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3-2

 一日のサイクルが固定化しつつある中、俺は週に一度の間隔でディストピア飯から解放される日を設けることにした。

 海上自衛隊が週一でカレーを食べるように俺もそれに倣うことにしたのだ。

 ある意味ではチートデイとも言えるので、食べる時はしっかりと食べるようにしている。

 ということで食堂で現在俺は優雅にちょっと贅沢な食事を堪能している。

「セクハラのしすぎてポイントがマイナスに突入する」というエデン史上類を見ない珍事を起こしたデイデアラが物欲しそうにこちらを見ているが当然無視。

 俺はこの時間を大切にする。

 そうやって食事を楽しんでいたところ、俺にだけわかる合図が送られてくる。

 俺は溜息を吐くと昼食の乗ったプレートを手に移動を開始。

 食堂から厨房へと移動し、そこから廊下に出るタイミングで大きな声が聞こえてくる。


「ようやく会えたな……っておらんではないかー!」


 それに続く何かを殴る音と「申し訳ありません!」と嬉しそうに謝罪している誰かの声が聞こえてくる。

 この光景も既に見慣れたものであり、俺に決闘挑むべくフィオラがこうして突撃してくるのだが、事前に察知してくれる協力者のお陰で事なきを得ている。


「助かった」


 それだけ言うとレーションを取り出して厨房に置いておく。

 これは協力者に対する報酬である。

 中身を確認していないが、全部いける口なので問題はない。

 エデンの最高戦力フィオラ・アルフメルデへの対応は第八期一名を除き「スコール1に任せる」で一致した。

 あのデイデアラをして「絶対にやり合いたくない」と言わせた相手である。

 リオレスは黙って姿をくらまし、エルメシアは「絶対嫌」と拒絶の姿勢を貫いた。

 女性陣は「セクハラされるから勘弁して」と声を揃えて首を横に振り、ケイに至っては凄く嫌そうな顔をしたかと思えば、無言で地形を操作して何処かへ消え去った。

 そういうわけで孤軍奮闘することになったわけだが……そこで何気なく天井を見上げながら「協力者が必要だな」と呟いたところ、スッと俺が見ていた部分が動いたかと思えば忍者が現れた。

 偶然俺が見ていたところに忍んでいたらしく、何を勘違いしたのか、この呟きを協力要請と捉えて出てきた彼の名は「イズマ・シノビ」といい「シノビの一族であり、忍者などいう名ではない」とのことである。

「忍者やないかい」というツッコミはさておき、この隠密特化型の英霊であるイズマ――あの最高戦力相手にも察知されることなく忍ぶことができるほどの実力者だった。

 結果、フィオラが近づけば彼が教えてくれることになっており、その報酬としてレーションを渡している、というわけである。

 また、エデンに話を通したことでポイントも得ることができており、イズマとの関係は良好なものとなっている。

 そんなわけで自室へと昼食を運んでの食事となる。

 これもまた、不本意ながら見慣れた光景になりつつある中、いつも通りに唐突なアラートがエデン内部に鳴り響く。

 急いで残りの昼食を口に入れ、咀嚼しながら廊下を走る。

「全く嫌なタイミングだ」と急ぐ中、食堂から出てきたリオレスもまた俺と同じようにサンドイッチのようなものを手に口をもごもごと動かしている。


「……後でそれの感想を聞かせてくれ」


 先に飲み込んだ俺がリオレスの手にしたものを指差す。

 小さく頷いたリオレスと廊下を走り、作戦室へと辿り着いた俺たちは中へと入る。


「中々悪くない。お勧めはできる、と言ったところか」


 手にした食べ物の評価を済ませたリオレスが残りの一つを口に放り込む。

 最近わかったことだが、俺とリオレスは味の好みが似ており、互いに薦めたものは大体がアタリだったことから、時折このように情報交換などやっていたりする。

 普段はディストピア飯だが、蓄積されたデータや歴史は長いこのエデン。

 探せば見たこともないような料理が多数存在する。

 規格外領域へと到達している俺たちはポイントをしっかりと稼いでおり、サービス一覧にないものであってもデータさえあれば再現してくれる。

 とは言え、データはあっても再現するためのものがなければ当然無理だ。

 職員が言うには「兎にも角にも土地が足りません」とのことである。

 なのでエデンはデペスの襲撃に大きな間が空く時を狙って攻勢準備中だったのだが……ここでジョニーという低コストの汚染除去手段を持つ英霊が現れる。

 結果、エデンは方針を一部変更。

 攻勢に合わせて人類の生存圏を広げることを考えた。

 詳細はまだ発表されていないが、同期としてはジョニーが過労死しないことを祈るばかりである。

 ともあれ、今は襲撃への対処が最優先。

 どんな状況かとまずはジェスタの様子を見る。

 いつものように笑っていないので中規模以上は確実だろう。

 そう思っていたところ、予想通り今回の襲撃規模は中規模に該当するらしい。


「前回の襲撃はどうやら今回の溢れた分だった可能性がある」


 ジェスタが言うには前回は今回の何処かから溢れた一部であり、それがなければ大規模襲撃になっていたとのことである。


「数は凡そ180万、と言ったところだろう。前回分と合わせれば二百越えで大規模になる」


 稀にあることだ、とジェスタは過去のデータを参照しながら敵の情報をモニターに映し出す。


「中型の虫かよ……」


 映し出された敵の姿にデイデアラがぼやく。

 中型の昆虫型デペスであるタイプD――見た目はサソリなのだが、バッタのような後ろ脚を持ち、飛び跳ねる上に尻尾から出てくるのがまさかの蜘蛛糸。

 これがまあ強い粘着性があって厄介なのだ。

 半裸蛮族から全裸蛮族へと昇格した記憶が新しいデイデアラが嫌な顔をする気持ちもよくわかる。

 俺としてもシリーズ通して蜘蛛の糸には大変嫌な想いをした。

 破壊可能オブジェクトなら貫通してくるバグのような挙動で何度リトライしたことか、と過去作で舐めた辛酸を想起する。

 余談だが、前回の襲撃でこの蜘蛛の糸を使ってセクハラを試みたことで、デイデアラのポイントはマイナスに突入したそうだ。

 未遂とは言え、フレンドリーファイア扱いとなったことでペナルティとして厳重注意も食らっていたが、全裸で女性陣の前に出たことは「致し方ない戦闘の結果」となっていた。

 今回の襲撃ではこいつが十体以上確認されており、それ以外にも獣の中型であるタイプD――八本足の馬っぽい何かもおり、全体を見ると獣と虫、機械の混合編成になっている。

 敵の数も大規模に近いとあって、東以外は全て戦場となる。

 なので今回はほぼ全力での迎撃。

 振り分けとしては北が第七期と八期、南が第五期の単独、西がそれ以外となっている。


「事前情報はこんなものか……」


 そうは言っているがジェスタは言葉を濁している。

 何か言いにくいことでもあるのかとジェスタを見ると目が合った。

 肩を落とし、溜息を吐くが君は何を勝手に納得したような顔をしているのか?

 いい加減このロールプレイ止めようかなと思わなくもないが、一ゲーマーとして、シリーズのファンとしてキャラの設定を壊すのは避けたい。


「スコール1。気をしっかりもって見てくれ」


 ジェスタがそう言って映し出した映像には宙に浮かぶドローン空母が三機。

 だが、今回は前もって知らされていた。

 本当に直前だが知らされていたので備えることができた。

 結果は何も起こらない。

 俺は大きく深呼吸して「大丈夫だ」と周りに聞こえるように口に出す。

 周囲からも安堵の息が漏れるのを感じ、俺ももう一度深呼吸をする。

 それを確認したジェスタも安心したらしく、一つ手を叩いて注目を戻してから作戦の説明を再開させる。


「今回はお前たちに最も敵が多い箇所を担当してもらう。これまでに練った戦術を披露してくれ」


 第八期がそういう名目で作戦室を借りていることを知っているジェスタは期待を込めて言ったのだろうが、残念なことにそれはまだ完成していなっていなかった気がする。


「できれば実戦の前に検証をしたかったのだが……」


 ところが溜息を吐くクドニクを見るに一応形にはなっているようだ。

 それなら大丈夫か、と俺も一安心。


「要はお主になる」


 任せてよいか、というクドニクの問いに「任せろ」とばかりに無言で親指を立てるケイ。

 陣地を動かすことで兵と見立てた用兵術――それがクドニクが出した結論の一つ。

 他にも色々と考えているらしいが、今回はこれを試すと決めたらしく、各々の配置を決めていく。

 第八期にとって、これまでで最も過酷な戦いとなることが予想される今回の襲撃。

 数を減らせど結束はできた。

 その成果は如何なるものか?

 答えはこの戦いで明らかとなる。


「――以上だ。質問はあるか?」


 クドニクはそう言って俺たちを見渡した。

 誰からも上がらぬ声にクドニクはジェスタへと向き直り頷いた。


「出撃の時間だ。エデンの命運を君たちに託す」


 そう言ってジェスタは敬礼をして俺たちを見送る。

 俺の役割は遊撃である。

 敵の数は多い。

 さあ、存分に暴れさせてもらうとしよう。 

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― 新着の感想 ―
 まぁ敵側も使える物は何でも使え精神なんだろう事は判るけど、その内乗っ取られそうな気も。それともスコール1対策かな?後、合法脱衣ロリに折檻される事望む猛者は誰なのか気になるけど、不完全燃焼ほっとらかし…
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