3-1
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
大掃除で頑張り過ぎて正月三が日を寝て過ごすことに・・・掃除は普段からこまめするべきだとわかっているが中々できない。
あれから一ヵ月が経過した。
発生した襲撃は二回。
どちらも小規模であったものの極端に少ないというわけではなく、相応の戦闘だったとだけ言っておく。
その内の一回は武器の貸し出しをしていたのだが……やはり武器スロット4つをTier1で埋めるとなれば相応の火力になる。
ただバトルアーマーを入手した今となっては「武器スロット4つをフル活用する」という戦術は単独で可能であり、俺としては既にやる理由がなくなってしまっていることに気が付いた。
とは言え、ケイの防御陣地に引きこもる場合においてはその限りではない。
有体に言えば四人ならば四方向を同時に見ることができるのだ。
これにより全方位がカバーできるようになり、防御陣地の損耗を抑えることに繋がる。
エデンの方でもあのちびっ子が再評価されているらしく、アリスが言うには「もしかしたら今後の戦略で大きな役割を持つかもしれません」と本気で期待されていることを教えてくれた。
さて、問題となっていた俺のリソースなのだが……全く変化がなくてわからない。
既に俺の中で「これもうただの杞憂なんじゃないかな?」と思うくらいには本当に何もない。
もしかしたら俺ではなくスコール1の方で消費しているのではないか?
そんな考えも思い浮かんだのだが……そうなるとこちらとしては気づきようがない。
そもそもゲームのキャラクターなのである。
設定はあれど、そこに人格が存在しているはずがない。
だが、一度動くところを見てしまっているのだ。
彼に影響があることを無視して良いものか?
こう考えたことはあるのだが、それも可能性でしかなく、断定できる要素が何もない。
結局、結論はいつもの「さっぱりわからない」である。
よって、この件は影響が出るまでは考えないことにした。
出てからでは遅い可能性もあるが、まったくわからないのだからどうしようもない。
最後にもう一点、この一ヵ月の変化で絶対に外せないものがこれだ。
第八期から新たに二名が戦線から離脱した。
ジョニーとレダのコンビである。
しかもこの離脱はエデン側からの働きかけによるものであり、それが納得の理由だったのだから引き留めることもできない。
結果から先に言えばジョニーが救世主となった。
何を言っているのかわからないだろうから順を追って説明しよう。
ジョニーが持っていた「リサイクルデバイス」なのだが……これによりデペスの汚染が消失することが確認された。
確かに理屈で考えるならば「そうなってもおかしくはないな」と思えるのだが、エデンの職員は英霊の戦闘力ばかりに目が行きがちになるらしく、リサイクルデバイスを弾薬生成ばかりに使うジョニーを見て、そのような使い道に気が付くのに時間がかかったそうだ。
今も何処かでジョニーは汚染度が高く、廃棄せざるを得なかった資材をリサイクルしていることだろう。
本人は「俺っちは技術屋なんだけど?」と不満たらたらだったが、頼られると断れない性格らしく、朝から晩まで働く日々を送っているそうだ。
ちなみにレダはと言うとエデンで警官になっていた。
継続戦闘能力がジョニー頼みだったことで、これ以上の戦闘は不可能と判断したらしく、今はエデン内部で緊急時の戦闘員兼治安維持要員として働いている。
「アタイにはこれくらいが丁度いい」と言っていたが、少し悔しそうな表情を見せていたのを覚えている。
これがこの一ヵ月の出来事である。
(いや、あと一つあったな……)
最高戦力であるフィオラ・アルフメルデが俺に接触しようとしてエデンから妨害されていることが判明した。
何かと問題の多い彼女は強者を好む。
その食指が俺に向かうのも自明の理であり、エデンからは無駄な争いや揉め事は何としても阻止すると伝えられている。
この信用のなさで最高戦力である。
ある意味では信用されているのだろうが……それが「絶対問題起こすだろ、こいつ」というのだから職員らの心労も察せられる。
こちらとしても自分からトラブルに巻き込まれる気はないので、それとなく避けるようにはしているが、このエデンという閉鎖空間の中でいつまで回避できるかはわからない。
ローガン曰く「確実に君と戦うことを望むだろう」とのことである。
エデンも彼女の保有ポイントから無茶を通されることはわかっており、この状況を戦々恐々として見守っているそうだ。
さて、そんなことが裏で起こっていることを知っているのかいないのか?
数を減らした第八期はと言うと……予想外の方向でまとまっていた。
「遊撃を用いて防衛陣地へと誘導。中にいる者たちの火力で処理をするのが確実だ」
「小規模ならそれでいいわよ。でも中型相手だとお嬢ちゃんの陣地が維持できない」
作戦室を貸し切って議論しているのは、クドニクとエルメシアという一ヵ月前の俺ならば信じることはない組み合わせ。
「そもそもエデンの防衛が前提だろ? 広がる必要がある」
両端の負担が大きすぎるとマリケスが意見を出す。
「そっちは俺とリオレスしか無理だわなぁ」
笑うデイデアラに「俺もできるが?」という視線が幾つも刺さる。
この話には何故か俺が入っていない。
ここにいるのに話には入れない。
いじめではなく、どういうわけか「俺を除く第八期対俺」という構図が出来上がっているのだ。
ただ例外として、ジャミトスだけはこの中に入っていない。
仲間外れにしているのではなく、ジャミトスは個人の研究を優先したのだ。
彼が孤立を選択したことに関しては誰も何も言わなかったことから、遅かれ早かれこうなっていたと思われる。
それはさておき、一応この構図に至ったことには理由があり、明らかに俺一人の戦果が突出するようになってからというもの、対抗意識を燃やした一部が他の面子に呼びかけところ、こうして集まっては戦術を考えるようになった、というのが発端である。
では何故ここに俺がいるのか?
先ほど言った通り、俺はフィオラを避けている……というより逃げ回っている。
なので第八期がポイントを使って作戦室を貸し切りにしている中、無関係の者が入って来ることができない以上、ここは俺にとって最も安全な場所の一つになっている。
これにはポイントに関するルールが関係しており、例えば「ポイントを使って購入した物品を他者がポイントで横取りすることはできない」というように購入したものやサービスを捻じ曲げることはできないという条項がある。
ポイント使って利用中の部屋に関係のない者が入ることが規則に抵触するため、今この場所は安全圏になる、ということだ。
一度部屋の前で待ち構えられたことはあったが、出入り口は他にもあるのでそちらから逃げることで事なきを得ている。
それ以降はフィオラも待ち伏せを諦めており、作戦室での第八期会議は今日も俺の逃げ場所として機能している。
なお、事情を理解しているエデン側は格安で作戦室の貸出に応じているらしい。
「まとめて倒せるのであればそれでいい。だがエルメシア、お前が一度に倒せる数は精々五千。第七期のような広範囲殲滅の真似は勝算が薄い」
承諾はできんな、と否定するクドニクにエルメシアが不機嫌な顔をしている。
第八期の広範囲火力と言えばエルメシアだが、彼女の能力では第七期の真似は無理であるのは明白であり、本人もそれがわかっているのかそれ以上は何も言わない。
「各個撃破に任せるには戦力バランスに偏りがありすぎる。まとめて倒すにも火力役が不足している」
現状の認識をすり合わせるように呟くウィーネリフェルト。
こうして聞いてみると打てる手が少ないように聞こえる。
「やっぱ火力。火力こそが正義なんよなぁ」と心の中で頷く俺に遠慮なく甘いレーション要求してくるちびっ子。
相変わらずマイペースな人物である。
マリケスからは「ガキを甘やかすな」という視線を投げかけられるが、断る理由が特にないので仕方ない。
そしてちゃっかりご相伴に預かるレイメル。
そんな甘党レイメルが俺に尋ねる。
「スコール1。何か良い案はありませんか?」
俺に対抗する案を俺に出せとか正気だろうか?
思わず口に出かかった言葉を飲み込み、いつものポーカーフェイスで考える素振りを見せる。
(ぶっちゃけ俺も良い手が思い浮かばないんだよな。もういっそのこと逆に考えてみるか?)
ではどこを逆に考えるのか?
そもそも火力が足りていないのだ。
ならば火力に特化させる――そう考えたところで閃いた。
「ケイ。防御陣地はどこまで広げることができる?」
俺の発言に意図を測りかねてか首を傾げるケイ。
「儂も考えたがそれはダメだ。陣地は広げれば広げるほど脆くなる。それでは守りが不十分だ」
クドニクがダメ出ししてくるが、俺はそれを首を横に振って否定する。
「防御に使うのではなく攻撃に用いる」
クドニクがどのような案と思って否定したかは興味があるが、誰も「そういうことか!」とか言わないのでここは説明を優先する。
「防衛陣地を敵の誘導に使いキルゾーンを作成する」
俺の説明が何人かが「なるほど」と頷いたが、クドニクは難しい表情をしている。
「そもそもデペスが障害物にどう対応するかが不明だ」
ただの思いつきだから深く考えないでね、という感じのことを付け加えて俺は端末に視線を戻す。
折角なので調べてみることにした俺はデータベースの閲覧を始める。
俺の発言を吟味している他の面々は思い思いに意見を出していたが、思ったよりも早く結論が出た。
「問題はやはり数になるな。小規模ならば一考の余地はあるが……それ以上となれば危険が伴う」
「安全ばかり考えてたら前に進めねぇんじゃねぇか?」
反論するデイデアラの言葉を馬鹿にするようにクドニクが鼻で笑ったところで立ち上がるおっさんが一人。
こうして乱闘目前となった作戦室だが、それをアーシダが一喝して黙らせる。
これはもうほぼお決まりの流れとなっている。
ちなみに彼女がデイデアラすら黙らせているには理由があり、この二人は一度地上の闘技場で戦っている。
結果はデイデアラが辛勝。
あのおっさんに「二度とやるか!」と言わせるくらいにはアーシダが粘った。
その驚きの戦闘時間――なんと78時間である。
正に防御型の英霊の強さを見せつける戦いであり、同時に彼女の底なしのタフネスを目の当たりにした。
これ以降、第八期の大半はアーシダには下手に逆らわないようにしている。
また、クドニクに関しても彼の言葉を全員が聞くようになったのはマリケスが関係しているらしい。
どうやら彼の生前を知ったマリケスがクドニクを認め、彼のために色々と動いたそうだ。
結果、クドニクからは威圧的な言葉が消え、ローガンからは「かつての名将が戻ってきたのかもしれないね」とまで言わせた。
それを聞いた俺も気になってクドニクの生前について書かれた文書を読んだのだが……簡潔にまとめると「長きに渡って北方の異民族を抑え込むも、その華々しい成果で敵を見誤った中央が予算と兵を減らす。これに異を唱えたところ既に中央は腐敗しており、これを正すべく政治の世界へと足を踏み入れるも惨敗。地位を失い、異民族の侵攻で滅びる国を見せつけられて無残な最期を遂げる」というものである。
しかもこの文書を書いたのが、既にエデンにはいない敵側の英雄だったのだから皮肉がすぎる。
味方よりも相対した敵から評価された将軍――それがクドニク・ロウという人物である。
クドニク然り、デイデアラやマリケスといった壮絶な死を遂げた者が同期にはいる。
そんな背景を持つ者たちが英霊としてエデンに召喚されており、そうを考えると自分の場違いさが俺の中で際立つのだ。
俺はこの会議を眺めながら一人であることの意味を考えたが、結局答えはいつも通り「わからない」だった。
いつかわかる日が来るのだろうか?
その疑問が端末を操作する俺の手を止めるが、それに気づく者は誰一人としていなかった。
一部修正しました。




