4-1
更新再開です。
少し前に自転車で転倒して右手を痛めたので、しばらく不定期になりますのでご了承ください。
今回のリザルト:八連装マイクロミサイル
画面に映る型番を見た時、俺は一瞬それが何だったか思い出すためにフリーズし、たっぷりと十秒ほどかけて再起動する。
再起動後の第一声は「あったなー、こんな武器」であることからもわかる通り、使用頻度は非常に低い武装である。
どういう訳か、ミサイルというカテゴリの亜種に分類されるこのマイクロミサイルは非常に出現率が低い。
性能自体は悪いものではないのだが、何せ出てこない。
出てきた時にはもう使える時期が過ぎているのが当たり前、というゲーム攻略で名前が挙がることがまずない武装である。
四連、六連、八連の三種が存在しており、Tierも順に8、6、4相当のものとなっている。
ミサイルの手数が増えるのは有難いが、あれだけ苦労して手に入るのがこれだけ、というのは少々納得がいかない。
確認してみると既に四連装マイクロミサイルは入手しており、六連装の方はまだ未入手だった。
「マジかよ」という声が口から漏れる。
一度未入手の武器がどれだけあるかちゃんと調べた方がいいかもしれない。
ちなみにマイクロミサイル自体は決して弱い武器ではない。
通常のミサイルランチャーに比べて発射速度が速く、リロードもスムーズに行うことができる。
その代償として攻撃力や爆発範囲が狭くなっており、大量にばらまくことはできるが、大群を倒すには至らず、足止めが主目的となりがちな武装である。
それ故に戦術的な利用であれば、時に非常に有効な手段となり得るのがマイクロミサイルという武装である。
とは言え、苦労に見合った報酬とは当然言えない。
俺は腕を組んで唸るがそれで何か変わるわけでもない。
ベットから立ち上がると俺は気持ちを切り替える。
廊下を出てまずは食堂に向かう。
一日の始まりは朝食にあり。
脳に栄養を送る必要があるかどうかわからない体だが、それでも楽しみにできる飯があるのは良いことだ。
そんな訳で食堂に到着し、ポイントを使ってきちんとした朝食を摂る。
たとえそれがシリアルでもまともな食事。
味もほんのりとした甘みがあり、ザクザクとした香ばしさと合わさり俺の中では評価が高い。
そこにレーションを添えれば立派な独身飯である。
「相変わらず奇妙な食い方してんな」
そこに現れるのはトレーを持ったマリケス。
こちらはいつものディストピア飯である。
これを「悪くねぇな」と食い続けるのだから、ガチの終末世界を生きた男は舌が違う。
他にも「生きた虫を食うことに比べれば」ととんでもないエピソードを披露する猛者もおり、食事に関しては下手に首を突っ込まない方が良いことを学ばせてもらった。
俺の正面に座るマリケスだが、どうやら今回の戦闘詳細には不参加らしい。
こいつもそうだが、八期の同期とは自然と会話をするくらいの関係になっている。
やはり共に戦うとなると自然と仲は深まるものなのだろう。
だとするとジャミトスが如何に無作法を働いていたか、ということになる。
彼の死は恐ろしいほどに影響なく受け入れられた。
あれだけの実力者でも死ぬ――それ以上に彼に対する興味の無さが俺には少し怖く思える。
ここまで来るとわざとそうなるように仕向けていたように感じてしまう。
だが、それも確かめる術は既になく、彼の死は新たな脅威の出現という形で上書きされてしまった。
(それだけならいいんだが……)
まるで最初からいなかったかのように話題にすら出ない。
最初に死んだ二人の時は少しは話した記憶がある。
もっとも、俺はあの二人とは会話すらほとんどしていなかったので、話せることなど何もなかったのだが……アリスやローガンでさえ、ジャミトスに関する話題は最小限だった。
このことについての疑問が気づけば口から出ていた。
「恐らくだが、ジャミトスは人避けか何かを使ってた可能性があるな」
研究第一とする彼ならば、人との付き合いなど時間の浪費と切って捨てており、何かしらの術を使っていた可能性があるとマリケスは答える。
魔法に関する知識はまだまだである俺はその答えに「あー」と納得したように頷いた。
こうなると俺もこれ以上の詮索に意味があるとは思えなくなってくる。
まだ少し引っかかる部分はあるが、何かあるようならばリオレスの方で見つけているだろう。
俺はこの話を切り上げ、今日の戦闘詳細についてマリケスに尋ねる。
不参加とのことだが、来ない連中は何をしているのかふと気になったのだ。
するとマリケスは地下闘技場に行くとのことである。
何か気になる対戦カードでもあるのか、と端末を取り出し確認しようとしたところで正解を聞かされる。
「デイデアラとケイが決闘だ」
「マジか?」
地下闘技場で決闘云々の話は聞いていたが、まさか今日とは思わなかった。
結局、俺も本日の戦闘詳細を欠席することにして地下闘技場へ向かっていた。
廊下を歩いていると同じく地下闘技場へと向かっている女性陣と遭遇。
いつものメンバーかと思いきや、その中にエルメシアの姿があり、こちらを見るなり顔を顰めているのか口がへの字になっている。
「あなたもですか、スコール1」
行先が同じであることを確認してくるレイメルに俺は「ああ」とだけ返して頷く。
するとケイが近づいてくるなり両手を差し出し「甘いもの寄越せ」と無言で圧力をかけてくる。
反射的に胸ポケットに手を動かしかけたが、そう言えばケイは間食禁止を言い渡されていたはずである。
「甘やかすのは止めてくださいまし」
そう言ってケイを後ろから引っ張るアネストレイヤ。
俺もわかっていると頷くが、周りは疑いの眼差しである。
どうやらここにいる面々にも子供に甘いと思われているようだ。
それはそれとしてレイメルからレーションを強請られた。
ポイントを使わず食える甘いものはそんなに美味いのか?
(レイメルはポイントを貯める必要があるからわかるが……)
他の連中もしっかりご相伴に預かっている。
アーシダは甘いものがあまり好きではないのか遠慮していたが、食べることができないケイが俺の足をゲシゲシ蹴ってくる。
本当にお子様みたいな動きをする奴である。
「勝算はあるのか?」
誤魔化すわけではないが、デイデアラ相手に勝つ見込みがあるのかを尋ねるとケイはその答えとばかりに鼻で笑った。
どうやら自信満々のようだが、相手はあの蛮族王である。
俺はまだ戦ったことはないが、負けたマリケスが「あれは天然ものだ」と滅茶苦茶不機嫌そうに言っていたのを覚えている。
この自信が何処から来るのかはわからないが、お手並み拝見といこう。
そんな訳で地下闘技場の観客席。
周囲には第八期の面々が結構な人数集まっている。
いないのはリオレスとクドニクくらいではなかろうか?
リオレスは異界渡りの件で何やら調べものをしているのだろうが、クドニクは戦闘詳細を見に行っていると思われる。
本当に真面目な人物である。
だからこそまとめることができているのだろうな、と合流したクドニクチームに挨拶する。
そこにしれっと混じっているマリケスが片手を上げてやって来る。
「どう見る?」
女性陣から席を一つ開けて座る俺の近くに来たマリケスに尋ねる。
「順当にいけばデイデアラ」
即答するマリケスだが、そこに「異議あり」とばかりに横槍が入る。
「あのお嬢ちゃんが手の内を全部見せていれば、そうなるでしょうね」
まるでそうではないかのようなエルメシアの物言いに「何かあるのか?」と食いつくマリケス。
だが、当のエルメシアは「さあ?」と肩をすくめるだけ。
ネタばらしはしない主義なのか?
それともただ単に含みのある物言いをしただけなのか判断がつかず、俺とマリケスが顔を見合わせる。
このチョロい腐魔女は時折このように人を惑わすような発言をする傾向にある。
最初はただの逆張り好きかと思ったが、それが正しいこともあったりで、無視できないというのが周りの評価。
だが俺はこう思った。
「どこぞのネット民みてーだな」
それ以来、彼女を見る目が少しだけ優しくなった気がする。
エルメシアが俺と会う度に嫌そうな顔をするようになったのも、多分これが原因なのではなかろうか?
そうこうしていると時間通りに両者が闘技場へと現れた。
中央で二人が対峙すると見上げるケイと見下ろすデイデアラの構図が出来上がる。
それが気に食わないのか地形操作で見下ろす側に回るケイ。
すると突如なるブザー。
試合開始前の能力使用でケイが減点を食らった。
今回の対戦方式では時間制限があるため、時間内に決着がつかなければ両者の点数で勝敗が決まる。
いきなり減点を食らったケイを見て「順当にいきそうだな」とエルメシアを煽るマリケス。
それに反応するのが沸点の低い魔女。
ヒートアップしたところで「もうお前らで対戦カード組めよ」という周りの声に二人は黙る。
そのタイミングで試合開始。
先手必勝とばかりに速攻を選択したデイデアラに対し、地形操作で対応するケイ。
床が形を変えてデイデアラを阻む。
しかしそれを斧で破壊して真っすぐに進むデイデアラ。
迫るデイデアラに対し、ケイは地形操作で自らを後方へと射出するように飛び退いた。
直後、デイデアラを包囲するように無数の棒状になった床が襲い掛かる。
それを振り向きもせずに回避しながらケイとの距離を詰めるデイデアラ。
明らかに先読みで済ませられるレベルを超えている。
思わず「うわ、キモ」と出かかった声を飲み込み、俺の回避能力も傍から見ればこんな感じなのかと少しショックを受ける。
あっという間に距離を詰めたデイデアラだが、ドーム状に包み込まれれば足を止めざるを得ない。
だが、その足止めも十秒と経たず解除される。
破壊されたドームが散弾となってケイを襲い、それを僅かな時間で作成した防御陣地が全て受け止める。
ケイの迎撃態勢は整った。
さあ、この戦いはここからが本番だ。




