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人がいなくなっても試射を続け、取り敢えず使う予定がありそうなものを全てテストし終えた。
結果としてはゲーム時代と使用感は変わらず、自由に切り替え可能という利点を考えると「意外と使う機会がない武器の方が少ない」という結論になった。
基本的にどんな武器でも「何かに使える」という評価になるので、何処かで使えるだろうと思うとほとんどがそうなってしまうのだ。
ならばここからさらに厳選を重ね、使用する武器の幅を狭めることで効率を追求するべきである。
似たような武器、同じ使用目的ならば、性能に優れるものを優先するのは当然であり、それ以外のものを緊急時に使うものとして分けておく。
もっとも、リロードする余裕もない状態で下位武器を使うことにどの程度の効果が見込めるかは疑問ではあるが、切羽詰まった状況ならばないよりかはマシだろう。
こんな感じにまとめたところで、最後に現在の攻撃力ランキングを見てみよう。
1位:プラズマキャノン「アビス」58000
2位:大型ミサイル「インフィニティ」48000
3位:レールキャノン 44000
4位:レールガン 38000
5位:大型対艦刀「カラドボルグ」37000
この後にスコール1が使っていたハルバードが33000、Tier1近接武器のムラサメと続くのが今俺が持っている中でのランキングとなる。
(こうして並べると攻撃力以外何の取柄もない「対滅ミサ」や「プラバ」に「ミーティア」とか結構穴が開いてるよな)
ほとんど集まったかと思ったが、並べたことで普段使うことのない武器が意外と解放されていないことがわかった。
ちなみに対滅ミサの正式名称は「対宇宙人専用滅殺ミサイル」と頭の悪い名前ながら、攻撃力108000というゲーム中では一回しか使えないネタ武器である。
実際に使用すると「地球を破壊するつもりですか!」とオペレーターが叫び、以降は使えなくなる。
これを利用してストーリー上の会話に被せてセリフを捏造する動画があったことに加え、あまりにも使いにくい性能と合わせてネタ枠に入れられた悲しき兵器である。
プラバは「プラズマバスター」の略称でジェットパックの専用装備であり、リチャージに360秒かかるプラズマキャノンを使いやすくしたもので、攻撃力が18000と非常に高い。
ジェネレーターを内蔵したでかい武器だが、エネルギーパックからの供給を必要としないため、これのあるなしでジェットパックの価値が変わるくらいには強力な兵器である。
最後にミーティアなのだが……こちらはバトルアーマーの専用装備であり、攻撃力78000で装弾数15発の射撃武装である。
問題は発射までのシークエンスが長く、展開して固定砲台となるため動けなくなるデメリットがある。
スナイパーライフル級の射程距離、ロケラン並の爆風を持つ兵器で最高レベルの攻撃力まで持つが故の制約。
おまけにリロード不可な上、これを使うとバトルアーマーが壊れるという致命的な欠陥までついているロマン砲である。
これに関しては使い道が思いつくので、解放されていないことが悔やまれる。
そんなわけで一通りのテストと確認が終わったので射撃訓練場を後にする。
直後に待ち伏せしていたと思われるローガンに出くわした。
「時間はあるかね?」
そう言って測定装置のある部屋の方を見るローガン。
確かにその必要はあるな、と俺は頷いて彼に先導されるように歩く。
ということで、青い柱の前に来た俺はリロードが完了しているプラズマキャノンを取り出す。
リロードできる共通兵装の中ではこいつが最高の攻撃力を誇る。
早速青い柱にぶち込んだところ、柱がごっそりと消えて向こう側がよく見えるようになった。
一応連射のできる武器ではないことを言っておくが、数値を見たローガンが嬉しそうに笑っている。
「5858! 素晴らしいな!」
思わず「え?」と声が出てしまったが、どうやら聞こえていなかったらしくローガンはまだ笑っている。
(いや、58は何処から来た? じゃあ攻撃力は58580ってこと?)
計算上1%攻撃力が上昇していることになる。
強化パーツを使った覚えもないし、そもそも素材を手に入れたこともない。
原因がわからず他の武器も試してみることにする。
強力な武器の方がいいだろうとバトルアーマーに変身。
レールキャノンとレールガンを測定装置の修復を待って撃ち込む。
「4400に3800。これもいい。実に素晴らしい」
頬を吊り上げっぱなしのローガンを無視して次々と試していく。
その中で1%、または2%攻撃力が向上しているのものがちらほら現れた。
「この数値ならば小型に対して制圧射撃も可能か」
唐突に始まった品評会で頷くローガンを他所に、俺の頭の中ではある懸念が生まれていた。
そう、武器は実質ガチャのようなものだった。
俺が真っ先に思い至った結論――それは凸である。
様々なガチャにある同じものを手に入れた場合に重ねることで強化するシステム。
(前作であまりにも不評だったシステムが復活している、だと!?)
だがまだそうと決まったわけではない。
試しにランクの低い武器を使ってみたところ、その上昇量が10%だった。
続けて別の武器を試していくも10%が続き、たまに8%や9%の上昇量という結果に終わる。
「ガチャ……完凸」とうわ言のように呟く俺の様子にずっとハイテンションで笑っていたローガンが我に返る。
「む、流石に活動を再開するのが早すぎたか?」
「無理はしないでくれよ」と背中を叩かれ、ようやく正気に戻った俺は無言で頷き自室へと戻る。
大きく深呼吸をした俺はようやく落ち着きを取り戻し、ただ一言「マジかよ」とだけ呟いてベッドに倒れ込んだ。
目を覚まして時刻を確認すると既に夕刻。
どうやら数時間ほど眠ってしまったようだ。
起き上がって自室を出たあたりで昼食を食べていなかったことを思い出し、少し早めの夕食にしようかと食堂に向かう。
「おや? スコール1じゃないか」
その道中で声を掛けられ、そちらを振り向くと女医を強く自称するリコレアがいた。
用件を聞いてみたが、逆に「何をしているのか」と質問される。
「食堂に行くつもりだが?」
こちらも疑問形で返して改めて何の用かを尋ねる。
「ああ、それなら丁度いいね」
そう言って俺を腕を取ると食堂へと引っ張った。
相変わらずご立派なものをお持ちであるが、打算でやっているのがわかり切っているので警戒が前に出てしまう。
「アリス君がいれば任せたんだがねぇ」と何処かに連絡を入れて食堂に入り、そのまま俺を椅子に座らせる。
「ちょっと待ってておくれ」
それだけ言って何処かに行くリコレア。
少し待つと何かを持ったリコレアが戻って来る。
そして籠に入ったそれを俺の前に置いた。
「これは?」
「主任からのお詫びだよ。『無理をさせてすまない』だって」
彼女の言葉に俺は「ああ」と言って納得したように頷く。
籠の中身は見たことのない植物の実のような何か。
多分こっちのフルーツだと思われるが、念のために聞いてみたところ正解だった。
見た目はでかくて青い唐辛子、黄色のリンゴに赤いメロンと食べてみないことにはわからなさそうな果物。
なら食後のデザートにでもするかとディストピア飯を取りに席を立つ。
しかしそれを制するリコレア。
首を傾げる俺にリコレアが食堂の奥を指差す。
そちらを見ると職員の女性が食事をトレイに乗せて運んでくれた。
「こっちはアリスからの奢りだよ」
話を聞くとポイントがマイナスになった件を申し訳なく思っているらしく「ゼロに戻したはいいが、何か報いる必要がある」とアリスは奮発したそうだ。
それで出てくるのが「ステーキセット」と表現するのがしっくりくる料理である。
パンにステーキとサラダ、そこにスープが付いてファミレスにでも来た気分になる。
ちなみにこれでアリスの給料一年分が吹き飛んでいると言うのだから恐ろしい。
「エデンの実情がよくわかる」と思いながらも、俺は報酬として遠慮なくいただくことにする。
「それではごゆっくり」
そう言って軽くて振って立ち去るリコレアを見送り、俺はまずはスープを口に付ける。
「……美味いな」
思わず口に出た感想。
コンソメスープにも似た味わいが口の中に広がり、僅かにだが口角が緩んだ気がした。
それからパン、ステーキ、サラダと順番食べ進めていくが、どれもファミレスで食べたものよりかは少し上等な感じがした。
久しぶりのまともな食事なので、ゆっくりと味わいながら楽しんでいると誰かが食堂に入って来る。
「お、スコール1じゃねぇか」
入って来たのはデイデアラとリオレス、それにマリケスというあまり見ない組み合わせ。
近づいてくる彼らに軽く会釈だけして食事を再開。
それを目敏く見つけたデイデアラ。
「美味そうなもん食ってんな」
そう言って伸ばした手にナイフを突きつける。
結構ガチ目に睨んだところ「冗談だよ」と言ってデイデアラは手を引っ込める。
「ほー、お前はこういうことにポイントを使っているわけか」
俺の前に並べられた料理を見ながら頷くマリケス。
リオレスは無言のままだが、視線は料理の方に向いている。
「中々美味い。余裕があれば頼んでみるといい」
俺がそう言うと頷くリオレスと「そうするか」と詳細を聞いてくるマリケス。
残念ながらわからないので料理を運んでくれた職員を呼ぶ。
なお、デイデアラは酒にばかりポイントを使っているので購入できない模様。
フルーツについてはローガンの検証に付き合った謝礼ということにして、少し分けることになった。
食事が終わり、フルーツを切ろうとしたところで第八期の顔見知りが続々とやって来る。
俺たちを見つけた彼らがこちらに来るなり、置かれたフルーツをまず尋ねる。
結局、ここにいる全員で分けることになってしまった、
ちなみに果物の味については「結構微妙」というのが正直な感想だった。
周りには好評だったのだが、高級フルーツを想像していたこともあってか、期待値が高すぎたのかもしれない。
無料で試食できたと思えばいいか、と俺が食べなかった分を取り合う喧騒を前に「たまにはこういう騒がしいのも悪くはない」と少し声を出して笑ってしまった。
俺が笑ったのが意外なのか全員が揃ってこちらを見た。
はいはい、俺はそういうキャラでした。
その後、ロールプレイを再開して黙る俺に絡みだしたデイデアラが大変うざかったとだけ言っておく。




