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3-11

 俺の前に出現したのは12体の英雄。

 フィオラが出せる人型は二十万の軍勢と十二の英雄。

「まずは英雄を切ってきたか」と俺はバイクを走らせる。

 小手調べとしてまずは英雄を出してくると予想していたので、その対処法も既に考えている。

 ご丁寧にもフィオラは十二の英雄全てを紹介しており、事前情報に偽りがないのであれば、俺はこいつらを完封できるはずだ。

 動き出した英雄たちだが、予想通りに音速を超えるバイクの動きについてこれるはずもなく、スナイパーライフルによる狙撃は防がれはしたものの、その衝撃を殺しきることはできずダメージを与えることができた。

 続くロケットランチャーが避けられたところ、向こうもこちらの情報でアップデートされているのは間違いない。

 こいつらを相手に長々と時間を使うつもりはないのでさっさと決めに行く。

 俺はバイクを蹴って飛び上がると同時にビークルを解除。

 慣性を利用して空中を滑りながらバトルアーマーへと換装し、両手両肩ミサイルによる大量の弾幕を形成する。

 着地と同時に撃ち切ったミサイルランチャーをレールガンとレールキャノンへ切り替える。

 誘導するミサイルから逃げるのであれば、その先にレールガンを撃ち込み、防御して耐えるのならばレールキャノンで追撃する。

 倒した英雄は八体。

 体勢を立て直されたのでこれ以上は撃たない。

 距離はまだ十分にある。

 残る近接戦闘に特化した英雄では俺を攻撃することはできない。

 速度はあっても音速を超える速度に追いつけるはずもなく、こうして空を飛ぶ相手にも対応できる者が限られる。

 当然、俺はそいつらを狙い撃ちにして潰しており、悠々とジェットパックに換装して空からの狙撃で追加で一体を倒す。

 射程こそ実弾に劣るが、弾速は回避不能レベルのレーザー兵器。

 もう一体に狙いを定めたところで残りが消えた。

 どうやら小手調べは終了のようだ。

 俺に向かって投げつけられた剣が迫り、突如として現れた手がそのグリップを握る。

 剣を握るはフィオラ・アルフメルデ。

 これは彼女の転移能力ではなく、その手にある「転移剣ガルダッシュ」の能力である。

 説明文には「持ち主は何処にいてもその剣を手に取ることができる」とあるが、それはどちらでも転移させることができる、という意味であり、移動手段や回避手段と使い道が幾らでも思いつく便利な剣だ。

 本体のお出ましに俺はジェットパックからバトルアーマーへと換装。

 正直言うと固定APは心許ないが、全損しても本体は無事、というそのまま死なない仕様通りであれば、どんな攻撃も一撃は耐えるはずである。

 俺が対フィオラで最も警戒しなければならないのは、先ほどの英雄でもなければ二十万の軍勢でもない。

 六宝剣と七星具と呼ばれる十三の武具である。

 その中でも一際異彩を放つのが「時砕剣エルナダ」と「事象転変ネーヴァ」があるのだが……名前からして既にヤバイ。

 日本人なら間違いなくそう思うだろう。

 実際、俺もこの二つが揃ったことである予想をしている。


「こいつ絶対時を壊して自分の死をなかったことにするだろ」


 この件については何故か誰も気づいていない。

 恐らくだが、これは翻訳内容の違いだと俺は思っている。

「名は体を表す」というように持つ能力に相応しい名前へと変換されているのだと思われる。

 日本語に翻訳されるとネタバレになるのだからオタク文化は恐ろしい。

 英語だったら絶対に「タイムソード」とかそんな感じの名前になっている。

 ともあれ、そんな奴を一体どうやって倒すのか?

 恐らくだが、この手のものは一回使うと再使用に時間がかかる。

 俺もリロード不可の使い切り武器を使うとチャージまで時間を必要とする。


(でも殺したら敗北なんだよな。一度殺して反則負けを認める?)


 最後に余計なルールを付け加えられた所為で落としどころが見つからなくなった。

 滅殺ミサイルで力を見せつけての両者KOが一番丸く収まると思っていたが……ままならないものである。


「やはり我が英雄たちでも貴様相手は荷が重いか」


「わかっているなら最初からお前自身が来ることだ」


「様式美もわからんのか貴様は」と転移剣で肩を叩くフィオラ。

 そう言ってフィオラが取り出したのはハルバード。

 合わせるように俺も馬鹿でかいハルバードを取り出す。


(初手は「超越」か……)


 フィオラの具現化には明確なルールがある。

 基本的には一度に出せる宝剣と星具は一つのみ。

 しかし特定の手順を踏むことにより、二つ以上の武具を具現化できる。

 これら全てを詳細に公開しているのだからうぬぼれているのか?

 それとも強さの表れか?

 はたまたただの性癖か?

 最後の一文が本当に酷いが、こいつに関しては「ない」と言い切れないのが悪い。

 問題のそのルールだが、わかりやすく言えば「宝剣と星具を交互に一巡するように使用すること」である。

 つまり、使用履歴さえわかっていれば、次に何を出すのかをある程度予測できるのだ。

 但し、ブラフなど幾らでも介入させることができる上、先ほどでてきた「事象転換」が恐らくここで悪さをする。

 六宝剣と七星具、この全てを出し切った状態がこいつの最強形態であり、それぞれが持つ固有能力をフル活用できる完全体である。

 今、フィオラが手にしている「超越斧槍ベンガ」の能力はシンプルにして強力な身体強化である。

 俺との距離を一瞬で詰めるくらいにまで強化された一撃をハルバードで受け止めるも、重量差など関係ないとばかりに吹き飛ばされる。


(バトルアーマーが力負けするとかふざけんな!)


 反撃とばかりにハルバードを振い、迫るフィオラを迎撃するも余裕を持って受け止められる。

 だがそれは悪手である、と言わんばかりに両肩のリニアキャノンが火を噴いた。

 直撃――そう思ったのも束の間、紫煙の中から見えたのは無傷のフィオラ。


「そう焦るな」


 笑うフィオラの手には剣があり、不可視の障壁によって防御されたのを理解する。


(障壁剣……リニアキャノンでは無理か!)


 レールキャノンにすべきだったかと悔やんだが、それだと発射までの時間で別の対策をされていたか、と考え直す。

 再び弾き飛ばされたのでハルバードから対艦刀へと武器を切り替える。

 ハルバードと違いこちらは刃の部分がエネルギーそのものとなっている。

 物理的に受け止めることは不可能な一撃はいとも簡単に回避される。

 問題はその手段である。

 背後からの一撃をバトルアーマーのシールドで受ける。

 後ろに飛んだかと思えば転移剣で背後に回っての攻撃。


(宝剣からの宝剣でリセットしたか)


 得物の大きさの所為で大振りにならざるを得ないとは言え、こうも隙を突かれるのであればリスクを承知で遠距離戦へと切り替えるべきか悩んでしまう。

 取り敢えず後ろを取られたままというのは都合が悪い。

 振り向き様に対艦刀の一撃を再び転移で回避されるも、剣のある場所に移動するのがわかっているなら対処は可能。

 転移先に置くように放つパイルバンカー。

 それを迎え撃つ超越斧槍だが、流石にこの衝撃力を殺しきることはできない。

 爆発によって宙に打ち上げられたフィオラへの追撃に発射準備を終えたレールキャノンを向ける。

 しかしそれを「待っていた」とばかり笑みを浮かべるのは「吸命鏡」という小さな鏡を構えるフィオナ。

「クソが!」と悪態を吐いて放たれたレールキャノンはものの見事に鏡に吸収され、続く事象転換で弾丸が俺の下へと帰って来る。

 それを何とか対艦刀で受け流すが、その一撃で大きく破損。

 武器は壊れると復元までに時間がかかる。

 思わず舌打ちをしてしまったが、すぐに冷静に戻って武器チェンジ。

 星具→星具なのでリセットはされたが、吸収したエネルギーは鏡が消えても持続させることが可能なのか、と情報を更新する。

 手鏡サイズの鏡の中に収まらなければ吸収できない、という制限はあるものの、あの吸命鏡があるから遠距離はやり辛い。

 予想していたが、実際に戦うと状況に応じて武器を変更してくるのが厄介極まりない。

 自分のことを棚に上げて相手を「チートくせぇ」と心の中で非難する。


(とは言え、ここまではまだ想定の範囲内だ)


 やはりバトルアーマーでは俺の知らない手札を切らせるのが精々。

 それも暴いたのが一枚だけとは何とも情けない限りである。

 バトルアーマーからジェットパックへと換装した俺は大きく息を一つ吐く。


「その鎧はもういいのか?」


 そこへ地面へと着地したフィオラが肩にかかる髪を跳ね除け、余裕を見せつけるように踏ん反り返りながら尋ねてくる。


「ああ、こちらも小手調べは終了だ」


 そのセリフで向こうの不敵な笑みが消え去った。


「戦ってわかったよ。やはりお前はまともに戦うべき相手じゃない」


 俺の評価をどう捉えたのか?

 当然だとばかりに胸を張る姿を見るとポジティブな解釈をしているのだろう。

 だが、これは俺からすれば「もうお前とはまともに戦いませんよ」という宣言でしかない。

 ジェットパックを使用した大きなバックジャンプ。

 その手にはレーザーライフルを構えており、ここからは射撃戦となる予感を臭わせる。

 不敵な笑みを浮かべるフィオラは超越、転移、吸命の順に展開。

 三つ同時展開に向こうもここからが本番だと思ったのだろう。

 しかし俺はジェットパックを解除してバイクを出すと空中で跨り、地面に着地するなりその場から全力で遥か彼方へと走り出した。

 呆気にとられるフィオラを置いて俺は走り続ける。


「待たんか貴様!」


 超越の身体強化を使い、全力で投げられた転移剣の速度はこのバイクにも迫る。

 流石にそこまでいくとは予想外だったが、それでも問題はないとスナイパーライフルを取り出す。

 何故ならば、俺が狙うのはフィオラではなく転移剣。

 スナイパーライフルの弾丸に撃ち抜かれた転移剣がその軌道を変え、上空へと弾き飛ばされる。

 続く第二射が転移してきた逆さまのフィオラを襲うが……これは超越斧槍で止められた。

 俺とフィオラを比較してわかったことは幾つもある。

 その中でも俺が注視したのが持続可能な速度である。

 宝剣と星具の性能を見て、まともに戦っては分が悪いと判断した俺は、この持続可能速度の差を生かす戦術を真っ先に考えた。

 転移剣は確かに厄介だ。

 攻撃の起点として使われた場合、先程の戦いを見る通り、対応が非常に難しい。

 だが、それを移動手段として限定できるならば?

 さらにその移動手段を妨害するならば?


「フィオラ・アルフメルデ、お前は俺が距離を取った意味を履き違えた」


 これが勝利宣言であるとばかりに誰もいない荒野にて、バイクで疾走する俺はそう呟く。

 パターンは幾つも想定している。


(切り札の切り時だぞ、最高戦力?)


 間違えた時はお前の負けだが……恐らくは適切な切り方をしてくるに違いない。

 それだけの戦闘経験を積んだ相手であることは間違いないのだ。

 俺は再び投げられた転移剣を狙撃する。

 さて、このやり取りはあと何回できるかな?

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