。

 弾幕が雷で消し飛ばされ、残弾ゼロで武器を切り替えようとしたところで既に距離は詰まりつつある。

 装備をブレードとハンドガンに切り替えた時には向こうの武器も変わっており、またしても転移剣で攻撃の起点を作られる。

 投げた転移剣を手元に再度呼び出すことで、そちらを向いた俺を背後から斬りつける。

 これはブレードでの防御がギリギリ間に合った。

 しかし続く足払いで体勢を崩される。

 転ばされる前に足を引き、片膝をついた状態で持ち堪えつつハンドガンを突き付けるも、俺の首に当てられた転移剣が決着を告げている。


「弾の入っていない銃で何をするつもりだ?」


 おまけに残弾管理もしくじっていたようだ。

 指摘された通り、フィオラの胸を持ち上げているハンドガンのマガジンは空であり、これでは引き分けと主張することもできない。

 俺は大きな溜息を一つ吐き、ハンドガンとブレードを解除する。


「ふむ、制限付きのハンデ戦ではこんなものか」


 詰まらなさそうに鼻を鳴らすフィオラだが、実際両者に制限がかかっている上に向こうは「宝剣のみ」という条件で戦っている。

 俺も撃ち切り武器やビークル、バトルアーマーは禁止となっているが、向こうに比べれば制限は緩い。

 それでも勝てないのだから、純粋にこいつの戦闘技能の高さが嫌というほどわかる。

 ちなみにマリケス曰く「剣だけで戦ってもリオレスといい勝負をする」とのことであり、接近戦のスペシャリスト相手にも互角に戦えるらしい。

 この二人が戦ったことはまだないらしいが、いつか対戦カードが組まれる日が来るだろう。

 その日を楽しみにしている自分に気が付き、エデンの英霊たちが地下闘技場に集まる理由を理解してしまう。


(俺も大分ここに染まってきている、ということかね)


 息を一つ吐いて立ち上がる。

 体力的にはまだまだ余裕がある。

 折角だから丁度二人とも観客席にいることだし、後回しにして逃げ回られると面倒なことになるだろうから呼び出してやるとしよう。




 翌朝、俺は目を覚ますと体を起こして大きく伸びをする。

 デイデアラとケイの二人に対しては一切の遠慮なく、制限なしの二対一の模擬戦となった。

 当然二人は拒否したのが……今回の対戦カードの元凶であり、お灸を据えるという目的であるため、エデン側も俺のポイント使用しての模擬戦を快く承諾してくれた。

 拒否するためには俺以上のポイントを使用すればいいのだが、札束での殴り合いで第八期のエースが同期に負ける道理はない。

 二人からは散々罵倒されたが、俺は容赦なくバトルアーマーを着込んで蹂躙してやった。

 両手重機関銃と両肩レーザーキャノンでほぼ完封である。

 弾幕でデイデアラを足止めし、レーザーキャノンで防衛陣地を吹き飛ばす。

 ケイが回避できるギリギリを見極め、執拗に追い立ててやったところ白旗はすぐに上がった。

 ところがこれにデイデアラが猛抗議。

 対戦そっちのけで二人が言い争いを開始したので、ミサイルの雨をプレゼント。

 それからしばらく問答無用でミサイルを垂れ流し、ケイが動かなくなったところでデイデアラを集中砲火。

 しかし流石はと言ったところか?

 デイデアラは弾幕を掻い潜り接近戦へと持ち込んだのだ。

 斧の一撃を手の形をした近接武器――アームドアームで受け止め捕獲。

 もう片方の腕に装着した巨大なドリルを近づけて歯医者さんについて話してやったところでデイデアラも降参した。

 戦闘の大まかな流れはこんな感じである。

 この一件で二人が対スコール1で協力関係になっているとの話を聞いたのだが……それを関係改善のためにやったことだとレイメルに誤解された。

 わざとやってるのかと思って口に出してみたところわざとだった。

「もう少し肩の力を抜いた方がよい」とのことだが、それができるキャラではないので難しいところである。

 こうして一人でいる時が一番気が楽なのはどうしたものか?


(今更「ロールプレイでした」は色々問題があるよなぁ)


 特にエデンは「ここまで期待させておいてそれはないだろう」と言われても仕方ない。

 やるべきことはやるから許してくれ、と言えば聞き入れてくれるかもしれないが、そうなると俺がこれまで積み重ねてきた信用を失う恐れがある。


(目的がある以上、頑張らないといけないか)


 俺は気持ちを切り替え、両手で頬を叩くと「よし」と気合を入れなおす。

 向かうは食堂。

 気持ちを切り替えたところで朝は朝食から始まるのである。




「デペスの誘引?」


 食堂でディストピア飯を食っているとアリスが俺に話しかけてきた。

 何の用かと思い、食事を中断して聞いてみると以前俺とフィオラが外で戦った際に大型を釣ってしまった件についてだった。


「今までにデペスの誘引を試みたことはあったのですが、成功した事例が今回くらいなんです」


 考えてみれば襲撃を待つより、好きなタイミングで呼び込んだ方が都合がいいのは明らかである。

 では何故それをしないか?

 答えは「成功した試しがないから」である。

 エデンとしても色々と試みたことはあるのだが、そのほとんどに効果はなく、一度だけやり過ぎた際に大規模な襲撃を引き起こしている。

 結果としてはどうにかなったのだが、犠牲者が出た挙句、エデンまであと僅かというところまで接近を許したらしい。

 それ以降、デペスの誘引をエデンは諦めていたようだが、俺とフィオラが良い感じに大型と中型のみを釣り上げてしまった。

 これをもう一度起こせないものか、と今研究者の間でデータを分析しているとのことである。


「なので何か気になった点などあれば、話していただけると助かります」


 そう言われても意図して行ったものではない上、結構必死で戦っていたので何が要因になったかなどさっぱりわからない。

 むしろこの件では俺よりもフィオラの方が適切ではないか?

 そう思っていたら向こうもこっちに押し付けてきていた。

 ということで俺もお手上げである。

 アリスは残念そうにしていたが、そこはエデンの技術力でどうにかする場面だろう。

 失敗を恐れて何もしない、では前に進むことはでいない。

 何よりもエデンはそうやって進んできたはずだ。

 そのようなことをアリスに言ったところ、彼女は「それもそうだ」と頷いた。


「仮に失敗しても最高戦力クラスが二人いる」


 何とかなるだろうさ、と気軽に言ったところでアリスは笑顔で食堂を後にした。

 それからしばらくして俺とフィオラが揃って司令部に呼び出された。

 理由はデペス誘引実験の協力である。


「やる気があるのは結構だが……よもや余を呼び出すとはな」


「高くつくぞ」とあからさまに不機嫌な様子のフィオラだが、どうやらエデンは俺の名前を使って呼び出しに成功したようだ。

 どうやらあの発言で言質を取られていたらしく、俺が誘引実験に協力的であるということになっていた。


「さて、この借りをどう返してもらおうかな?」


 腕を組んでニヤニヤと笑うフィオラだが、その前に貸しを一つ返してもらう必要がある。


「デイデアラとケイの不正に協力した件でチャラだな」


 フィオラを見ることなくそう言ったところ舌打ちで返事をされた。

 てっきり踏み倒されると思っていたのだが、貸し借りは清算するようだ。

 上手く突けばこいつをコントロールできるのでは?

 一瞬そんな考えが頭を過ったが、そもそも関わりたい相手ではない。

 世の中上手くいかないものだな、と俺は天井を見上げて熱心に語る研究員の話を聞き流した。

 

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