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2-20

 第七期規定外領域到達者「イザリア・メーデン」の困惑っぷりを見ながら無言で彼らの前にカップを置いていく。

 予想通りと言うべきか、向こうもこちらのことを調べているらしく、第七期をまとめ上げている彼女はこの状況にただただ困惑している。

 イザリア・メーデン――現代魔術師を名乗る彼女は広範囲殲滅を得意しながら、遠近ともに隙なしと言われる武闘派でもある。

 実力で第七期全員を下し、彼らを指揮する立場を勝ち取った女傑。

 それが俺が調べたイザリアという人物である。

 先頭で歩くスーツ姿の彼女が水を運ぶ俺を見ながら席に着く。

 俺はと言うと水を運びながらセダルとミリダがいたので軽く挨拶を交わし、全員にいきわたったことを確認してから席に着く。

 後から来た職員に「そういうことはこちらでやりますから」と申し訳なさそうに言われた。

 仕事を取ってしまったみたいで少し気まずい。

 アリスと向こうの担当を思しき職員も揃ったので交流会の開始。

 かと思いきや、何やらアリスと向こうの担当職員が剣呑な雰囲気になっている。


「いい加減、時間に余裕を持って行動してほしいのですが?」


「時間通りに進行できてるんだからいいでしょう?」


 明らかに機嫌の悪いアリスとヘラヘラしている男性職員。

 それを咎める者は誰もおらず、第七期のメンバーがこれを完全に放置しているのがどうにも引っかかる。

 わざとか、それともそういう人物だと諦められているのか?

 どちらにせよ、これを上手く利用しようとしている可能性も考えられる。

 警戒するに越したことはない。

 そう思ってリオレスを見ると無言で食事をしている。

 他の連中も食い始めたので俺もそれに倣って箱を開ける。


「あー、まだ交流会始まってないんだけどー?」


 行儀よく始まりを待つ七期とバラバラの八期。

 それを比べて笑う仕草を見せる相手側の担当。

 そう言えば名前もまだ聞いていないな、と思いながら料理に口を付ける。

「結構イケるな」と思わず無言になって食べ進めてしまう。


「僕に時間通りに言う前に、そっちも進行通りに進めるように言っておいてほしいんだけど? これじゃ何のための交流会かわからないよ」


 そう言って笑う担当だが、そんな彼を笑う人物が現れる。

 

「オイオイ、その気もねぇ癖に何言ってんだ? 難癖付けるネタをこっちから提供してやってんだよ。先輩想いの良い後輩だろー?」


 開幕から喧嘩腰のデイデアラだが、第八期の中でも何人かが既にその気になっているのか、あのおっさんを止めるどころか一緒になって煽るように含み笑いをしている。


「……まあ、話が早くて助かる、か」


 八期を値踏みするように見ていたイザリアが軽く手を挙げる。

 すると「先ほどは失礼しました」とこちらに向かって謝罪をする相手の担当。


「私は現在こちらの第七期を担当させていただいております『ウェイズ・アークライド』と申します」


 そう言って先ほどとは打って変わって丁寧な態度を見せるウェイズ。

 アリスはこの変わりようにポカンと口を開けていたが、すぐに彼女も七期に向けて自己紹介を行う。


「そちらのエースが給仕の真似事をしているから腑抜けた連中かと思ったが……」


 わかってるじゃないか、とイザリアが笑みを浮かべデイデアラを見る。


「合同で戦闘に行うにあたって誰が指揮を執るかは重要だ。単刀直入に言う。私の指揮下に入れ」


「やなこった」


 ナチュラルにお道化て煽るデイデアラ。

「誰かこいつを黙らせろ」と言えないロールプレイ中の俺は黙々と食事中。

 ピザ生地にグラタンの組み合わせを想像していたが、味の方も予想していたものに近く、どこか食べ慣れた味付けにフォークとナイフが止まらない。

 たまにイザリアが視線をこちらに向けてくるが、俺はガン無視して食事をしている。

 規定外領域の英霊ならば俺の情報は筒抜けかと思ったのだが、これはエデン側も俺のことをまだ掴みかねている、ということだろうか?

 エデンの情報だけでは俺が指揮権なんぞに興味がないことがわからなかったようだ。

「というか、自己紹介くらいした方がよくね?」と俺と同じように我関せずとばかりに食事を始めたセダルを見る。

 目が合うと「そうだよなー」とでも言わんばかりに頷く。

 流石英霊、こんな雑なアイコンタクトでも意思疎通ができている。

 一方、舌を出して煽るデイデアラと平静を装ったままキレ始めているイザリア。

「あの顔ぶん殴りてぇ」と八期が心を一つにしながら、七期はリーダーが爆発寸前でざわつき始めた。


「うちにも指揮ができる英霊くらいいるしぃ、そっちの指図を受けるメリットは何ですかぁ?」


「効率の話だ。この状況下で個の利点の話をしてどうなる? 少しは考えたらどうだ?」


「考えてわかるもんならとっくに解決してないとおかしくねぇかぁ? 千年続いた争いごとだぁ、終わらせるにはどっちかが滅びるしかねぇ。とっくに効率なんざ求めててこれだろうよ。つ・ま・り、効率云々はまーとはーずれぇー」


 聞いてるこっちが殴りたくなる顔と仕草だが、イザリアもよく耐えている。


「それで効率を捨てると? 愚か者らしい意見だな。敵を効率よく処理するなど基本中の基本。そもそも……」


「ああ、うん、知ってるからいい」


 突如真顔に戻ったデイデアラが鼻をほじりながらイザリアの言葉を遮る。

 それから「怒った? ねぇ怒った?」と声を可愛くして下から見上げて煽りを再開。


「これくらいで怒んなよー。俺たちもまとめて指揮するんだろー。器がちっちぇよー。ああ、胸も小さかったね、めんごめんごー」


「表出ろや! ヒゲぇっ!」


 語尾に星マークでもついてそうな煽りにイザリアが遂にブチ切れた。

 七期の面々は「あちゃー」というような仕草をしており、どうやらデイデアラは禁句を言ってしまったのだと察する。

「あ、これ一戦交える流れだわ」と惜しみながら料理を少し急いで食べる。

 相手の情報を見た時、力で八期をねじ伏せて指揮権をもぎ取ろうとしてくるのは予想していたが、デイデアラは恐らくそれを彼らの雰囲気で感じ取り、最初から喧嘩腰になることでスムーズにこの流れに持っていった。

 話し合いで解決できる問題ではない。

 最初からそう結論付けていたデイデアラとそれに賛同していた同期たち。

 結局のところ、彼らは生前英雄と呼ばれるに値する功績があり、それらは主に戦場であげられているものである。

 それ故に、そう簡単には人の下にはつかない。

 それだけの力があることを見せつけなければ始まらないのだ。

 この結果は彼女も望んだことだろうが、そこに至る過程をデイデアラが乗っ取った。

 果たしてここにどんな意味があるのか?

 気が付けば戦いで決めることになっており、ここで地下闘技場の存在が明るみとなった。

 アイザンの言っていた「地下で会おう」とはこういう意味だったか、と俺は料理を食べ終える。


「通過儀礼、か」


 俺が口元を拭って呟くとイザリアが「わかってるなら最初から言え!」と何故か怒鳴られた。

 どうやらイザリアは相当ご立腹のようだ。

 その犯人を見ると手掴みで豪快にトゥエニアを食べている。


「前回の出撃じゃあ満足に戦えなかったんでね」


 つまり煽ればそれだけやる気になってくれると思っての犯行のようだが、その大将格と戦うのは誰の役目になるのかな?

 話がまとまり、キレ気味で自己紹介を行うイザリアに続く第七期のメンバー。

 第八期もそれに続き自己紹介を行い、このまま地下闘技場に行く流れかと思ったが、まだ食事中の英霊がかなりいる。

 俺はこれを見越して食べ終えているが、七期に至っては食べ始めたばかりの者もいた。

 ここは俺が一肌脱ぐ時である。


「では、全員が食べ終わったら地下闘技場に向かおう」


 俺がそう締めくくると全員がこちらを見た。

「マジか、こいつ」という心の声が聞こえてくる視線の集まりである。


「ええ……空気読めよ、お前」


 言いたいことはわかるが、このおっさんにだけは言われたくない。

 再び俺が給仕を始めた所為で七期の方も食べざるを得ない空気になっており、担当のウェイズが俺を指差しアリスに何か言っている。

 同期の中にも俺に非難の目を向ける者がおり「それはねぇだろ」とジョニーが口に出してしまっていた。

 そんなわけで急ぎ足の食事が終わり、何とも言えない空気で地下闘技場へと向かう面々だったが、食べるのが遅いケイだけは「よくやった」とばかりに俺の背中を無言でペチペチと叩いていた。

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― 新着の感想 ―
借りる胸のないイザリア先輩、小物だー。 デイデアラの言う通り、指揮を取るつもりにしては、器が小さい。第8期の引き悪い将軍さんを見習え。
「知能すらない」って人の知的能力にケチつける奴がしてるのが、女出る度に文句言うってマジっすか?w 創作物に女出る度に文句垂れてるお前と、女が多く出てくる創作物どちらが異常かは言うまでもないな。
また女かよ…。 これに違和感や異常と認識する知能すらないんだろうななろう読者の殆どは。
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